老後はマイホームの方が安心?
終の住み処はどう決める?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 老後の住まいに掛かる費用
- 賃貸か購入かを決めるポイント
- 定年後の住まいと住まい方の選択肢
- 自宅のリスクとリフォームの必要性
- 地方移住のメリットとデメリット
- 高齢者向け住居の種類
- リバースモーゲージとは
老後の住まいに掛かる費用
持ち家であっても賃貸であっても、また、住み替えを考える場合でも、住まいの費用は、家計の中で大きな比率を占めます。
用意できた老後資金の中から、住まいにいくら掛けるかによって、他の費用に回せる金額も変わってきます。
住まいの費用は、これからの暮らし方とのバランスも考えて、確保しておきましょう。
現在、賃貸であれば、家賃と更新料などがずっと掛かることになります。
定年を機に、家賃の安い場所に引っ越したり、退職金で家を購入する選択肢もあります。
持ち家の人は、「持ち家なら定年後は安心」と考えていませんか。
持ち家のメリットを生かすには、定年までに、できるだけローン残高を減らしておくことが必要です。
住宅ローンが残っていれば、家賃を支払うのと変わりません。
定年後にも住宅ローンが残る場合は、早めに準備が必要です。
現役のうちに支払いを軽減、短縮する方法を考えましょう。
持ち家には、税金(固定資産税・都市計画税)、維持管理費などの所有コストが掛かることも忘れてはなりません。
税金は、標準的な広さのマイホームで年10万~20万円程。
その他、マンションの場合は、管理費と修繕積立金がずっと掛かり、一戸建てでは、外壁や庭のメンテナンス費用が掛かります。
内装や水回りのリフォームは、マンションも一戸建ても必要です。
今の家にずっと住み続けるつもりなら、今後必要となるリフォーム費用を見積もっておきましょう。
老後資金から捻出するのが難しい場合は、住宅ローンの支払いが済んでもリフォームの予算として毎月1~2万円程度を積み立てておけば、10年で100~200万円程度が貯まります。
部屋を使いやすくするリフォームは、多少の不便を我慢すればしなくても済みますが、台所や浴室、トイレなどの「水回りのリフォーム」は、定年後に一度は必要と思っておいた方が良いでしょう。
- 老後の住まい・掛かるお金の比較 -
持家の場合 | 住宅ローンの返済 リフォーム・メンテナンス費用 固定資産税・都市計画税などの税金 管理費・修繕積立金(マンションの場合) など |
賃貸の場合 | 家賃 礼金 更新料 住み替え時の費用 など |
施設の場合 | 入居の頭金など初期費用 毎月の利用料 雑費 引っ越し費用 など |
現在の住居に拘らず、様々な選択肢を考えましょう。
賃貸?購入?
定年後に住み替えをする場合、購入するか賃貸にするか、迷うこともあるでしょう。
持ち家には、地域との繋がりが深まりやすいという良さがあります。
ローンが終われば、家を追い出される心配もありません。
一方、賃貸では、暮らし方や経済状態に合わせて、柔軟に住まいを替えられます。
高齢になると貸してくれなくなるのでは、という不安もありましたが、現在、様々な高齢者向け住宅が建てられるようになってきたため、その不安は解消されつつあります。
購入か賃貸かは、用意できる資金や、その場所にどれくらいの期間暮らす予定かなどを考えて決めましょう。
持ち家の人が住み替えを考える場合には、元の自宅を売却したり貸したりと活用することで、資金を捻出することができます。自宅がいくらで売れるか、いくらで貸せるかなどを調べておきましょう。
尚、住み替えで新たに家を購入する場合も、将来、自宅を活用することも考えて、売りやすい家、貸しやすい家を選ぶことが肝心です。
住み続ける?住み替える?
定年を迎えると、多くの人は仕事を中心としたライフスタイルが一変します。
必然的にマイホームにいる時間もこれまでより長くなり、セカンドライフと住まいの関係性は一段と緊密になります。
マイホームは老後の夢を実現する為の手段であり、それに最も適した住宅に暮らすことが大切です。
そこで、現在の住宅に
- 住み続けるか?
- 住み替えるか?
という選択肢が浮上してきます。
結論から言うと、住み慣れた家や土地、近所付き合いなどへの「愛着」を優先するか、老後の夢の実現や資産価値といった「損得勘定」を優先するかで結論が180度異なります。
愛着に価値を置くなら「住み続ける」、損得勘定を重視するなら「住み替える」という選択もあるでしょう。判断の基準を「情」とするか、「理」とするか、ここがスタート地点です。
では、今の家を終の住み処にする(住み続ける)場合のメリット・デメリットは何でしょうか。
先ず、メリットですが、何よりも家が自己所有ですから、住宅ローンを完済していれば居住費は掛からず、ある日突然に退去を迫られる可能性も極めて低い点です。
一方、デメリットは、万が一、病気などにより体の自由が利かなくなった時に介護サービスの利用が必要になる点、配偶者が亡くなるなど一人暮らしになった時に健康維持に不安が残る点などが挙げられます。
また、日本では住宅の平均寿命が約30年と言われていますので、老朽化に伴いリフォームやバリアフリー改修の必要性も出てくるでしょう。
もし、今の家を終の住み処にして、安心な老後生活を送るのなら、以下の条件をクリアしていることが望ましいです。
- 構造的、経済的にバリアフリー改修などのリフォームが可能
- 家族と同居していない場合、近くに親族や親しい友人がいる
一方、施設やケア付き住宅に入居するメリットは、家を売却したり、賃貸住宅にするなどして資産を増やせること。
反対にデメリットでは、寿命に対して預貯金収入が少ないと月額利用料が払えなくなる点、周囲とのコミュニケーションを円滑にしなければ居心地が悪くなる点が考えられます。
定年後のライフスタイルを明確にし、自宅の資産価値と今後の見通しについて把握しておきましょう。
自宅の資産価値を把握する
老後の生活資金を考える上で、自分が所有する不動産の価格を知ることは大切です。
例えば、老後の住居として、夫婦二人で、駅に近く、使い勝手の良いマンションへ住み替えようと計画した場合、先ずは今の自宅の価値が分からないと、どれだけの予算が必要になるか分からず、計画が進みません。
また、預貯金に不安がある場合に、リバースモーゲージ(後述)を使用したいと考えた時も、融資を受けられるか、また、どのくらいの金額を借りることができるかが分かりません。
自宅の価値を知るには、地元の不動産会社に聞くのが簡単な方法ですが、対面で相談するのが苦手だったり、後から営業に来られると面倒などと感じる人は、不動産売買のサイトで、自分が所有している物件と似た条件の物件の販売価格を調べてみましょう。
もちろん、実際に売却する価格とは違いますが、参考にはなります。物件情報を入力すれば、概算額を知ることができます。
宅地の価格を調べるには、国税庁のホームページに掲載されている路線価図で、路線価を調べます。
路線価とは、道路に面した宅地の1㎡当たりの評価額のことで、相続税や贈与税を算出する基となる金額です。
この金額の120%~140%が実際に取引される金額と言われています。
正確な金額を計算するには「補正」が必要ですが、目安としてなら、この路線価で調べても良いでしょう。
路線価が決められていない地域では、固定資産税評価額に国税庁のホームページに掲載されている評価倍率を掛けることで、評価額を計算します。
また、分譲マンションに居住している人の場合、そのマンションの資産価値を把握しておくことがとても重要です。
修繕積立金や管理組合の活動状況、今後の修繕計画などがチェックポイントで、これらが不十分だと資産価値は今後下がっていく見なければなりません。
そのようなマンションは、これまでも修繕などが後回しにされてきた可能性が高く、恐らく建物の寿命が来るのも早いでしょう。
「理」で判断するなら、早い時期に売却して住み替えることも検討すべきでしょう。
都会に住む?田舎へ移る?
定年後は田舎でのんびり暮らしたり、リゾート地で優雅に過ごしたりといった夢を温めている人も多いのではないでしょうか。
そこで、経済的観点から見た「都会暮らし」と「田舎暮らし」のメリット・デメリットをまとめてみました。
都会暮らし | 田舎暮らし | |
考えられるメリット | デパートやレストラン、銀行、総合病院などが近くにあり、経済的観点からも利便性が高い 公共交通機関が発達しているので、マイカーの必要性は低い | 同じ額でも、都会に比べて広い家が購入・賃貸できる 新鮮な食材が安く入手できる 自治体によっては、住宅の取得費などを支援する制度がある |
考えられるデメリット | 平均して野菜などの食料品の物価が高い 広い家に住むには、高い購入費・賃料が必要 固定資産税が高い | 都会ほど公共交通機関が発達していないので、マイカーの必要性が高い 再就職先が限られ、賃金が都会よりも低い |
田舎暮らし
地方移住のメリットは、都市部に比べ家賃が圧倒的に安いことが挙げられます。
また、家を購入する場合も、都市部で庭付き一戸建ての物件を購入することは難しいですが、地方であれば都市部の半額以下で購入可能な物件が見つかります。
また、自治体によっては、家を購入する資金やリフォーム費用に補助金制度を設けているところもあります。
全てではありませんが、都会から田舎に住み替える場合は、経済的メリットが高いと言えるでしょう。
さらに、豊かな自然の中で、健康的な生活を送れるという点もメリットでしょう。
空気も水も美味しく、新鮮な野菜や果物、魚介類なども安価で手に入ります。
「近くの山や海に出かけて自然を楽しみたい」「畑で野菜や花を作りたい」など、これまでの都市圏の生活ではなかなかできなかったことが実現しやすくなります。
ただ、田舎に住む場合、マイカーが生活必需品となります。
遠出する時だけでなく、普段の買い物や役場、金融機関へ出掛ける際にも、足代わりになる車がないとやはり不便です。
ガソリン代もバカになりませんし、いずれ免許証を返納となれば、外出が大変不便になります。
また、診療科の揃った大きな病院は、県庁所在地などの都市部にしかないことが珍しくありません。
脳卒中や心臓発作など緊急時のことを考えると不安が過ります。
もう一つ欠かせないのが、近隣住民との付き合いや町内会行事への参加です。
都会のようなドライな感覚でいると疎外感を味わい、住み辛くなります。
このことを踏まえて住み替えを検討すれば、自分に合った暮らしが見つかるでしょう。
都会暮らし
反対に田舎から都会への住み替えの場合、食費、住居費などの生活費が増大し、経済的メリットは薄いと思われます。
都会の良いところは「生活の利便性」が優れていることです。
公共交通機関が発達し、何をするにも、どこへ行くにも、移動に困ることは余りありません。
買い物や医療面でもストレスを感じることは少ないでしょう。
問題は「経済的な負担の重さ」です。
一般的に固定資産税は高く、分譲マンションも高額で、毎月、管理費以外に修繕積立金も必要になります。
修繕積立金は、将来の大規模な修繕工事などの原資となるのもで、「段階増額方式」と「均等積立方式」の二つがあります。
- 段階増額方式 … 築年数の経過と共に段階的に積立金の負担額を増やす方式で、既存の多くのマンションで採用されています。入居当初は安いのですが、4~5年ごとに増額されるため、年金生活者にとっては思わぬ固定費の増加でやり繰りが厳しくなる恐れがあります
- 均等積立方式 … 長期修繕積立金に占める概算工事総額を算出し、その金額を計画年数の月数で割り戻し、定額の修繕金を積み立てていくやり方です。修繕積立金の額は将来も変わりませんが、月々の負担額が大きくなることから、今後の生活設計に無理が出ないかどうかを見極める必要があります
住み替え後は住宅資産を活用
本格的に住み替えを考えるのなら、今、住んでいる家の最も効果的な活用を考える必要があります。
最初に思いつくのは「売却」です。
売却で得た利益を住み替え資金に充てることで、無理のない住み替えができます。
そして、固定資産税などの税金を払わずに済む点も大きいでしょう。
都会の固定資産税の評価額は田舎よりも高いケースが多いので、都会から田舎に住み替えた時は経済的に有利と言えます。
デメリットは、相続財産がなくなるので子供に資産を残すことができないことと、万が一の時に戻る家がないという点です。
一方、今の日本の中古住宅市場では、手入れが行き届いてまだ十分に住める住宅でも、築20年以上経つと価値はゼロに等しいのが現状です。
その点を踏まえて、売却よりも「賃貸」した方が資産として活用できるとの判断もできます。
賃貸にした場合、どのようなメリットが考えられるでしょう。
先ず、家賃による定期収入が見込めます。
田舎暮らしが合わなかった場合、元の家に戻ることもできるという点も大きいでしょう。
デメリットは、住み替えの為の資金を別に用意しなければいけない、固定資産税が掛かることなどです。
移住の注意点
都会から田舎へ移り住む場合
住み替えによって大きく環境を変える場合に必ず言えることですが、先ず「移り住む目的」をはっきりさせなければなりません。
リタイア後の田舎暮らしがブームになっているからと言って、安易な気持ちで始めるのは禁物です。
目的がはっきりしたら、次は住まい探しですが、物件選びより「地域選び」が田舎暮らしを成功させる最大のポイントとなります。
田舎に移って何をしたいかによって選ぶ地域が異なるので、ある程度地域を決めてから、その中で希望の物件を選ぶと失敗が少ないでしょう。
地域を決めた後、住まい選びに関しては次のポイントが挙げられます。
- 冬が寒い地域は冬に、夏が暑い地域は夏に見学する
- 厳しい季節の生活は、その地域の気候に慣れた地元の人より、都会から移り住んだ人の体験を聞いた方が確実
- 集落のあり方を見ると、その地域の居住特性が分かる
- 土地を買う場合は、地形的に農家があるような場所を選ぶのが無難
都会の人が田舎の土地を買う場合、遠隔地なので十分に調べられない場合が多いものです。
使い物にならない物件を売り付ける原野商法もあるので、土地を購入するなら、宅地建物取引業の資格を持つ業者を通して購入するのが安全です。
田舎に移り住む場合、もう一つ忘れてならないのは、田舎で始めようとしていることと、自分の年齢とのバランスです。
全てはリタイア後と決めていると、目的によっては遅すぎることもあります。
やりたいことと年齢とのバランスをよく考えておきましょう。
田舎から都会に移り住む場合
一般に田舎暮らしは不便な生活、都会暮らしは便利な生活と思いがちですが、ここには大きな落とし穴があります。
都会で暮らせば誰もが便利になるわけではなく、お金を使えば便利なのだということを忘れてはなりません。
また、都会は人間関係が希薄なので、気兼ねが要らないという思い込みも危険です。
隣を気にしない筈の都会の集合住宅で、近所同士のトラブルが多発していることを覚えておきましょう。
その他、起きやすい失敗例としては次のものがあります。
- 環境(言葉・水・空気・騒音など)が合わず、故郷の懐かしさも手伝って田舎に戻りたくなったが、土地を手放したので帰るところがない
- 田舎では年金で暮らせたが、都会に来たら物価が高く、貯えが減って将来への希望を失った
- 都会に住む子供に誘われて同居したが、離れて暮らす子供の方が良く思えてきて、子供の間を転々とし始める
- 人の数は多いが知人が少ないので孤独を感じ、人前に出るのをためらうようになる
このように、これまで田舎で暮らしてきた人が終の住み処に都会を選ぶ場合、メンタル面で挫折するケースが少なくありません。
それを避けるには、大人として付き合える仲間を見つけることが大切です。
住み替える前に、目指す地域に何度も足を運んでコミュニティに顔を出し、参加できる趣味の会などの目処を付けておくのも一つの方法でしょう。
建て替え・増築?リフォーム?
厚生労働省の調査によると、家庭内事故死は毎年1万人以上で、そのうち80%以上が65歳以上の高齢者です。
いくら元気に活動していても、若い時に比べて身体機能が低下しているため、ちょっとした段差でつまずいて転倒したり、脱衣室と浴室の温度差で血圧が急変動して倒れたりするなど、思わぬことで重傷事故に繋がるのです。
ですから、安全な老後を過ごす為には、自宅を改修して家庭内事故を起こりにくくしておくことが大切です。
建て替え
資金が許せば、安全な住まいを最も実現しやすいのは「建て替え」です。
老後の生活を貯蓄と年金でやり繰りせざるを得ない多くの人にとって、全面的な建て替えは余り現実的ではありません。
しかし、建物の基礎部分や柱の損傷の激しい家は、室内の手直し程度では済まず、建て替えが必要です。
建て替えでは、仮住まいを余儀なくされることを忘れてはいけません。
面倒な引っ越しや、仮住まいの家賃などの負担も加わります。
また、建て替えには現在の法基準で定められた建ぺい率や容積率が適用され、これまでより狭いものしか建てられないケースもあるので注意が必要です。
増築
それでは「増築」はどうでしょうか。
増築とは、平屋建てを2階建てにしたり、部屋を付け足したりすることです。
意外に思われるかもしれませんが、一般に家は増築を繰り返すほど住みにくくなってしまいます。
例えば、日当たりの良い南側に部屋を作ると、奥の部屋の日差しが遮られて暗く、風通しも悪くなることが珍しくありません。
こうなると奥の部屋は次第に使われなくなり、物置同然になってしまいます。
増築では、給排水管などが入り組むこともしばしばです。
長年の使用で汚水が詰まりやすく、床下への漏水トラブルから基礎部分や柱にダメージを与え、建物自体の寿命を縮める危険性があります。
リフォーム
その点、リフォームは建物本体の構造をいじらず、費用も建て替えに比べて一般的に割安になる点が大きな魅力です。
全面的なリフォームでも、新築の50~70%程度に抑えられることが殆どです。
実際に介護を必要とする人がいる場合と、高齢になっても安心して住める家にリフォームしたい場合とではポイントが異なります。
実際に介護を必要とする人がいて、その人の為のリフォームであれば、障害の表れる部位を見極めなければなりません。
例えば、片麻痺の場合、どちらの側が動かないかによって、手すりを付ける位置も変わります。
どんな家に住んでいるか、どんな障害があるかを考え合わせながら、ケースバイケースでリフォーム内容を決めていかなくてはなりません。
一方、高齢になっても安心して住める家にリフォームしたい場合は、危険を取り除き、家庭内事故を予防することが最大のポイントになります。
日本では家庭内事故で死ぬ人の数が、交通事故による死亡者数を上回っています。
しかも、65歳以上のお年寄りが家庭内事故による死亡者の4分の3近くになっているので、年を取ると僅かな危険でも放置できないことを理解しておきましょう。
段差の解消、手すりの設置、浴室の安全性確保、廊下や階段を滑りにくくする工夫は最低限必要です。
また、プランを作る際は、
- 自立を支援するリフォームであること
- 介護をしやすい環境を整えること
の二つを念頭に置いておくと良いでしょう。
マンションのリフォーム
分譲マンションは、「専有部分」と「共用部分」に分かれます。
リフォームできるのは「専有部分」のみで、共用部分を改修することはできません。
どこまでが専有部分でどこからが共用部分かは、法律で明確に定められているわけではなく、管理組合の規約を確認しなければなりません。
専有部分が壁の表面までである場合は、壁紙の交換ぐらいしかできませんが、壁の芯までであれば、ビスやボルトを打ち込んで本格的なリフォームができます。
一般的に共用部分に含まれるのは、玄関ドア、窓枠、ベランダ、外壁などです。
天井裏や床下の空間は専有部分なので、配管や配線を動かさなければ利用しても構いません。
こうした権利上の制約の他に、物理的な制約もあります。
電気のアンペアは、1棟全体の総量が決まっているので、多くの場合、自分の家の容量だけを増やすことはできません。
また、お湯の量を増やしたい場合、給湯器のパワーを上げることはできますが、給排水口の口径を広げることはできないので、思った効果が得られないことがあります。
リフォームの助成金・補助金制度
国土交通省では、住宅を長く大切に使う為のリフォームに対し補助金を支給する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」を実施しており、住宅の劣化対策や耐震性、省エネ対策を目的とし、更に、親との同居リフォームも考えている場合は、リフォーム費用の合計の3分の1、最大で300万円が補助されます。
また、介護保険では、自宅内の危険箇所を無くし、被保険者が安全に日常生活を送ることを目的として、「住宅改修費」が支給されます。
支給対象は、要支援1・2、又は要介護1~5の認定を受けた被保険者です。
住宅改修費の支給限度額は20万円で、利用者は改修費の1~3割(割合は利用者の所得による)を負担します。
但し、償還払いなので、施工業者への支払いを済ませた後、必要書類を揃えて申請を行い、支給額が被保険者の口座に振り込まれるという流れになります。
この制度は、介護の為のリフォーム総額が20万円以下でなければならないという意味ではありません。
50万円のリフォームを行っても20万円分の申請ができますし、10万円しかリフォームしなければ、次の機会に残り10万円分の申請ができます。
介護保険の被保険者は、一生のうちに20万円までは介護保険でリフォームができると考えて下さい。
他にも、住宅金融支援機構の「高齢者向け返済特例制度」は、60歳以上の人を対象に、最高1千万円(リフォーム工事額が上限)の融資が受けられる制度です。
リフォームする建物や土地を担保に、生きている間は月々利息のみを返済します。
全国の市区町村でも独自の基準で助成制度を設けていますので、それぞれ確認してみましょう。
リフォーム業者の選び方
リフォームの相談に乗ってくれる窓口は様々です。
主なところでは、
- リフォーム専門業者
- ハウスメーカー
- 大手建設会社
- 地元の工務店や大工さん
- 設計事務所
などがあります。
こうした中から選ぶ場合、大切なことはそれぞれの得意分野を知ることです。
過去に手掛けた事例の写真などを見せてもらい、どのようなリフォームが得意なのかをよく聞いてから決めましょう。
設計事務所や個人営業の建築家に頼むと割高になると思いがちですが、メリットもあります。
建築家は設計図の完成後、施主の代理人として工事の監督を行い、リフォームが終了してからもアフターケアの窓口になってくれます。
素人では分かりにくい見積もりや契約内容についても施主側に立って工務店とやり取りしてくれるので、スムーズに運ぶ分、お得な場合が少なくありません。
もう1つの選択肢として、新築の際に今のマンションを建てた建設会社に依頼する方法があります。
建物の強度や特徴を把握しているので、信頼できる業者が見つからない場合でも安心して頼めます。
業者が決まったら要望を伝え、プランと見積もりを提出してもらいます。
納得できれば本契約を結びますが、それまではお見合い状態なので、別な業者から相見積もりを取っても構いません。
高齢者向け住まい
高齢者向け住宅は、自立した生活が送れているか、それとも介護が必要かにより、住宅系・施設系の大きく2つに分かれます。
住宅系は、身の回りのことが自分でできる人に適しています。
要介護度が進んだ場合は、退去を求められることもあります。
高齢者向けのサービスはオプションとなります。
- シルバーピア … 低所得者向けの高齢者専門住宅。所得制限や年齢制限などがあり、審査が厳しい代わりに賃料は一般の賃貸住宅より安い
- サービス付き高齢者向け住宅 … 安否確認や生活相談サービスなどを提供する賃貸住宅。食事や介護は外部サービスを利用するのが一般的だが、医療・介護連携型もある
- 健康型有料老人ホーム … 食事などの生活支援サービスが付いた施設。介護が必要になると、原則退去しなければならない
- 住宅型有料老人ホーム … 原則として、食事などの生活支援サービスのみが受けられる老人ホーム。介護が必要になった場合は別契約で外部のサービスを利用
一方、施設系は、住居に生活支援サービスと介護サービスがセットとなっており、介護が必要な人向けとなります。
- 介護付き有料老人ホーム … 介護保険法に基づき、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設。介護サービスは24時間体制で施設スタッフが提供する
- ケアハウス … 自治体の補助などを受けた費用負担の少ない老人ホーム。元気なうちに入れる自立型、要介護で入る介護型がある
- 特別養護老人ホーム … 要介護の認定を受けた人が介護保険サービスの利用で入居できる公的施設。食事や排泄介助などの介護サービスを中心に提供する。要介護3以上が対象
- 認知症高齢者グループホーム … 認知症の人が少人数で共同生活を送る施設。介護スタッフが常駐しているが、医療ケア対応はない
- 老人保健施設 … 在宅生活と在宅復帰を支援する介護保険施設。リハビリテーションや医療、介護などを提供する。要介護1以上が対象
- 介護医療院 … 日常的な医学管理や、看取り・ターミナルケアなどの「医療機能」と「生活施設」としての機能を兼ね備えた施設
このように、施設によりサービス内容は異なりますので、見学に行って確かめるなどしてじっくり検討しましょう。
終の住み処として考えるのであれば、介護サービスと医療サービスが充実した施設を選ぶことをお勧めします。
リバースモーゲージ・ハウスリースバック
老後資金への心配の解決策として、「リバースモーゲージ」と「ハウスリースバック」というシステムがあります。
どちらも自宅に住み続けながら、老後の為の資金を調達する制度です。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージとは、自宅(土地)を担保として金融機関からお金を借り、死亡した後に自宅を売却して借りたお金を返済するというものです。
リバースモーゲージの対象は基本的に土地で、融資限度を担保評価額の50~70%以内に定める商品が多いようです。
老後資金に不安があって自宅を手放したくない高齢者が、住み慣れた家に暮らし続けながら収入を確保できるのがメリットです。
もちろん、受けた融資は自由に使うことができ、支払は利息分のみ、死亡するまでは返済する必要がありません。
また、契約者が亡くなっても、利用条件を満たせば、配偶者がそのまま契約を継続することができます。
但し、死亡時には自宅を売却するのが一般的なので、子供などに自宅を遺産として残せません。
自宅を遺産として残す必要がない場合は、活用する価値がある制度です。
利用するには子供など、相続を予定する人の同意が必要となります。
リバースモーゲージの利用を検討する際には、契約者の存命中に「担保割れ」が発生し、融資がストップしてしまう可能性があることも念頭に置いて下さい。
担保割れを招くのは、以下の三つのリスクです。
- 不動産価格下落 … 担保にしている不動産の評価額が予想より早く下落し、契約終了前に担保割れしてしまう
- 金利上昇 … 借入期間中に金利が予想以上に上昇し、利息を含めた借入残高が増えて担保割れしてしまう
- 長生き … 契約者が事前に想定していた融資期間よりも長生きして、存命中に担保割れしてしまう
担保割れが生じても契約者が死亡するまで自宅に住み続けることはできますが、生活資金が年金と預貯金のみに戻り、暮らしが困窮する可能性があります。
また、家を売るにせよ残すにせよ、契約者が亡くなった後に返済をするのは相続人ですから、こうした事態が起こり得ることを事前にきちんと話しておかないと、「こんな筈じゃなかった」という声が必ず聞こえてきます。
本当に家は相続しなくて良いのか、連帯保証人が必要な場合は誰がなるのか、万が一、担保割れを起こした場合はどうするのか、相続人を含めた親族ときちんと話し合っておきましょう。
ハウスリースバック
ハウスリースバックとは、専門の不動産会社へ自宅を売却し、買主へ家賃(リース料)を支払うことで、そのまま住み続けることができる制度です。
リバースモーゲージと違って契約時点で自宅を売却するため、代金を一括で受け取ることができます。子供の教育費や治療費など、まとまった現金が必要な時に利用できます。
買主を探す必要がないので、比較的早く現金を受け取れます。
自宅は売却するので、固定資産税が掛からないのもメリットです。
また、買い戻すこともできます。
注意点としては、普通に売却するよりも価格が低めとなり、また、売却してから住み続ける為に支払う家賃は、世間相場よりも高めに設定されます。
まとめ
住まいを選ぶ時は、その条件を自分自身や家族で整理することが重要です。
- 現在の家をリフォームするか
- 住み替えをするか
- 一戸建てか
- マンションか
- 新築か
- 中古か
- 購入か
- 賃貸か
- 都市部か
- 郊外か
- 子供と同居か
- 子供と近居か
- 2世帯住宅か
など、考えることは多くあります。
よく「老後を考えるなら、持ち家の方が安心」と言われます。
理由として挙げられるのは住居費の問題です。
定年までに住宅ローンを完済すれば、月々の住居費はさほど掛かりません。
一方、賃貸で暮らし続ける場合は年金暮らしになっても家賃負担が続きます。
固定資産税やローン金利などを考慮しても、完済時には月々の生活費を減らせると考えると、持ち家の方が安心できる面は多そうです。
尤も持ち家だからといって、老後の安心が保障されるわけではありません。住宅ローンを定年後に持ち越すと当然ながら生活は苦しくなります。
また、長く住んでいると、屋根や外壁などのメンテナンス、水回りのリフォームなども必要です。
さらに、老後の生活や介護を視野に入れるのであれば、どこかのタイミングでバリアフリー化などのリフォームを行う必要も出てくるでしょう。
それらの費用も、計画的に準備しておかなければなりません。
老後も現在の自宅に住み続けるかどうかも重要な選択の一つです。
そろそろ子供が独立して、マイホームが必要以上に広くなりそうな人、20~30代前半でマイホームを買った為に老朽化が進んでいる人などは、余力のある50代のうちに住み替えを検討してみるのも良いかもしれません。
その場合、マイホームを売却したり、人に貸すことで住み替え資金を確保するのも一案。
賃貸暮らしだった場合は、退職金の一部を住宅購入資金に充て、夫婦二人で暮らせる手頃な価格帯の持ち家を購入するという選択肢もあります。
さらに、持ち家があっても収入が少ない場合には自宅を担保に生活資金を借り入れ、死亡した時に自宅を処分して返済する「リバースモーゲージ」も視野に入ってくるでしょう。
定年を迎えるのを切っ掛けに田舎や海外に家を購入しようと考えている人は、綿密な下調べを心掛けて。
夫婦でよく話し合い、お試し期間を設けるなどの慎重さが必要不可欠です。
持ち家と賃貸、一長一短。住み替えは、総合的に考えて決断を。
体が弱ってきた時に、誰に暮らしをサポートしてもらうかという問題は、どんな人にとっても他人事ではありません。
子供や孫の助けが期待できない場合、介護施設への住み替えも視野に入れる必要が。
様々な種類がありますが、自分がいつ、どんな状況で入居したいかによって、選び方は変わってきます。
終の住み処は予算・サービス内容を比較して早めに検討しましょう。元気なうちに情報収集をスタートさせることが大切です。
気になる施設には、実際に足を運んで見学してみるのもお勧めです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。