遺産分割協議がまとまらない…
調停で決まらないとどうなるの?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 遺産分割の形態と方法
- 遺産分割調停とその流れ
- 遺産分割調停と審判の違い
遺産分割の形態と方法
相続人が確定し、財産調査も終わったら、遺産の分け方を決めなくてはなりません。
これを「遺産分割」といい、遺産分割についての話し合いを「遺産分割協議」といいます。
もし相続人が一人なら、遺産の全部を引き継げば良いので話は簡単です。
しかし、現実には複数の相続人が存在するケースが大多数。
そこで問題になるのが、遺産をどう分けるか、すなわち「遺産分割の方法」です。
誰がどの財産をどのように引き継ぐかは、相続人全員の話し合いで決めることになっています(遺産分割協議)。
遺言があり、そこに遺産の分割方法が指定されている場合には、遺産分割協議は不要です。
しかし、「甲に2分の1、乙に2分の1」と言うように「相続割合の指定」のみの場合や、「一部の財産」についてのみ指定している場合は、遺産分割協議が必要です。
これらの場合、誰が何を相続するかまでは決められていないからです。
また、全ての財産について詳細な指定がある遺言でも「相続人全員の合意」があれば、遺言と異なる遺産分割が可能です。
但し、遺言執行者の承諾は必要です。
相続分の取り決め方
2人以上の相続人がいる場合、財産を分ける必要があります。
多くの場合、次の4つの方法で分割されます。
- 指定分割 … 遺言の指定通りに分ける。相続分の指定が法定相続分と異なっていても、遺言の内容が優先される。但し、相続人全員の合意があれば、遺言の指定とは別の分割も可能
- 協議分割 … 遺言による指定がなく、相続人全員による「遺産分割協議」を行なって、法定相続分を目安とし、特別受益や寄与分などを考慮して決めていく
- 調停分割 … 分割協議は相続人の1人でも欠けると成立しないため、参加を拒否する相続人が居たり、話し合いがまとまらなかったりする場合に家庭裁判所へ「遺産分割の調停」を申し立てる
- 審判分割 … 調停でも上手くいかない場合は、自動的に「審判」に移行する。審判では、財産の種類や相続人の年齢、生活状況などを踏まえて、最終的に家事審判官が分割方法の決定を下す
遺産の分割方法
遺産の具体的な分割方法には、主に次の4つがあります。
これらの方法を上手く使い分けて、遺産を分割することになります。
- 現物分割 … 土地は配偶者、預金は長男というように、財産をそのままの形で分ける方法
- 換価分割 … 財産を売却し、金銭に換えてから分ける方法
- 代償分割 … 相続人Aが現物を相続する代償として、他の相続人に相続分の差額を代償金として支払う方法
- 共有分割 … 1つの財産を複数の相続人で持ち合う方法
遺産分割調停
遺産分割を行う場合、先ずは相続人全員による話し合い、つまり「遺産分割協議」を行うのが原則です。
相続人間の協議だけで話がまとまれば良いですが、協議を重ねても話がまとまらないこともあります。
また、相続人同士の対立があり協議の場に加わらない人が居ることもあります。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なので、話がまとまらない場合はもちろん、協議に加わらない人が1人でも居る場合にも不成立となります。
遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てを行います。
申し立てが済むと呼出状が全ての相続人に届きます。
指定日には、申立人と相手方がそれぞれ部屋で待機し、順番に調停委員の居る部屋に呼び出されます。
相続人同士が顔を合わせずに進められるので、感情的な対立を避けられるのがメリットと言えます。
調停手続きでは、家事審判官1人と調停委員2人で構成される調停委員会が各相続人の意見を聞いて事情を把握し、各相続人がそれぞれどのような分割方法を希望しているのかの意向を確認してくれます。
その上で、解決案を提示したり、解決の為に必要な助言をしてくれ、相続人全員の合意が得られるように話し合いを進めてくれます。
相続人全員が、裁判所に一堂に会して話し合うのではなく、申立人側と相手方側の各々の事情や経緯、希望を聞いてから、お互いが合意できそうな調停案を提示します。
但し、調停はあくまで、裁判所を介した話し合い(協議)の場で、調停委員の調停案には強制力はありません。互いに譲歩ができなければ、調停は不成立に終わります。
尚、申し立ては相続人のうちの1人又は複数が、申立人以外の全ての相続人を相手方として行います。
例えば、相続人がABCDの4人であった場合に、相続人AがBCのみに対して申し立てを行うことはできません。
話し合いが成立すると、その合意内容を記した「調停調書」が作成されます。
調停調書には「確定判決」と同じ効力があり、これに基づいて遺産の分割を行うことになります。
- 調停申し立ての手続き -
- 申立人 … 共同相続人・包括受遺者・遺言執行者など
- 申立先 … 相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所、又は当事者が合意で定める家庭裁判所
- 必要書類 … 申立書(当事者等目録・遺産目録・相続関係図)、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本等)、被相続人の住民票の除票、相続人全員の現在の戸籍謄本、相続人全員の住民票、登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書など
- 申立費用 … 収入印紙1,200円+郵便切手代(予納郵券)
家庭裁判所では、調停がどのようなものか、どんな手続きが必要かなどを説明する「無料調停相談会」が行われているので、利用してみるのも一案です。
遺産分割審判
調停による話し合いでも話がまとまらず、調停が成立になった場合には、家庭裁判所の「審判」で結論を出すことになります。
調停不成立となった場合には当然に審判手続きに移行するので、改めて家庭裁判所に審判申立書を提出する必要はありません。
審判では調停のように相続人間での話し合いは行われず、家事審判官が各相続人の事情や意見を確認した上で、公平に分割方法についての審判を下します。
家庭裁判所によって下された審判には「強制力」があるので、合意できない相続人がいる場合でもこの決定に従わなければなりません。
審判が確定したら、「審判書」と「確定証明」を以て、各種相続手続きを行うことができるようになります。
但し、審判に不服がある場合には「即時抗告」をすることができ、高等裁判所で審理をしてもらうことができます。
尚、即時抗告は、審判の告知を受けた日の翌日から「2週間以内」に行わなければなりません。
2週間の期限を過ぎ、抗告の手続きもしていないのに、審判内容に反した行動をとった場合には、強制執行で財産を取り上げられることもあります。
どうしても不服だという場合には、期限を忘れず、手続きを行いましょう。
遺産分割調停と審判の違い
調停
- 決定は相続人全員の合意が前提
- 第三者として、複数人の調停委員が関わる
- 調停委員を間に置き、各相続人が希望や立場について主張する
- 合意の為の話し合いなので、分割法は相続人の希望次第
基本的に「相続人全員の合意」を得る為に行われるもの。当事者同士の話し合いを、間に専門家を置くことで冷静に、客観的視点を持って進めることが目的です。
審判
- いきなり審判を求めることも可能だが、殆どの場合、先に調停に回される
- 審判中に合意を得られない限り、法定相続分による分割が行われる
- 裁判の場合と同様、判断は裁判官(審判官)が行う
- 分割方法も審判によるので、不動産などを売却しなければいけない可能性も
- 裁判所による命令の扱いなので、調査などの手続きもより厳密
調停でもまとまらなかった時に行われます。合意の有無に関わらず、とにかく客観的に正しい、平等だと思われる形での遺産分割の成立を目指します。
まとめ
相続人間の協議が調わない場合は「家庭裁判所を介した手続きを利用することができる」ことは説明した通りです。
相続人は家庭裁判所に対して、審判・調停いずれの申し立ても行うことができます。
但し、本来遺産分割は相続人の自由な協議による解決が期待されているため、先ずは調停手続きによることが望ましいとされています。
先に審判が申し立てられた場合でも、裁判官の職権で、先ずは調停をした方が良いとの判断がなされれば、調停から始まることになります。
もし調停が上手くいかなければ、続いて同じ家庭裁判所でそのまま審判へと移行することになります。
家事審判にまで進んでしまった場合、それ相応の時間とお金が掛かります。
また、その紛争について法的には解決できたとしても、本当に相続人全員が納得できるかは全くの別問題。
結果に納得できない相続人が出てくる可能性は高く、親族内の不和の原因にもなりかねないため、あくまでこの方法は「最終手段」と考えて下さい。
人はそれぞれ価値観や考え方が違うことがあり、それは血を分けた家族であっても同様です。
遺産分割協議は人と人が行うもの。
「法律に従ってきっちり財産を分けよう」と頑なになるより、「完璧な平等はあり得ない」と相続人全員が知った上で、相続人それぞれの実情に合わせて柔軟に話し合って決めることが大切です。
その上で、相続人だけで協議を進めようとしている人でも、「プロに一任する」ことを視野に入れておくのが良いでしょう。
第三者の専門家を挟むことによって、互いの意見を取り交わしやすくなる他、後々の紛争防止の意味合いでもその効果は大きいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。