連帯保証・連帯債務とは?
連帯保証債務も相続の対象になるの?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 連帯保証・連帯債務とは?
- 連帯保証の怖さと恐ろしさ
- 連帯保証債務も相続の対象になるのか?
故人が借金の保証人だったら?
知らない間に債務を相続してしまうことほど、怖いことはありません。
故人に借金があれば、亡くなった後に催告の郵便が来るなどして気付くかもしれませんが、連帯保証債務の場合、借金をした人(主債務者)が支払いを続けている限り、通常は、連帯保証人には催告の連絡が来ません。
故人が遺族に連帯保証人になっていることを伝えずに亡くなり、遺族がその存在を知らないうちに相続してしまい、その後、主債務者が借金を返せなくなったら、債権者は相続人に対して連帯保証債務を取り立ててきます。
狡猾な債権者の中には、3か月以内に相続放棄されてしまうのを防ぐため、債務者が亡くなったことを知ってもすぐには催告せずに、3か月経ってから催告してくる場合もあります。
それでは、この連帯保証という制度は、どのようなものなのでしょうか。説明を読めば「連帯保証の怖さ」が分かってもらえると思います。
連帯保証制度
連帯保証人になることを頼まれる場合、「絶対に迷惑を掛けないから」「他にも連帯保証人になってもらっている人がいるから」などと説明されることがあります。
催告の抗弁権
自分が債務を負っているわけではなく、ただ保証しただけなのだから、主債務者が破産しないで生活していたら、「先ずは主債務者に請求して下さいよ」と言えると思いますよね。
これを法律用語で「催告の抗弁」と言うのですが、連帯保証人にはこれが認められません。
債権者は、主債務者に催告しないで、連帯保証人に支払いを請求できます。
連帯保証人は、これを拒むことはできません。
検索の抗弁権
では、主債務者に財産があって、そこから回収ができそうな場合、「先ず、主債務者の資産から回収して下さいよ」と言えるでしょうか。
これは、法律用語で「検索の抗弁」と言うのですが、連帯保証人はこれも認められていません。
債権者は、主債務者に資産があっても、連帯保証人に請求できてしまうのです。
分別の利益
例えば、主債務が3,000万円の債務を、主債務者の妻、その子供が連帯保証しています。
主債務者からは「女房、子供も連帯保証人になってもらっているから、お前に迷惑は掛からないよ」と言われて貴方も連帯保証をしました。
債権者が貴方に3,000万円を請求してきた場合、「保証人が3人いるのだから、3分の1である1,000万円までしか支払わない」と言いたいですよね。
これは、法律用語で「分別の利益」と言うのですが、連帯保証人には分別の利益も認められていません。
連帯保証人が何人いようとも、債権者は、債権回収しやすそうな「1人の連帯保証人から全額」を回収できるのです。
支払った連帯保証人は、他の連帯保証人に対して、求償できるにとどまります。
このように連帯保証人は、
- 先ずは主債務者に請求して欲しい、と言うこともできない
- 主債務者に××という資産が有るから、そっちから回収して欲しいとも言えない
- 他の連帯保証人が何人いても、債権者に対しては全額を支払わなければならない
という、大変重い責任を負います。
時効の中断
また、連帯保証債務には、主債務者について生じた時効中断の効力が及びます。
これにより通常は、主債務者に時効が成立しない限り、連帯保証債務も残り続けます。
30年前に連帯保証をし、それから何の音沙汰もなくても、主債務が残っていたら、未だに連帯保証責任は残っているのです。
連帯保証人になるということは、主債務者と一緒に、その全責任を負うということになります。
主債務者と違って、1円も借りたお金を使っていないのにです。
その人の人生を背負う覚悟もないのに、気軽な気持ちでなるものではありません。
連帯保証の場面と責任
このような重大な責任を負う連帯保証人なのですが、日常的には、濫用と言って良いほど多くの場面で使われています。
例えば、賃貸物件に入居する際、保証人を求められますよね。
これも通常は連帯保証人です。
賃貸入居の保証人というと気軽になってしまう人もいますが、連帯保証人が負う責任は、賃料支払い義務だけではありません。
「おひとりさま」が居住する賃貸物件の連帯保証をしたとします。
入居者が居室で亡くなってしまった場合、明け渡すまでの賃料はもちろんのこと、荷物の撤去費用、原状回復費用も連帯保証人が支払う必要があります。
もし、居室での自殺で亡くなったような場合、賃料相場が下がってしまったことについての損害賠償を求められるケースも増えています。
最悪は、失火で建物を全焼させてしまったような場合です。
失火した場合の責任を制限する法律もありますが、それは「賃貸借契約」には適用されません。
入居者の火災保険でカバーできれば良いのですが、できない場合、燃えてしまった建物や再建築するまで賃料が入ってこない損害も連帯保証人が負うことになります。
奨学金を借りるにも連帯保証人が要求されます。
果ては、入院する際にも、病院から連帯保証人を付けるように要求されます。
ありとあらゆる場面で「連帯保証」を要求されるため、連帯保証が怖いものという感覚をお持ちになれないかもしれませんが、連帯保証人になるということは、大変恐ろしいことなのです。
連帯保証債務も相続の対象になるのか?
それでも、どうしても連帯保証人になってしまうというケースだってあります。
そのような場合は、主債務者と連帯保証人との人的な繋がりが深いからだと思います。
しかし、連帯保証も相続されます。人的な繋がりがあった人同士が亡くなってもそれとは関係がないのです。
例えば、信頼のおける友人だからということで、友人の負う債務を連帯保証したとします。
その友人が亡くなり、道楽息子がその債務を継いだとしても、貴方の連帯保証はそのままです。
主債務者が代わっても、連帯保証責任は代わりません。
会社だって同じです。
貴方が経営者として会社の債務を連帯保証していた場合、経営を誰かに譲ったとしても当然に連帯保証債務を免れるわけではありません。
金融機関に連帯保証を外してもらう必要がありますが、金融機関がそれを断るケースもたくさんあります。
更に、連帯保証人になっていた人が亡くなれば、相続人が連帯保証債務も相続します。
「父はその友人と仲が良かったかもしれないけど、私は父の友人なんて会ったこともない」と言ってみても、連帯保証責任を免れることはできないのです。
ただ、連帯保証責任も相続分の限度で相続されますので、例えば、故人の負う連帯保証債務が3,000万円あったとして、それを子供たち3人で相続すれば、各人1,000万円の範囲で責任を負うことになります。
まとめ
連帯保証とは、借金の主債務者と連帯して債務の保証をすることです。
連帯保証をする人を連帯保証人と言いますが、ただの保証人と違い、連帯債務の規定が準用され、主債務者と同じ責任を負うことになります。
連帯債務とは、二人とも同じ債務を負って借金を一緒に返済していく義務があることで、連帯債務を負う人を連帯債務者と言います。
債権者である金融機関は、返済が終わるまでは、主債務者と従債務者のどちらにも請求できることになっています。
先述の通り、相続は、プラスの財産だけでなく負の財産、つまり「借金」も引き継ぎます。
もし、資産より借金の方が多い場合、相続人に「相続放棄」や「限定承認」という手続きをしてもらう必要があります。
相続放棄は文字通り、全ての遺産を放棄してしまう方法です。
限定承認とは、相続を受けた人がプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法のことです。
相続放棄や限定承認は、相続を知ってから3か月以内にする必要があります。
遺族が故人の借金の存在を知らずに3か月経ってしまい、借金の相続をしてしまったというケースはかなりあります。
借金がある場合、家族に借金を引き継がせない為には、借金が幾らくらいあるかを必ず伝えておく必要があります。
また、自分が借りた借金だけでなく、連帯保証債務も相続します。
知識不足で、連帯保証債務は相続しないと思い込んでいる人もいます。
例えば、知らされていなかった連帯保証債務を相続してしまった場合、相続人がある日突然、債権者から主債務者の債務の弁済を迫られ、破産せざるを得なくなったということも、実際には起きています。
自分がした借金だけではなく、誰かの連帯保証をしていることは、相続する家族に必ず伝え、将来の不安を未然に回避しましょう。
当記事をお読みいただければ、連帯保証人にはなるまいと思うでしょう。
もし連帯保証人にならなければいけないという場合には、是非とも、お近くの専門家(弁護士・司法書士)に相談して下さい。
保証以外の解決方法、保証の範囲を制限する方法などがあるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。