悩める人退職金の種類と掛かる税金は?



退職金の有利な受け取り方は?



こんな疑問・悩みを解決します!
- 退職金の受け取り方法
- メリット・デメリット
- 受け取り方の注意点
- 受け取り方と節税効果
- 退職金の上手な使い方
はじめに
定年退職に当たって、退職金を楽しみにしている人も少なくないと思います。
多くの人にとって、退職金は人生の中で最も大きな収入。
見たこともない大きな金額を前に慌てないためには、どう扱うかなど、事前に考えておくことが大切です。



特に受け取り方法次第では、掛かる税金が変わり手取りにも大きく影響します。受け取り方の違いによる、メリットやデメリットなどを紹介しましょう。
勤務先の退職金制度を確認しておく
退職金は、どの会社でも必ずもらえるというものではありません。
日本で退職給付制度を採用している会社は約8割で、残りの2割には退職給付制度がないのです。
例えば、居酒屋チェーンから始まって、介護事業などにも進出しているワタミも退職金制度を廃止した企業の一つです。
外資系の会社など年俸制の場合、退職金は給料に含まれているため、別途退職時に受け取ることはできません。
定年直前になって慌てないよう、自分の会社の制度はしっかり確認しておきましょう。



自分の会社の制度や、自分の受け取り見込額を早い段階でチェックしておくことは、将来のプランを立てる上で重要なことです。
自分の退職金に関わる事柄を確認したい場合は、
- 会社の就業規則を見る
- 会社の退職金規定を見る
- 人事や総務などの部署に問い合わせる
などの方法があります。
そして、退職金の受け取り方も1つだけではありません。
退職金の受け取り方法
退職給付制度には、退職金を一括で受け取る「退職一時金」と、分割して年数を掛けて受け取る「企業年金」の2つに大きく分けられます。
- 一時金 … 退職一時金
- 年金 … 企業年金
そして、企業年金には「企業型DB(確定給付企業年金)」や「企業型DC(企業型確定拠出年金)」などの種類があります。
- 確定給付企業年金(DB) … 将来もらえる年金額が予め約束されているタイプの企業年金です
- 企業型確定拠出年金(企業型DC) … 会社が掛金を出し、従業員が運用方法を自分で選ぶ年金制度です
- 退職金共済制度(中小企業退職金共済等) … 中小企業の事業主が共済に加入し、毎月掛金を支払うことで、従業員が退職した時に退職金が共済から直接従業員へ支払われます
我が国では、退職給付制度がある会社のうち、7割以上が退職一時金制度を採用していると言われています。
しかし、近年は退職給付制度の見直しを行い、一時金に加えて「企業型DB」や「企業型DC」を導入し、複数の制度を併用している企業もあります。
企業型DBは、会社が掛け金を出して運用し、予め給付額も決まっているという制度です。
一時金か、5~20年間の年金で受け取るかを選択できるというのが一般的です。
企業型DCは、会社が掛け金を出して「従業員本人」が運用するというものです。
定年に関係なく10年以上の加入で60歳以降に一時金又は年金で受け取れるようになっています。
このように企業年金制度がある企業の場合、退職金の受け取り方は「一時金で受け取る」「年金で受け取る」「一時金と年金の併用で受け取る」の3つから選べるケースが多いようです。
- 一時金として一括で受け取る
- 年金として分割で受け取る
- 一時金と年金を組み合わせて受け取る



退職金の受け取り方は一つではありません。一時金か、或いは年金として分割で受け取るか。その併用か。会社によっては、それらの選択もできるのです。
上記のように、自分が定年を迎える60歳から、公的年金を受け取る65歳までをどのように過ごすのかを念頭に置いて、一番賢い受け取り方を選択するようにしましょう。
受け取り方によるメリットとデメリット



一時金か年金かの受け取り方によって、引かれる税金が異なり、そのお金の活かし方や使い道が制約されることもあります。受け取り方法を決める前に、メリット・デメリットを知っておきましょう。
詳しくは下記で説明しますが、一時金で受け取る場合の最大のメリットは、税金面での優遇が大きいこと。
また、「退職後に住宅ローンや教育ローンの残りを一括で返したい」「住まいをリフォームしたい」など、まとまった資金が必要な家庭にとっては、とても役立ちます。
半面、多額のお金が我が家の口座に入ることで気持ちが大きくなり、あれこれと使ってしまうと、老後の長い生活に資金不足が起こる可能性も。
それが心配だからと残しておくなら、預け先や運用方法もきちんと考えておくことが必要でしょう。
一方で、生活資金などを補うために少しずつ使いたいなら、年金でもらう方が便利です。
毎年、年金のように少しずつ受け取れば、会社側の運用期間が長くなる分だけ、一時金よりも最終的な受取総額は多くなります。



但し、それによって毎年の税金や社会保険料が増える場合もあります。また、勤務先の経営状態や預け先の運用悪化で、途中で減額される恐れもあります。
- 一時金で受け取るメリット -
- 税金面の優遇が大きく、勤続年数が長ければ、非課税になることもある
- 住宅ローンの完済やリフォームなど、退職後に必要な大きな支払いに充てることもできる
- 一時金で受け取るデメリット -
- 預け先や運用方法を慎重に考える必要がある
- 計画的に使わないと、いつの間にか無くなってしまうこともある
- 年金で受け取るメリット -
- 毎年少しずつ受け取るため、生活資金として使いやすい
- 預け先や運用方法に悩む必要がない
- 年金で受け取るデメリット -
- 毎年支払う税金のほか、健康保険料などが増える可能性がある
- 大きな金額の支払いに充てたい場合は、自分で貯めていくことが必要
- 勤務先の経営や運用状況が悪化すれば、途中で減額される可能性がある
企業年金のもらい忘れに注意
先に述べた通り、退職金の受け取り方には「一時金で受け取る」「年金で受け取る」「一時金と年金の併用で受け取る」の3種類があります。
自分の勤務先が採用している制度が一時金のみという場合は、全額一括でしか受け取る方法はありませんが、企業年金制度を採用している会社の場合は、先の3つの方法から選べるというパターンが殆どです。



年金で受け取る場合には、受け取り年齢や回数などに要件があるので、事前によく確認しておきましょう。特に注意しておきたいのは、企業年金は退職時に自分で手続きをしておかないともらえないという点です。
企業年金連合会によれば、2022年3月末時点で企業年金を申請せずにもらい忘れた人の数は約112万人にも上るとされています。
退職時の会社のことは忘れないにしても、以前勤めていた会社で加入した自覚がなく、請求手続きをしていなかったというケースが多いのです。
過去に転職した経験がある人は、勤めていた会社や企業年金連合会に問い合わせてみましょう。
退職金の税金と受け取り方の注意点
退職金は老後の見通しを立てる上で頼りになる資金です。
そこにどの程度の税金が掛かってくるのかは、誰もが気になるところだと思います。



2,000万円も退職金をもらったら、半分近く税金として取られてしまうのでは…?



大丈夫!退職金は長い間働いてきた給料の後払い的な性格を持っているため、税金がたくさん掛からないように配慮されています。けれど、受け取り方によっては税金が高くなってしまうこともあり得るのです。
先ず「退職一時金」として受け取る場合には、「所得税」と「住民税」が掛かります。
所得税は、勤続年数に対して、受け取った退職金が多ければ多いほど税率が高くなるという仕組みです。
住民税は10%です。
但し、退職金には大きな控除があります。
下記のように、「退職所得控除」の金額は勤続年数で変わり、例えば、勤続年数20年の場合は800万円、30年の場合は1,500万円、40年の場合は2,200万円控除されます。
受け取る退職金が退職所得控除の金額よりも小さければ、税金は掛からないということになっているのです。
退職金が退職所得控除より多ければ、その差額に2分の1を掛けたものが退職所得の金額となり、これに所定の税率を掛けたものが所得税や住民税として決定されます。
この際、社会保険料を払う必要はありません。



退職一時金を受け取る場合は、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出するのが一般的で、これを出せば、税金の精算も勤務先でしてくれます。
- 退職所得控除額の計算方法 -
- 勤続年数20年以下 … 40万円×勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超 … 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
- 課税退職所得金額の計算方法 -
- 退職所得=(退職金の額-退職所得控除額)×1/2



退職所得控除額の最低額は80万円です。勤続年数20年以下は1年で40万円ずつ、勤続年数20年超は1年で70万円ずつ増えます。
- 退職所得税額の計算方法 -
- 退職所得×所得税率-控除額=退職所得に掛かる所得税額
一方、年金として受け取る場合は、毎年、公的年金などど合算し、「公的年金等控除」を差し引いて税額が決まります(雑所得扱い)。
例えば、収入が「公的年金と退職年金」だけの場合、合計額から公的年金等控除を差し引き、更に所得控除の合計額を引いた金額が課税所得となります。
この課税所得に基づいて、所得税・住民税・社会保険料を支払います。
- 課税所得=(公的年金等の収入額-公的年金等控除)-所得控除の合計額



税額が増えると、国民健康保険料や介護保険料も高くなります。節税効果という観点で比較すると、一時金でもらう方が優遇されているのです。
併用の場合は、退職金の額が退職所得控除の額のギリギリまで一時金で受け取り、残りを公的年金等控除の範囲内で収まるように年金で受け取ると節税効果が高くなります。
以上のように、退職金の受け取りには細心の注意を払いたいものです。
一時金と年金の選択ポイント
上記で説明したように、退職一時金は他の所得とは分けて、その年に1回だけ掛かる税金で、退職前に勤務先から渡される「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、自分で精算する必要はありません。
この書類を提出しないと、退職一時金からは一律20.42%の税金が引かれてしまうので、翌年に自分で確定申告をして精算することが必要です。
対して、年金で受け取る場合は、その収入が毎年、所得税・住民税の対象になることを忘れずに。
以前は、年金受給者はそれらの収入を確定申告し、税金を精算することが必要でしたが、2012年の確定申告(2011年分の申告)から、公的年金等の収入が年400万円以下で、年金以外の所得が年20万円以下なら、申告しなくても良いことになりました。



しかし、確定申告が不要になったからといって、税金が安くなるわけではありません。公的年金や企業年金からは、金額に応じて所得税が差し引かれ、住民税についても65歳以降は年金からの天引きになります。
元会社員で公的年金が多い人が、退職年金(企業年金)などで毎年の収入が更に増えると、その分だけ所得税・住民税は高くなり、手取り額は減少します。
その場合、毎年の国民健康保険料や介護保険料も高くなるケースが多いでしょう。



以上のように説明してきましたが、将来、税金や社会保険料も改正される可能性がありますから、税額などの損得だけでなく、退職後の生活プランや資金計画を考えて、それに合った受け取り方法を選ぶのが一番。
迷った時は、公的年金が多い人は一時金での受取額を多めに、逆に公的年金の少ない人は、年金での受取額を多めにするのが、現実的な方法でしょう。
退職金の上手な使い方
住宅ローン
定年退職を機に住宅ローンを完済したいと考える人は多い筈。
実際、退職金でローンを完済すれば、定年後の収入が先細っても、現役時代と変わらぬ金額を支払い続ける必要がなくなるのがメリットでしょう。



しかし、退職後の生活は収入を得る手段が少なくなるため、介護費など不測の事態に備えて、退職金を確保しておくことも大切。
- 退職金の住宅ローンへの上手な使い方 -
- 住宅ローン残高が退職金の4割以下 … 退職金を使って全額返済してOK
- 住宅ローン残高が退職金と同額レベル … 一部繰り上げ返済して返済を続ける
住宅ローン残高や、手持ちの金融資産、退職金や年金額などを基に、老後資金が途中で不足しないように返済方法を考えましょう。



老後資金として退職金は重要!住宅ローンの返済に充てる場合は、退職金の6~7割は手元に残るよう、一括返済額を慎重に考えましょう。
資産運用
退職金を運用して少しでも資産を増やしたいという人は多いでしょう。



ただ、だからと言って、金融機関が実施する「退職金無料相談会」「資産運用セミナー」などに行くのはお勧めできません。
金融機関に相談に行くと「退職金運用プラン」といった名称の商品を勧められることがあります。
これらは、定期預金と投資信託のセットであることが多く、定期預金の金利は高いのでお得に見えますが、期間設定が短く、更にセットの投資信託は販売手数料や信託報酬が高めに設定されていたりします。



実際、金融機関の営業から勧められるまま、よく考えないで投資商品に運用して、「こんな筈じゃなかった…」と後悔するケースは多いのです。
投資を始めるなら、退職前から老後に備えて家計を見直し、支出を整えた上で、方針を決めておくことが大切です。
中にはハイリスクな内容の商品もあるため、資産運用をするのであれば、自分で情報収集し、積立などで投資対象も時間も分散するのがお勧めです。



退職金は大切な老後資金。手数料が高い商品やハイリスクな商品には手を出さない!運用する場合も一括で回すのはNG。老後資金は特に「リスク分散」が重要です。
まとめ
人生は90年の時代、男性でも平均寿命は80歳ほどです。
これは80歳でもまだ半数の男性が生存していることを意味しています。
さらに、生存者数が3分の1になるのは男性が86歳で、女性は90歳。
これから25年以上という長い老後の生活資金は、大半の会社員の場合、「退職金」と「公的年金」にかかっています。
特に日本では年下妻が多く、女性の平均寿命を考えると、35年以上を見越して資金計画を考えることも必要となってくるでしょう。



大学卒の場合、退職金は平均で1,400万円ほど。とは言っても、退職金をいくらもらえるかということは、各会社の就業規則で決められています。一度決められた退職金の金額は、会社といえども勝手に減らすことはできません。
また、退職金は企業年金制度と一体になっていることも多いものです。
従って、退職金を「一時金として受け取る」、「年金として受け取る」、或いは、「一時金と年金を併用して受け取る」という3通りの方法が考えられるでしょう。



会社によっては受け取り方法を選べる場合や、併用する場合の割合まで指定できる場合もあります。定年が近づいたら、退職金の金額と同時に受け取りの方法も確認しておきましょう。
どのように退職金や企業年金を受け取るのかによって、税金の金額まで変わってくるので注意が必要です。
退職所得は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると取り扱いが簡単です。
この書類を提出すれば、退職金に税金が掛かる人は自動的に所得税と住民税が差し引かれた退職金を受け取ることができ、他に手続きは必要ありません。
しかし、これを提出していない場合は、退職金を受け取る時に退職所得控除額が適用されません。
従って、退職金に対して20.42%が源泉徴収されてしまいます。
その場合は翌年の確定申告で精算しなければ、徴収された分を取り戻すことができません。



住んでいるところの近くにある税務署へ行き、必ず確定申告をしましょう。地域によっては市区町村役場などでも確定申告を受け付けていることがありますので、それぞれで確認してみて下さい。
複数の退職金を受け取る場合、税負担を最小限に抑えるために、受け取りの順番とタイミングを慎重に考慮する必要があります。
先ず、複数の退職金の総額を計算し、退職所得控除の範囲内に収まるかどうかを確認します。
もし収まる場合は、一括で一時金を受け取るのが最も簡単な方法です。
退職金の総額が退職所得控除を超える場合の対策としては、一時金と年金の受け取りを組み合わせることが考えられます。
退職所得控除と同額ギリギリまでを一時金として受け取り、残りを年金で受け取ることで、税金を最小限に抑えることができます。



但し、一時金ではなく年金形式で受け取る場合は、少々注意が必要です。退職金であっても「雑所得」として処理されるので、他の所得と併せて、毎年確定申告などで精算することになります。
公的年金の受け取りが始まった場合は、公的年金やその年に受け取った給料も併せて、所得として計算しなければなりません。
そのため、税金が高額になってしまう恐れもあるのです。



年金での受け取りは控除が少なく、雑所得として課税されるため、節税効果は限られることに留意する必要があります。こうしたことを踏まえて、退職金の受け取り方法も検討してみましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




