悩める人もし、不治の病にかかったら、延命治療を望むか否か…



なぜ、尊厳死宣言書(事前指示書)が必要なのか?



こんな疑問・悩みを解決します!
- 終末医療とは?
- 尊厳死とは何か?
- 尊厳死宣言書とは何か?
- 尊厳死宣言書が必要な理由
- 尊厳死宣言書の具体的な内容
- 尊厳死宣言書の作り方
- 尊厳死宣言書の使い方
はじめに
もし、あなたが事故や病気で回復の見込みがない脳死状態になったら、「どんな手立てを講じても良いから、1秒でも長く生かしてほしい」と思うでしょうか。
それとも、苦痛を緩和する以外は医学的な措置を施さず、自然な死を迎えたいと願うでしょうか。
答えはもちろん、人それぞれでしょう。
しかし最近は、過剰な延命措置に疑問を抱き、尊厳死を望む人が増えています。
- 尊厳死 … 延命措置を差し控えたり中止したりして「自然な死」を迎えること
しかし、本人にそのような希望があっても、何の準備もしていなければ、実際にそのような状態になった時に希望を叶えるのは難しいと言わざるを得ません。
本人はもう意思表示できないし、家族は本人の意思を知っていても、本当に延命措置を停止して良いのか迷う筈です。



たとえ家族が本人の意思を医療機関に伝えても、医師が法的責任を問われることを恐れて消極的になる可能性もあります。尊厳死を望むなら最低限、その意思を客観的な形で残す必要があります。
現在、日本では尊厳死についての法律がないため、そのような文書があっても確実に実現される保証はありません。
とは言え、日本尊厳死協会の調査によると、実際に末期状態になって「リビング・ウィル」を提示した際に、9割以上の医療関係者が本人の希望を受け入れたことから、実現の可能性は高いと思われます。
終末医療と尊厳死
ガンが全身に転移している、エイズが発症したなど治る見込みがなく、死期が確実に近づいている場合の医療のことを、終末医療又は末期医療と言っています。
誰でも病気をすれば病院で治療を受けますが、それは治癒する見込みがあるからです。
しかし、治癒する可能性が全くなくなった患者に対しても、いわゆる「延命治療」をするのが病院です。
患者の家族としても、医者のすることですから、延命治療を止めてくれとは、なかなか言い出せません。
末期ガン患者にとっては、ガン特有の痛みとの戦いとなりますが、残念なことに、痛みを完全に取ることはできないようです。
延命治療のために、集中治療室の中で、人工呼吸装置、人工栄養装置、水分補給装置、持続導尿、人工透析装置などに接続された上に、脳波、心電図、血圧、脈拍、呼吸などの持続的モニターの器具に繋がれることを、俗にスパゲッティ症候群と呼んでいます。



このような状態で生き長らえされているだけの延命治療を拒否し、寿命が来たら息を引き取れるような死に方をしたいというのが、「尊厳死」です。
尊厳死とは、ケガや病気で回復の見込みがなく死期が迫っている時に、自分の意思で延命治療を止めてもらい、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることを言います。
これを希望する場合には、予め「尊厳死の宣言書」や「事前指示書」などを作成しておくことが必要です。
意思表示ができない場合でも、誰かに頼んでおいて、文書を提示すれば良いのです。
尊厳死宣言書(事前指示書)
自分(親)が将来、病気や事故で、回復の見込みのない、死が避けられない末期状態になる可能性があります。
そのような場合に、家族への負担や訴訟トラブルを避けるために、元気なうちに予め作成しておくのが「尊厳死宣言書(事前指示書)」です。
- 尊厳死宣言書 … 延命治療を拒否して、自然に死を迎えるための文書



尊厳死宣言書とは、本人が自らの考えで尊厳死を望み、延命措置を差し控え、中止してもらいたいという考えを書類で残すものです。
なぜ、尊厳死宣言書が必要なのか?
現代の医学は患者が生きている限り、最後まで治療を施すという考え方の下に、少しでも長く生を保つための延命治療の技術を進歩させてきました。
しかし、結果として、延命治療が患者を苦しめ、安らかな死を迎えることを阻害する場合があるのも事実です。
近年、個人の自己決定権を尊重する考え方が色々な方面で正当と評価されるようになってきました。
医学の分野においても、治療方針や手術のリスクなどについて十分な情報を提供し、これに基づく患者の選択を重視する考え方が主流となっています。
患者本人としても、少しでも長生きしたいというのが人間としての本能だと思いますが、もし自分が回復の見込がない末期状態に陥った時には、機械によって単に生かされているような状況を回避したい、また、過剰な延命治療による家族への経済的・精神的負担や公的医療保険などに与える社会的な損失を避けたい、という考えを持つ人が増えてきました。
しかし、治療に当たる医師の立場としては、回復の可能性がゼロかどうか分からない患者の治療を止めてしまうのは医師としての倫理に反することや、どのような形であれ、現に生命を保っている患者に対し、死に直結する措置を取る行為は、殺人罪に問われる恐れがあります。



尊厳死宣言書は、こうした医師の訴訟トラブルや家族への負担を避け、本人が人間らしく安らかに、自然な死を遂げるためのものです。
- 年齢が65歳以上である
- 親族に脳梗塞や心疾患になった人がいる
- 脳死状態は人の死だと考えている
- 家族は尊厳死に賛同している
- 万一脳死状態になれば、自分は臓器移植を希望する
- 親族など延命措置を受けた様子を見たことがあり、自分は受けたくないと思った
- 今の時点で延命措置は希望していない
- 自分の延命措置についての考えを、家族が病院側に伝えてくれるか不安だ
- 万一のとき、自分の意思を病院に伝えてくれる人がいない
元気に過ごしている時は、「延命治療はしない」と話していたとしても、いざその時になると、「どんな形でも、少しでも長く生きていてほしい」と思ってしまうのが家族の心情です。
また、たとえ家族が「延命はしません」と医師に伝えることができたとしても、「本当に良かったのか?」という後悔の念が残ることもあります。
家族に心の傷を負わせないためにも、終末期の大事なことは、自分自身で決めて実現可能な形で書面に残しておくようにしましょう。
尊厳死宣言書の具体的な内容
尊厳死宣言書は、書き方が法律で決まっているわけではないので、どのように作成しても構いません。
自分で作成する場合は、「終末期を迎えた時は延命措置を行わないでほしい」という希望を書いた文書を作り、家族などに渡しておくと良いでしょう。
尊厳死宣言書には、必ず次の条項を盛り込みます。
- 現代の医学で不治の状態に陥り、既に死期が迫っていると担当医を含む二名以上の医師により診断された場合、延命措置を拒否すること
- 本人の苦痛を和らげる処置は最大限の実施を希望すること
- 尊厳死宣言書作成について予め家族の同意を得ていること
- 医師や家族に対して犯罪捜査や訴追の対象にしないでほしいと希望すること
- 尊厳死宣言書は本人が健全な精神状態にある時に作成したもので、本人が撤回しない限り、有効であること
延命措置が行われるのは、食事が口から摂れなくなった場合と心臓が停止した場合、自力で呼吸ができなくなった場合などがあります。
食事が口から摂れなくなった時には、人工栄養があります。
胃にチューブを入れて行う胃瘻と鼻からチューブを入れて行う経鼻栄養法。
それから、中心静脈にカテーテルを挿入して血液中に直接栄養を入れる方法、水や塩分補給のための末梢点滴などがあります。
また、心臓が停止した場合や自力で呼吸ができなくなった時には、心臓マッサージ、気管に管を入れる処置(気管内挿管)、人工呼吸器があります。
それぞれ、受けたいかどうか、自分の気持ちを個別に書いておくと良いでしょう。



医療技術は日々進歩し、終末期医療も変化していくでしょう。自分らしく死を受け入れるために情報収集しておき、自分にとって本当にやってほしくないものを整理しておきましょう。
尊厳死宣言書の作り方
尊厳死宣言書は、一般には「形式は自由」で誰にでも作成できるものですが、尊厳死の普及を目的とする「日本尊厳死協会」では、独自形式の尊厳死宣言書を用意し、会員が作成・捺印した尊厳死宣言書を登録・保管するサービスをしています。



リビング・ウイルを登録してもらうには、日本尊厳死協会への入会が必要です。年会費は正会員で2,000円。会員には会員証と医師に提示するリビング・ウイルの原本証明付きコピーが送られてきます。
一方、本人が間違いなく書いた書類であることを公的に認めさせるには、遺言書や任意後見契約書と同様に、公正証書で作成する選択肢もあります。
尊厳死宣言公正証書と日本尊厳死協会への会員登録の二つは、終末期の意思表示として非常に高い効力を発揮する方法です。
尊厳死宣言公正証書
作成方法は、遺言書など他の公正証書と同じです。
- 内容を決める
- 公証人に文案を作成してもらう
- 文案の内容を確認し、訂正する
- 予約日に公証役場で公正証書を作成する
証人は不要ですが、家族の同意を得ている場合は同席してもらうのが望ましいと言えるでしょう。



費用は基本料金が11,000円で正本代が750円。公証人に、自宅や病院に出張してもらう場合は、出張料や交通費(実費)も掛かります。
公正証書には100%の法的効力はありませんが、延命治療が中止される確率はかなり高くなります。
尊厳死宣言書の使い方
尊厳死宣言書を作っても、いざという時に医療機関に提示できなければ意味がありません。
自分が倒れて意識不明になったら必ず傍にいてくれそうな人に宣言書を渡して、万一の時は必ず医療機関に渡すように頼んでおきましょう。
また、本人の意識がはっきりしている状態で入院する場合は、入院時に本人が医師や看護師に宣言書を渡して、尊厳死を希望する旨を伝えると良いでしょう。



尊厳死宣言書は、延命措置を始める前に医療機関に提示することが大切です。もし脳死状態になり、延命治療が始まった後で提示すると、実現が難しくなるかもしれません。
まだ何もしていない状態と違い、既にスタートした措置をわざわざ停止して死に至らしめることになるので、医師が責任を問われることを恐れて消極的になる可能性があるからです。
そのような状態を避けるためにも、元気なうちに家族と延命措置について話し合い、万一の時でも冷静に対処して、医療機関に宣言書を渡してもらえるようにしておきましょう。



尊厳死の宣言書を作った後、やはり延命措置を受けたいと考えた場合は、いつでも尊厳死の宣言を撤回することができます。
口頭で家族に伝えても構いませんが、文書で意思表示した方が確実です。
また、手元にある宣言書は破棄した方が安心です。
まとめ
終末期での延命治療では、回復の見込みがなくても、人工呼吸器や心肺蘇生装置を装着し「延命のみ」を重視した治療が図られます。
これは医学の進歩がもたらした成果ですが、患者本人にとって本当に幸せなのか、これで人間の尊厳が守られるのか、という問い掛けも多方面からなされています。
昨今、個人を尊重すべきだという社会的な流れから、インフォームドコンセントの考え方が定着しつつあります。
それに伴って、延命治療においても「本人の意思」を重視しようという声が大きくなりつつあります。
良い治療とは、「できるだけ長く生きられる治療」のことと思われがちですが、それが全ての人にとっての最善とは限りません。
患者の状態や人生観、価値観によって、望ましい治療は異なるもの。
生命を長引かせる治療と苦痛を和らげる治療が両立しにくいケースもあり、医療者が「医学的にできること」を積み上げた結果が本人の希望とずれてしまうことも起こり得ます。
気管挿管や経管栄養などの処置にはメリット・デメリットを踏まえた上で、選択には本人の意思が尊重されることが望ましいでしょう。
- メリット … 自分で呼吸ができなくなっても確実な呼吸を助けることができる
- デメリット … 不快感+長期間使用すると喉や声帯に傷がつく可能性あり
- メリット … 必要なエネルギーや栄養を補給でき、体力の維持がしやすくなる
- デメリット … 経鼻栄養では鼻や喉への違和感があることも。チューブの挿入部や体内での感染発生リスクあり



経管栄養 … 口から食事を摂るのが難しい場合に、鼻やお腹のチューブ(胃瘻)から栄養や水分、薬を補給する方法です。
例えば、いったん気管挿管を行うと意思表示が難しくなり、途中で本人が「やはり違う」と思っても伝えにくくなることがあります。
結果として「本人が望まない医療」が続く可能性も否定できません。
家族も「本人は、本当はどうしたかったのか…」と悩み、決断の重みを一身に背負ってしまうことになるかもしれません。
人が人生の最期を意識するのは、ガンの宣告を受けた時や治療が難しくなってきた時、慢性疾患が悪化して日常生活が苦しくなった時など様々。
医学的に回復が見込めず、人生の最終段階にあると判断される状況では、体力や意識の問題で自分の意思を十分に伝えられなくなることもあります。
だからこそ、「その時」になってからではなく、少し前から備えることが重要です。
もし、あなたが延命治療をしないと望むなら、事前にその意思を表明する「尊厳死宣言書(事前指示書)」を作っておくべきでしょう。
そのためには、家族の理解と協力を得ておかなければなりません。
そして、延命治療が始まる前に医者に提示してしておくことが必要です。



あなたが大切にしていることは何ですか?あなたが信頼できる人は誰ですか?繰り返し考え、話し合いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。