
いったい税務調査はどんな仕組みで行われるのか?



やってきた調査官へはどう対応したら良いのか?



こんな疑問・悩みを解決します!
- 税務調査の仕組み
- 税務調査の目的と種類
- 臨場調査の手順
- 税務調査への対応の心得
税務調査の仕組み
無事に申告と納税を済ませてホッと一息…。
でも、安心するのはまだ早い!
すっかり落ち着いた頃、思い出したようにやってくるのが「相続税の税務調査」なのです。
税務調査とは、申告されていない財産を発見するために、税務署が行うものです。
- 調査はいつ、どのように行われるのか?
- 調査のプロはどうやって申告漏れを見つけるのか?
- いったい税務調査はどんな仕組みで行われるのか?
- やってきた調査官へはどう対応したら良いのか?



皆さんの疑問に全てお答えします!
税務署の情報収集活動
相続が発生すると、税務署から「お尋ね」や「相続税の申告書」が送られてくることがあります。
お尋ねとは、「もし相続税が課税されるのであれば申告して下さい」といった内容が書かれた書類です。
相続税の申告書は、「今回の相続で相続税が掛かるでしょうから、この書類に記入して申告を行なって下さい」という内容です。



しかし、税務署はどうして相続が発生した=人が亡くなったことを知っているのでしょう?



ましてや、相続税が掛かるなんてことが、どうして分かるのでしょう?



実は、相続税法第58条によって、市区町村長は死亡届を受理した月の翌月末までに、その旨を税務署に通知することが義務付けられているのです。この法律によって、税務署は管轄内で亡くなったことはすぐに把握できるわけです。



では、税務署が、相続税が掛かると判断できる=財産がどれぐらいあるか把握できているのはなぜか?



秘密は、税務署が保管している「資料せん」という情報資料にあります。税務署では、所得や有価証券の配当による納税額や、固定資産税の納税状況が一定より上回っている人に限らず、平均的な収入を得ている人に対しても、資料せんを作っています。
資料せんの内容は、有価証券の保有状況や預金状況、法人名義で借りているアパート・マンションの収入額などといった、法律で提出が義務付けられている「法定資料」と呼ばれるもの。
さらに、高額なゴルフ会員権や、その人に関する新聞・雑誌の記事など調査官がマメに収集した情報や、取引先や知人の税務調査の際に入手できた、その人に関する情報もあります。



こうした実に多岐にわたる情報が、税務署で個別にファイル、集積されているのです。
書類送付の仕組みと対応
税務署が市区町村長から死亡通知を受け取ると、資料せんと照合したり、本人が住んでいた市区町村役場に照会して、不動産の所有状況を調査します。
そして、税務職員による「相続税が掛かるだろう」という確信の度合いに応じてお尋ねや申告書が送付されるという仕組みになっているのです。
税務職員の予測を基にしているわけですから、実際には「申告書」が送られてきても、相続税が課税されない場合もあります。
その場合には「相続税が掛からないこと」を証明する資料を添付し、「相続税が掛からず、申告の必要がない」旨の回答をします。
もし証明する資料を添付しないと、場合によっては、何度か催促を受けることになります。



相続税が掛かる場合は送られてきた用紙を使って、申告を行います。お尋ねへの対応も、相続税の申告期限と同じく、相続が発生してから10か月の間に行いましょう。
税務調査の目的と種類
「お尋ね」に回答したり、相続税を申告したりして、ホッとしたのも束の間、税務署から、「○月〇日にお宅へお伺いしたいのですが…」と連絡が入り、調査官が来訪することがあります。



いよいよ本格的な税務調査の始まりです。ひと口に税務調査と言っても、その内容によって3種類あります。
先ず、管轄の税務署が行う任意の税務調査。
最も一般的な調査で、通常1~2名の調査官が、1日で臨場調査(自宅や会社に調査官が来訪するもの)を行います。
あくまで任意ですから、いきなり家に上がり込んで、同意なしに家中の棚を引っかき回すようなことはありません。



前述したように、電話で調査する旨を伝えてくれます。ただ正当な理由なく調査を拒否することはできません。
かなり大きな脱税が見込める場合には、国税局の資料調査課、通称「料調(リョーチョー)」の行う任意調査が入ります。
リョーチョーは国税局のエリート集団で、その調査は限りなく強制に近い任意調査。



例えば、場合によっては調査中にトイレに行きたくなっても、1人では行かせてもらえません。証拠隠滅の可能性を考慮して、トイレのドアの前には調査官が待機しているといったことにもなりかねないのです。
さらに、悪質な脱税で刑事事件にまで発展する可能性が高い事案は、通称「マルサ」でお馴染みの国税局査察部が扱い、強制捜査となります。
事前の連絡もなく、自宅や事務所に踏み込まれ、その日の行動も完全に拘束されることになります。
調査対象の決定
調査官が調査を行う対象とするのは、資産が多く、申告内容に疑いがあり、確認が必要と思われる人。
そして、臨場調査にも着手したからには、何らかの非違事項(申告漏れなど)を発見しなくてはなりません。
「しなくてはならない」と言うのは、調査官にもノルマ(目標)があるからです。
調査官はこなすべき調査件数を与えられており、報告書で事案ごとに要した事務(調査)日数を記入しなければなりません。
成果の出ない仕事に時間を費やしていたのでは、上司から能力を疑われてしまいます。



そこで「事前の調査」で、確実に成果が見込める=確実に何かが出ると判断できる事案だけを狙って、臨場調査を行うのです。かなりの確信を持っての狙い撃ちですから、調査にも熱が入ろうというものです。
臨場調査の手順
連絡
一般的には、相続の申告を行なった税理士に、税務署から連絡が入ります。
その上で、税理士が立ち会える予定も考慮し、調査の日程を調整してくれます。
先ず税理士に連絡が行くのは、税務署としても、税務に明るくない一般の納税者(相続人)だけと調査を進めるより、申告内容などに精通した税理士の立ち合いがあった方が、話が早いからです。



相続税の申告書を見れば、税理士の署名があるので、連絡をつけるのは簡単にできるわけです。
雑談
調査官が訪問してきても、いきなり尋問口調で問い詰められたり、金庫の中を調べたりということはありません。
あくまでも家族を亡くした相続人の気持ちを重んじながら、さり気ない雑談から入ってきます。



しかし、その雑談こそ、重要な情報を引き出すためのものなのです。無意味な質問はないと心しておきましょう。
先ず最初に質問されるのは、被相続人(財産を残して亡くなった人)のプロフィールです。
生い立ちや趣味、亡くなった原因やその時の状況などを具体的に聞いてきます。
それが終わると質問は、相続に関したことに移ります。
具体的には、被相続人や家族の職歴や収入、配偶者の実家の状況などです。
さらに、そこから被相続人の親族関係、仕事関係者や友人関係、配偶者の親族・友人関係まで質問は広がっていきます。
資料調査
口頭による調査がだいたい終わると、次は「預金通帳はどこにありますか?」「印鑑を全て出して下さい」となってきます。
いよいよ核心の臨場調査が始まります。
税務署は事前の調査で、調査対象となっている人とその家族の分まで、過去5~6年の預金の出し入れ状況は全て把握しています。



銀行は調査に協力する義務があるので、貸金庫なども含めて取引内容は税務署に筒抜け。下手な小細工は無駄です。
調査官は相続人が通帳や印鑑を取りに行く時には、必ず一緒についてきます。
金庫やタンスの引き出しを開けたり、書庫に入ると、「ついでにそこにある資料も全部見せて下さい」と迫ってきます。
調査官は通帳や印鑑だけが見たいのではなく、その「保管の仕方」や、一緒に保管されている「他の資料」が見たいのです。



調査員が見たがる「他の資料」とは、権利証、預かり証、有価証券、通帳類、貸金庫の中身。また、隠し財産に関する情報が書いてある可能性のある手帳、日記帳などです。
名義預金・名義株
税務調査する調査官がターゲットとする財産の中で圧倒的に数が多いのが、「名義預金」と呼ばれるものです。
これは、実際に預金した本人以外を名義人とする預金のことです。
名義預金も隠し財産の一つと言えますが、殆どの人は脱税しようという意思があるわけではなく、気付かずに、或いは「少々マズいかもしれないが、まあ良いだろう」といった程度の認識で行なっているようです。



名義預金では、名義人に貯蓄能力があるかどうかをチェックします。名義人である配偶者や子には、貯蓄能力がないのが判明すれば、被相続人が預金・管理をしていた可能性がグッと高まるわけです。
名義預金と同様に調査官が重要視するのが、実際に取得・管理したのは被相続人なのに、家族名義になっている株式(名義株)や、無記名の割引債などです。
税務調査への対応の心得
税務調査は誰にとっても緊張するもの。
ましてやかなりの確率で申告漏れが発見される相続税の場合は尚更です。



スムーズに税務調査を済ませるために、税理士とリハーサルを行なっておくと良いでしょう。相続税の申告を行なった税理士なら、事情にも通じているでしょうし、税務署が何を聞いてくるか予想することができます。
いざ本番では、まごまごしているとあらぬ疑いを持たれてしまいます。
調査官の質問には「はっきりと素直に」答えていれば、何の問題もありません。
税務調査はあくまで任意調査。
全ての質問に答える必要はありません。
答えたくないことや見せたくないものはきっぱりと断ることができます。



しかし、嘘を答えるのは非常に危険です。上記で挙げた、職歴や収入に関する「何気ない質問」はここぞという時に効いてきます。
例えば、働いた経験のない人に巨額の預金があったりした場合には、名義預金ではないかと疑われます。
その時になって急に「実は昔、働いていまして…」などと、取って付けたような言い訳が通用しないよう、雑談の段階で各人の職歴などをチェックしているのです。
税務調査は「調査官の心証」でかなり様子が変わるもの。
一度嘘をつくと「他にも嘘があるのでは…」となり、調査が厳しくなるのも当然です。
また、たとえその場を言い繕っても、臨場調査が終わった後には、相続人の答えた内容が真実かを確認する「反面調査」が行われることもあるのです。
税務調査で申告されていない財産が発見された場合などは、新たに税金が加算されます。
また、期限内に納税しなかった場合や、間違って申告した場合にもそれぞれ税金が加算される場合があります。
財産があるのを本当に気付かず、税務調査で初めて分かったような場合は「過少申告加算税」で済むでしょう。



しかし、財産を隠そうと意図的に動いた場合は「重加算税」という罰的意味合いが強い、かなりの高率の税金が取られます。但し、税務調査で申告漏れを指摘される前に自分から修正申告をした場合は、加算税を免除されます。
まとめ
税務調査と言っても、全ての納税対象者のところへやって来るわけではありません。
では、実際に税務調査が行われるのは、どんなケースなのでしょうか。



先ず、遺産総額が概ね2億円以上なら、ほぼ間違いなく調査が入ると考えた方が良いでしょう。相続財産が多額になるほど手続きも複雑化し、その分、見落としやミスも多くなるのです。
申告を怠っていた人のところへも調査はやってきます。
もちろん、申告書の内容がいい加減だったり、明らかに辻褄の合わない点がある場合なども、真っ先に調査の対象となります。
こうして税務調査が開始されるわけですが、ある日突然、調査官が訪れるようなことは、先ずありません。
事前に了解を取った上で、調査日を連絡してきます。
税務調査と言うと、家中くまなく調べられる光景を思い浮かべるかもしれませんが、実際にはそうしたケースはごく稀なのです。
訪れた調査官は、いきなり本題には入らずに、先ずは故人の経歴や趣味、生前に好きだったこと、交友関係、病歴、死亡当時の様子などを、さり気なく聞いてくることでしょう。



でも、こちらが緊張しないよう気遣ってくれている、なんて思ったら大間違い。このやり取りが、後で申告内容の矛盾を見つけ出す糸口となるのです。
そして、財産の管理や不動産の利用状況、遺産分割の状況など、書類の提出を求めて細かく突き合わせながら、少しずつ核心部分に近付いていきます。
もちろん財産の移し替えがないか、銀行の預金も調べられますが、故人名義の通帳だけでなく、家族全員、過去5年以上に遡って調べられることもあるようです。
税務調査の時間はまちまちで、1日で終了することもあれば、数か月かかる場合もあります。



調査官の質問には、はっきりと正確に答えるのが鉄則。言いなりになったり、その場しのぎの嘘をついても、到底プロの目はごまかせません。
もちろん申告内容に問題がなければ、慌てたり感情的になることもない筈です。
さらに、予め必要な書類などを準備しておけば、その分調査もスムーズに進みます。
納税後も関係書類はきちんと整理して保管するようにしましょう。



また、何より自分が被相続人になったとき家族に迷惑を掛けないためにも、普段から財産の内容を正確に伝えておくことも大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。