遺言書は書くべき?
遺言書が必要な人は?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 遺言でできること
- 遺言書が必要な人
- 遺言書を作るメリット
遺言でできること
基本的に、遺言には何を書いても良いとされています。
「兄弟仲良くするように」「私の葬式は質素にすること」などの内容を書いても構いません。
但し、自由に書いて良いものの、遺言に書いても「法的には効力を持たないもの」があります。それを知らずに漠然と書いたのでは、トラブルの原因になりかねません。
例えば、「葬儀は身内だけで」「家族全員が協力して家業を盛り立てていくように」「大学病院に献体してほしい」などは、本人の希望を伝えるものとしては意味のあることですが、法的な拘束力はありません。
従って、それを実行するか否かは家族の任意となります。
遺言に書いて法的効力を生じる事項は決められています。これを「遺言事項」といい、大きく分けると次の3つがあります。
- 相続に関すること
- 財産の処分に関すること
- 身分に関すること
もちろん、これ以外のことを書いても遺言書自体が無効になることはありません。
- 遺言事項 -
- 相続分の指定及びその委託 … 法定相続分と異なる相続分を指定できる
- 遺産分割方法の指定及びその委託 … 誰にどの財産を相続させるかなどを指定できる
- 遺産分割の禁止 … 死後5年以内の期間で遺産の分割を禁止できる
- 相続人相互の担保責任の指定 … ある相続人が取得した財産に欠陥があった場合、他の共同相続人はその損失を相続分の割合で分担しなければならないという民法の規定を変更できる
- 相続人の廃除及び廃除の取り消し … 相続人の廃除又は廃除の取り消しの意思を表示できる
- 特別受益の持ち戻しの免除 … 生前贈与を相続分に反映させない旨の意思を表示できる
- 遺贈 … 相続人又は相続人以外の人に財産を遺贈できる
- 遺贈減殺方法の指定 … 遺留分を侵害する遺贈が複数ある場合に、減殺の順序や割合などを指定できる
- 寄付行為 … 財団法人の設立を目的とした寄付の意思を表示できる
- 信託の設定 … 信託銀行などに財産を信託する旨の意思を表示できる
- 子の認知 … 婚姻していない女性との間の子を認知することができる
- 後見人又は後見監督人の指定 … 自分の死亡により親権者がいなくなる未成年の子について後見人を指定できる。また、その監督人を指定できる
- 遺言執行者の指定及びその委託 … 相続手続きを確実に行うための遺言執行者を指定できる
- 祭祀承継者の指定 … 先祖の墓や仏壇などの承継者を指定できる
- 生命保険金の受取人の変更 … 被保険者の同意を得た上で保険金受取人を変更できる
遺言書を作った方が良い人
遺言書を書くか書かないかは自由です。しかし、ここで紹介するようなケースに1つでも当てはまりそうであれば、遺言書作成をお勧めします。
子供のいない夫婦
夫婦のどちらかが亡くなれば、もう一方が全財産を相続すると考えがちですが、そうとは限りません。
亡くなった人の親や兄弟にも相続の権利があり、例えば、兄弟の相続分は4分の1です。
もし、その人たちに相続分を請求されたら、自宅以外に財産がなければ、自宅を処分してでも相続分を支払わざるを得なくなってしまいます。
もし、配偶者に全財産を相続させたいと願うなら、その旨を遺言するしかありません。兄弟には遺留分がないので、遺言通りに配偶者に相続させることができます。
相続人以外に財産をあげたい人
通常、代襲相続の場合を除くと、孫や嫁、娘婿、舅・姑、いとこ、甥・姪などには相続権がありません。
死後、彼らに財産をあげたいと思うなら、そのように遺言する必要があります。
例えば、夫が亡くなった後、妻が夫の両親の面倒を見るといったケースがよくありますが、いくら同居して世話をしても、妻には彼らの財産を相続する権利がありません。
もし、舅や姑が嫁に財産を残したいと思うなら、生前のうちに嫁を養女にするか、遺言をすることです。逆に言えば、遺言さえあれば、誰にでも財産を渡すことができるのです。
子供の数が多い夫婦
子供の人数が多いと、財産を分割する時に争いが起こりやすいものです。
生前に、結婚資金や住宅資金などの援助を得ていた子供がいたりすると、他の子が不公平感を抱き、揉めるケースもあるのです。
それらの事情を考慮した遺言書があると、相続は比較的スムーズに進むでしょう。
相続人の多い人
遺言書がない場合、相続人全員の合意がなければ相続手続きができません。
相続人がたくさんいると、それだけ合意を得ることが難しくなります。
合意が得られない場合は、最終的に裁判手続きに移らざるを得ませんし、合意が得られたとしても、これは大変な作業となるのです。
ですから、例えば「余り付き合いのない甥・姪には相続させない」など、生前の人間関係に応じて遺言書を作っておくことも考えましょう。
内縁(事実婚)の相手がいる人
戸籍上の血縁関係か婚姻関係がないと、相続人になることはできません。
つまり、どんなに長い間夫婦として暮らしていても、事実婚のカップルは、互いに相手の財産を相続することはできないということになります。
本人が亡くなると、その家族が出てきて一切の財産を持っていってしまいます。
残された内縁の妻(夫)の老後の生活を守るには、遺言書を作成して財産を遺贈しておかなければなりません。
遺贈とは、遺言により相続人でない相手に財産を残すことです。
もらう人を「受遺者」と言い、相続人とは区別されます。
但し、遺贈には思わぬ落とし穴がありますので注意が必要です。
例えば、「全財産の半分」や「全財産の3分の1」など、財産の割合を指定して遺贈する「包括遺贈」は、実質的に相続人と同じ権利・義務が受遺者に発生して、借金の返済などの負債も引き継ぐということになります。
相続と同じで放棄(又は限定承認)もできますが、このような事態を回避するためには、「特定遺贈」を行いましょう。
- 特定遺贈 … 「□□の土地」「〇〇の株式」など、与える「財産を特定」する
- 包括遺贈 … 「全財産の1/4」など、与える「財産の割合を指定」する
また、夫婦別姓で事実婚を選択している人が増えていますが、入籍していなければ、法的には内縁関係にあるのと同じです。
相続権はありませんので、財産を残すには遺言書が必要になります。
離婚・再婚した人
夫婦仲が悪く別居中でも、離婚が成立していなければ、配偶者には相続権があります。
離婚成立前に自分に何かあったらと不安な人は、遺言書で配偶者に相続させないようにできます。
但し、遺留分は残ります。場合によっては相続人から廃除するなどの対応をとった方が良いでしょう。
相続させないように遺言するだけでは遺留分の請求をされる可能性がありますが、廃除すれば完全に相続の権利を失わせることができます。
また、再婚相手の連れ子は、養子縁組をしていないと相続権がありません。
連れ子に実子と同等の相続を望む場合には、生前に養子縁組しておくか、遺言で財産を遺贈しましょう。
不動産の割合が多い人
遺産に占める不動産の割合が多い人も、遺言書を書いた方が良いでしょう。
不動産は、現金や預貯金と違って分割しにくく、揉める要素の多い財産です。
家そのものを、物理的に3等分、などということはできないからです。
不動産の処分をどうしたいか(誰に相続させたいか)を予め遺言書で決めておくことで、遺産分割の揉め事を防ぐことができる場合もあります。
特に、被相続人と一緒に住んでいた配偶者に相続させたい場合は、その旨をしっかりと遺言書に残しておくのが良いでしょう。他の相続人も、心情として納得しやすくなります。
気掛かりな家族がいる人
自分がいなくなった後、病気や障害のある家族のことが心配な人は、彼らが確実に財産を相続できるように遺言したり、彼らの面倒を見てもらうことを条件に、信頼できる人に財産の一部をあげるように遺言をする(負担付き遺贈)ことを考えると良いでしょう。
また、相続人となるべき人の中に行方不明の人がいる場合、遺産分割協議は相続人全員参加が原則なので、面倒なことになります。
遺言で遺産分割の方法を決めておけば、行方不明のままでも相続手続きを進めることができます。
その人が生死不明で7年以上経つ場合は、生前のうちに家庭裁判所で失踪宣告を受けて死亡したものと見なし、相続人でなくならせる方法もあります。
もし、自分に対して暴力や暴言を繰り返すような家族がいる場合は、遺言でその人を相続人から廃除して財産を相続させないようにすることもできます。
反対に、婚外子がいる人は、遺言でその子を認知して相続人に加えてあげることができます。
認知しない場合でも、遺言書で財産を遺贈することは可能です。
ペットの世話が気になる人
自分の死後、大切なペットの世話が心配だという人は、家族や友人、ペット業者などにペットの世話をしてもらう代わりにお金を遺贈するという内容の遺言書を作ることが考えられます。
これも「負担付き遺贈」です。但し、予め相手の了解を得ておくことが必要です。
独身で身寄りがない人
身寄りのない独身者の場合、原則的に財産は国庫に入ってしまいます。
それよりは、遺言することでそれまでお世話になった人や友人に財産を遺贈したり、出身校や公益団体に寄付するなど有効な活用法を考えては如何でしょうか。
遺言書を作るメリット
遺言書があれば、様々な願いが叶えられることは意外に知られていません。ほんの一部ですが、以下に紹介しましょう。
遺産争いを未然に防げる
遺言書がないと、亡くなった人が財産の分け方をどのように考えていたのか分からないので、遺族が好き勝手なことを主張して話し合いがスムーズに進まない可能性があります。
相続がトラブルになりやすい理由の一つは、亡くなった人の財産を第三者が勝手に分けようとするからです。
また、多くの人にとって、相続は何もしないでお金や不動産が手に入る、言わば「棚ぼた」のチャンスです。
滅多にない機会なので、なるべく自分の取り分を多くしたいと考えるのは当然でしょう。
しかしその結果、遺産分割協議がまとまらなくて相続手続きが進まなかったり、遺産の分け方を巡って親族関係が悪化することになりがちです。
このような場合に遺言書が残されていれば、遺族は余計な気を使わずに済み、遺産争いを未然に防ぐことができた筈です。
特定の人に財産を確実に残せる
遺言書がなければ、遺族は原則として「法律に定められた割合」で遺産を相続することになります。
この割合を「法定相続分」と言います。
「私が死んだら、法定相続分通りに相続すれば良いから、遺言書を作る必要はない」と考えている人もいるでしょう。
しかし、相続人が法律で決められた通りに相続できる保証はどこにもありません。
相続人全員が合意すれば、どのような分け方をしても構わないからです。
相続においては、それまでの家族間の力関係がそのまま出ることが多いようです。
図々しい人や声の大きい人ほど得をして、優しい人、遠慮深い人ほど損をすることを忘れてはなりません。
そのために、それまで故人の家に住んでいた人が家を追い出されたり、もらえる筈の財産がもらえずに生活に困ることがあるかもしれません。
遺言書があれば、特定の人に確実に財産を相続させられるため、その人の生活を守ることができます。
相続手続きがスムーズになる
遺言書があれば、実務面でも大きなメリットが生じます。
人が亡くなると、遺族は相続手続きのためにその人の財産や負債にどんなものがあるか調べなければなりませんが、全財産を把握するのは結構手間が掛かります。
しかし、遺言書があれば大体の見当が付くので、遺族の負担を大幅に減らすことができます。
特に、遺族が高齢や病気だったり、勤め人で時間がないような場合はメリットが大きいと言えます。
生前の希望を叶えられる
お世話になった人にお礼をしたい、子供を認知したい、相続人から廃除したいといった希望を遺言によって叶えることができます。
葬儀の方法やお墓などの希望も、家族に伝えることができます。
- 特定の人に財産をあげたい
- 葬儀やお墓について希望がある
- 献体や臓器提供をしたい
- ペットの面倒を見てほしい
- 事業を子供に承継させたい
- 相続させたくない子供がいる
- 婚姻外の子供を認知したい
- 未成年の子供に後見人を指定したい
- 身寄りがなく、お世話になった人にお礼がしたい
- 妻や子供の扶養を誰かに依頼したい など
まとめ
- 遺言を残した方が良い様々なケース -
- 夫婦の間に子供がいない
- 先妻の子供と後妻の子供がいる
- 事実婚による配偶者がいる
- 再婚した
- 再婚した配偶者に連れ子がいる
- 相続人の数が多い
- 家族(相続人)の仲が悪い
- 行方不明の相続人がいる
- 財産を与えたくない相続人がいる
- 子供に貢献度を考慮した相続をさせたい
- 家業を継ぐ子供に事業用の財産を相続させたい
- 内縁の妻に財産を残したい
- 病弱又は障害者の家族がいる
- 子供の妻に介護してもらっている
- よく尽くしてくれた嫁に財産をあげたい
- 生前に多額の援助をしている子供がいる
- 自宅以外の財産が殆どない
- お世話になった人に財産を贈りたい
- 可愛がっているペットがいる
- 独身で身寄りがない
- 相続人がいないので、遺産を社会のために役立ててほしい など
- 遺言を作成するメリット -
- 被相続人が財産の配分を決められる
- 遺産争いを未然に防げる
- 相続人の遺産分割協議の手間が省ける
- 相続人以外の人へも財産を渡せる
- 相続手続きがスムーズになる
- 生前の願いを叶えられる など
最後までお読みいただき、ありがとうございました。