相続税ってどんな税金?
相続税が掛かるのはどんなとき?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 相続税ってどんな税金?
- 相続税が掛かるのはどんなとき?
- 相続財産の評価方法は?
- どれくらい財産があると相続税が掛かるのか?
- どんな財産に相続税が掛かるのか?
- 相続税が掛からない財産は?
- みなし相続財産とは?
相続税とは
例えば、Aさんが死亡すると、Aさんが所有していた財産は所有者のいない財産になってしまいます。
そこで、Aさんの家族などがその財産を引き継ぐことになります。
この財産を引き継ぐという行為が「相続」です。
相続では、死亡して財産を残した人を「被相続人」、財産をもらう人を「相続人」と言います。
つまり相続とは、被相続人の財産を、妻や子供などの相続人が引き継ぐことです。
そして、財産を引き継ぐ時に掛かってくる税金が「相続税」です。
相続税は、被相続人が死亡したことにより、その人が残した財産を、個人で相続又は遺贈などによって取得した時に課される税金(国税)です。
法的には、被相続人が亡くなった時点で、相続は開始され相続税が計算されます。
それにしても、自分の財産を家族に残すのにどうして税金が?と疑問に感じる人も多いことでしょう。
相続税の目的の一つに「富の再分配」があると言われています。
たまたま親が資産家で労せず多額の遺産をもらえる人と、そうでない人がいるのは不平等である、多額の財産をもらった人からは税金を徴収して社会に還元しよう、ということのようです。
相続税が掛かるケース
相続税が掛かるのは、これまで述べた「相続」の場合だけではありません。
「遺贈」「死因贈与」の場合にも相続税が課税されます。
遺贈とは「遺言」である人に財産を与えること、死因贈与は「私が死んだら〇〇をあげましょう」という贈与契約のことです。
遺贈も死因贈与も、相続と同じく人の死亡を原因として財産の移転が起こりますので、相続税の課税対象になるのです。
- 相続 … 遺言書がなく、生前に自分の財産を誰にあげるのかを決めていないケース
- 遺贈 … 生前に遺言書で、自分の財産を誰にあげるのかを決めているケース
- 死因贈与 … 生前に契約書で、自分の財産を誰にあげるのかを決めているケース
遺贈・死因贈与 ➡ 法人が引き継ぐ場合は、相続税ではなく「法人税」が掛かってきます。
相続財産の評価方法
相続税の計算で一番難しいのは「財産評価」です。
つまり、土地、建物、株式などの財産をいくらで評価するのか、ということです。
現金や預貯金はそのままの額が財産評価額なので簡単ですが、その他の財産は簡単にはいきません。
土地や建物の価額は、売る人や買う人の意思で安くも高くもなるからです。
それでは、現金以外の土地や家屋といった財産の評価はどうするのでしょうか。
相続税ではそれぞれの財産の種類に応じて評価方法が決まっています。土地には土地の評価方法、建物には建物の評価方法、株式、ゴルフ会員権…というように、財産に応じて評価方法が決まっているのです。
相続税を減らせる制度
相続税の基礎控除額
それでは、いくら以上財産があると相続税が掛かってくるのでしょうか。
相続税を納めるのは、相続や遺贈(死因贈与を含む)によって財産をもらった人です。
しかし、遺産を取得した人のうち実際に相続税を納める義務のある人は、そう多くありません。
何故なら、相続税には大きな基礎控除があるからです。
基礎控除額を超える遺産がある場合のみ、納税義務が生じます。
基礎控除の額は法定相続人の数に応じて変わり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。
相続人の数に関わらず「3,000万円」が控除され、更に1人当たり「600万円」控除される仕組みです。相続財産から基礎控除額を引いた分に相続税が掛かります。
- 相続税の基礎控除額 -
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
5人 | 6,000万円 |
例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の計3人の場合、基礎控除の額は4,800万円。
相続人が4人の場合なら、基礎控除額は5,400万円です。
遺産の総額がこれ以下であれば、相続税は一切掛かりません。
反対に5,400万円(4,800万円)を超える財産がある時は、超える部分に相続税が掛かってくることになります。
大きな基礎控除と言っても、その程度の額ならうちは相続税が掛かるのでは…と心配になった人がいるかもしれません。
確かに地価の高い都市部だと、主な財産は自宅と預貯金くらいという人でも、自宅敷地だけで基礎控除額を上回ってしまう人が大勢いそうです。
もし手持ちの現金で相続税を払えなければ、自宅を売却するしかありません。
そこで、国は被相続人が生前住んでいた自宅などの不動産に対し、小規模宅地等の特例制度を設置。
相続税を大幅に軽減できる仕組みを作っているのです。
主な対象となっているのは、
- 特定居住用宅地 … 故人が生前住んでいた自宅
- 特定事業用宅地 … 故人が事業に使っていた店舗や工場など
- 貸付事業用宅地 … 故人が他人に貸していた賃貸アパートや駐車場など
の三つ。
前述の基礎控除と自宅敷地の評価の特例は、相続税の特徴として押さえておきたい大切なポイントです。これにより、大部分の人は相続税が掛かりません。
小規模宅地等の特例
相続財産の宅地に関しては、その評価額を80%減額できる切り札があります。
それは、「小規模宅地等の特例」というものです。
例えば、都心部に自宅があって、その土地の評価額が5,000万円だったとしましょう。
小規模宅地等の特例が適用されれば、この土地の評価を80%も減らすことができます。
5,000万円の土地なら、20%分の1,000万円だけが相続税の課税対象になるのです。
自宅の土地にこの特例が適用される対象面積は、330㎡までです。
また、自宅の土地以外に、事業用の土地も対象となります。
先ずは、特例を受けるための要件を確認しましょう。
要件の1つ目として、次のいずれかに当てはまる必要があります。
①被相続人が相続開始直前まで自宅として住んでいた宅地である
②被相続人と生計を一つにしていた親族が住んでいた宅地である
自宅として住んでいる宅地であることが必要。別荘などは対象外となります。
要件の2つ目は、取得(相続)する親族ごとに異なります。
①配偶者の場合
被相続人の夫や妻の場合は、居住要件などはなく無条件で適用されます。
②同居している親族の場合
被相続人と同居している親族の場合は、申告期限まで居住し、かつその宅地を所有していなければなりません。
③配偶者も同居している親族もおらず、別居している親族がいる場合
①と②の親族がいない場合は、③の親族も適用の対象になります。
別居している親族の場合は要件が多く、更に相続開始から申告期限までその宅地を所有することも要件となります。
加えて、2018年4月1日以降の相続から、次の2つの要件が追加されました。
- 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族、又はその者と特別な関係のある法人が所有する、国内にある家屋に居住したことがない者
- 相続開始時において、居住していた家屋を過去に所有していたことがない者
配偶者、同居している親族、同居していない親族でそれぞれの要件が変わります。
配偶者の税額軽減
もう一つのポイントは、配偶者には税額軽減の制度があることです。取得した遺産額が法定相続分又は1億6,000万円までなら、配偶者に相続税は掛かりません。
配偶者については、被相続人の財産形成に寄与していることや、被相続人死亡後の生活保障面などが考慮され、税額が大幅に軽減される特例(配偶者の税額軽減)があります。
これにより、配偶者が取得した遺産額のうち次のどちらか多い金額までは、相続税が掛からないことになっています。
- 配偶者の法定相続分の相当額
- 1億6,000万円
但し、この特例の対象となる財産は、遺産分割などによって実際に取得したものに限られます。従って、遺産分割が済んでいない場合には、原則として特例の適用はありません。
この特例により軽減される税額は、次の算式で計算します。
- 相続税の総額×(⒜と⒝のうち少ない方の金額÷課税価格の合計額)=軽減される税額
⒜ … 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分 (1億6,000万円未満の時=1億6,000万円)
⒝ … 配偶者の課税価格
この制度を上手に利用すれば、実際の納付税額はずいぶん少なくなります。
極端な話、遺産総額が1億6,000万円以下なら、配偶者が全額相続してしまえば納める税額はゼロです。
但し、余り配偶者に財産を偏らせてしまうと、二次相続時の子供の負担が大きくなり、一次・二次を通じた相続税額が却って増えてしまうことがあります。相続税は、二次相続まで視野に入れて考えることが大切です。
相続税が掛かる財産
相続税は、被相続人が所有していた殆ど全ての財産に掛かります。
また、被相続人が所有していた財産ではないけれど「みなし相続財産」として課税されるものもあります。
本来の相続財産
被相続人が死亡した時に所有していた財産のことで、後述の非課税財産を除き、金銭で見積もることのできる全ての財産が課税対象になります。
例えば、土地、家屋、株式や公社債などの有価証券、預貯金、家財などの他、特許権や著作権などの無体財産権と呼ばれるものまで含まれます。
また、借金(債務)も相続財産になります。
何故なら、相続とは、被相続人の財産上の一切の権利義務を引き継ぐことだからです。
つまり、現金や不動産などは「プラスの相続財産」、借金などの債務は「マイナスの相続財産」になります、最終的には、プラスの財産からマイナスの財産を引いた額に対して相続税が掛かるのです。
例えば、財産が3億円あっても借金が2億円あれば、相続税の対象は1億円になります。
みなし相続財産
例えば、被相続人の死亡によって受け取る生命保険金は被相続人が所有していた財産ではないので、本来は相続財産ではありません。
しかし、このような財産も本来の相続財産を取得するのと同等の経済的価値があることなどから、相続税法では相続や遺贈によって取得した財産とみなして課税することにしています。
これを「みなし相続財産」と言い、主に次のものがあります。
- 死亡保険金 … 生命保険契約などに基づいて被相続人の死亡によって支払われる保険金で、被相続人が保険料を負担していたもの
- 死亡退職金 … 在職中に被相続人が亡くなった場合に、遺族が受け取る死亡退職金や功労金。死亡後3年以内に権利が確定したものに限る
- 生命保険契約に関する権利 … 被相続人が自分以外の人を被保険者として生命保険を契約して、保険料を支払っていた場合に引き継ぐ権利
- 定期金(年金など)に関する権利 … 定期金給付契約に基づいて被相続人が掛け金を負担し、被相続人以外が契約者であるもの
そのうち、実際に課税される例が多いのは「生命保険金」と「死亡退職金」の2つです。
但し、生命保険金や死亡退職金には、非課税限度額が設けられているので、全額が相続財産になるわけではありません。その非課税限度額を超えた分が、相続財産に加算されます。
- 生命保険金の非課税限度額=(500万円×法定相続人の数)×その相続人の受け取った保険金の額÷相続人全員の受け取った保険金の額
従って、例えば、被相続人の死亡により支払われる生命保険金が3,000万円で、法定相続人の数が3人(配偶者・子2人)の場合、非課税限度額は3人合計で1,500万円(500万円×3人)となります。
この場合、相続人がどのような割合で保険金を相続しても、1,500万円までは非課税ということです。但し、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はありません。
一定の贈与財産
被相続人から生前贈与を受けた財産のうち次の2つに該当するものは、相続財産に取り込んで相続税が課税されることになっています。
①相続時精算課税制度に係る贈与財産
被相続人から贈与を受けた際に相続時精算課税制度を選択した子がいる場合、その子が本制度の適用以後に被相続人からもらった全ての財産が相続税の課税対象となります。
②相続開始前3年以内の贈与財産
相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けている場合(①に該当するものを除く)には、その贈与財産の価額を相続財産に加えることになっています。
例えば、被相続人が死亡した日の2年前に100万円の現金を贈与していた場合、その100万円も相続財産になります。
生前贈与でも、贈与方法を工夫すると相続税より贈与税を安くすることができるので、相続税の回避を防ぐためにこのような制度があるのです。
但し、この制度は相続又は遺贈により財産を取得した者にのみ適用されるので、相続人になっていない孫などがいくら多額の贈与を受けていても、贈与税を払っていれば相続財産に加算する必要はありません。
また、贈与を受けた時に払った贈与税額は相続税額から引くこともできますから、二重に税金を納めるわけではないので安心して下さい。
相続税が掛からない財産
相続税の掛からない財産には、主に次のものがあります。
- 墓地・仏壇など
墓地や墓石、仏壇、仏具、神棚などは一般の相続財産とは区別して承継されるものであり、また日常礼拝の対象とされていることから非課税となります。
- 相続人が取得した保険金のうち一定額
相続によって取得したと見なされる生命保険金や損害保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。
- 相続人が取得した死亡退職金のうち一定額
相続によって取得したと見なされる死亡退職金のうち、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。
- 公益事業用財産
宗教、慈善、学術など公益を目的とする事業を行う人が取得した財産で、その公益事業に使うことが確実なものは非課税です。
- 国などへ寄付した財産
相続財産を相続税の申告期限までに国や地方自治体、特定の公益法人などに寄付した場合や、特定の公益信託の信託財産として支出した場合は非課税になります。
- 皇室経済法の規定により、皇位と共に皇嗣が受け継ぐもの
- 墓地や墓石、仏壇、祭具など日常礼拝の対象としているもの
- 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う人が取得した財産で、その公益事業に使われることが確実なもの
- 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
- 相続人が取得した生命保険金などのうち「500万円×法定相続人の数」までの金額
- 相続人が取得した死亡退職金などのうち「500万円×法定相続人の数」までの金額
- 国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付したもの
- 特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの
また、業務上の死亡などで会社から支払われる弔慰金などは、次の額までは非課税となります。
- 業務上の死亡 ➡ 賞与を除いた給与三年分
- 業務外の死亡 ➡ 賞与を除いた給与半年分
まとめ
相続税は、人の死亡を原因として財産を取得した人に課される税金です。
相続はもちろん、遺贈や死因贈与を受けた人も対象です。
生前贈与でも贈与税ではなく、相続税の課税対象となるケースがあります。
とは言え、相続や遺贈によって財産を引き継いだ全ての人に相続税が掛かるわけではありません。それは、相続税には「基礎控除額」というものがあるからです。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という算式で求めます。
相続税が掛かるか否かは、相続財産の総額が基礎控除額を上回るかどうかによります。相続財産の総額が基礎控除額を超えなければ、相続人の間で財産をどのように分割しても相続税は発生しません。
さらに、相続税には様々な税額控除や特例があり、それらの適用を受けられれば、相続財産の総額が基礎控除額を超えても相続税を納めなくて良い場合もあります。
特に被相続人の配偶者が利用できる「配偶者の税額軽減」や、自宅の敷地や事業用の敷地を相続する時に利用できる「小規模宅地等の特例」は、相続税額を大きく減らせるので、適用できるか必ずチェックしましょう。
尚、相続財産の総額が基礎控除額よりも少なければ相続税は掛からないので、相続税の申告は不要です。しかし、一定の税額控除や特例を利用する場合は、納税額はなくても申告が必要です。
相続税の対象となる財産は、原則として被相続人から引き継いだもの全てです。
金融資産や不動産はもちろん、未収の家賃や貸付金、著作権など、経済的価値が認められるものは全て対象となります。
また、相続財産ではないけれど、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った財産を「みなし相続財産」と言い、これらも相続税の課税対象になります。
代表的なものには、被相続人が保険料を負担していた「死亡保険金」や「死亡退職金」などがあります。
尚、みなし相続財産に対して、被相続人から相続又は遺贈により受け取った財産を「本来の相続財産」と言います。
生前贈与を受けた財産も次のいずれかに該当する場合は、相続税の課税対象になります。
- 相続時精算課税による贈与財産
- 相続開始前3年以内の相続人又は受遺者に対する贈与財産
- 「本来の相続財産」+「みなし相続財産」+「一定の贈与財産」
金銭的な価値があっても、相続税が掛からない財産(非課税財産)もあります。
例えば、墓地や仏壇などの祭祀財産、公益事業に使われる財産などが挙げられます。
また、みなし相続財産のうち、相続人が受け取る死亡保険金や死亡退職金は、全額が課税対象となるわけではなく、一定額(500万円×法定相続人の数)は非課税となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。