もらえる年金を増やせるって本当?
年金額を増やす方法は?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 公的年金額を増やす方法
- 国民年金の任意加入
- 付加年金加入
- 繰り下げ受給
- 加給年金資格
- 国民年金基金の加入
はじめに
自分の年金見込み額を確認した人の中には、その少なさに驚いたり、不安を覚えたりする人もいるでしょう。
年金の見込み額が期待より少なくても諦める必要はありません。今からでも公的年金を増やす方法はあります。
増やせる金額がほんの僅かであるケースもありますが、公的年金は生涯にわたって受け取れる終身年金です。
少しでも受給額を増やし、積み上げていけば定年後の家計は少しでも楽になる筈です。
ゆとりある老後を迎えるには早めの準備が大切です。
将来もらえる年金を増やせるよう、様々な制度が用意されています。
それぞれの特徴を掴み、賢く活用していきましょう。
国民年金の任意加入
後納制度
先ず押さえておきたいのは、年金の受給額が納めた額と比例しているということです。
納めた期間が長いほど、納付額が増え、受給額も増えますし、厚生年金の場合は、月々の給料から引かれる保険料が多いほど受給額が増えます。
そのため、過去に国民年金の保険料を納付していない分があれば、その分を納めることで受け取る年金が増える可能性があります。
これを年金保険料の後納制度と言います。
国民年金は20歳から60歳まで、厚生年金は適用事業所で働き始めてから離職するまで(最長70歳まで)、それぞれ制度に加入して保険料を支払います。
厚生年金は勤務先が手続きを行い、給料天引きで支払われるので、払い忘れは殆どありませんが、国民年金は場合によって自分で手続きが必要なため、未納期間があるケースがよく見られます。
未納期間があると、満額の保険料を支払った場合より、老後に受け取れる年金が少なくなります。
例えば、2年間の未納で、老後の年金額は年約4万円減に。
65歳から90歳まで受け取ったとすると、約100万円も減ります。
未納期間の保険料は後から納めることができますが、遡れるのは2年前まで。
それを過ぎると納められません。
先ずは誕生日の月に送られてくる「ねんきん定期便」などで、過去の納付状況を確認すると良いでしょう。
追納制度
一方、経済的に余裕がなく、保険料の「免除」や「納付猶予」などを受けた場合も、受け取る年金額は減少します。
補う為に「追納制度」がありますが、未納期間から10年以内が期限。
それを過ぎると、やはり納めることができなくなります。
ただ、追納期限を過ぎてしまっても、諦めるのは早計。60歳以降、国民年金に「任意加入」すれば、保険料を追加で納めることができます。
具体的には、保険料の未納や免除などの期間があって、①満額の年金がもらえない人は65歳まで、②年金の受給資格期間(10年)を満たしていない人は満たすまで(最長70歳まで)、任意加入が可能です。
次のような人は、要チェックです。
- 学生時代に「学生納付特例制度」を使って保険料を猶予され、その後、支払っていない
- 経済的に苦しい時期があり、保険料を未納、又は免除された
- 転職や失業などで無職の期間があり、その間、保険料を支払っていない
- 第3号被保険者で、会社員などの配偶者(第2号被保険者)が退職・死亡したり、離婚して、第3号被保険者の資格を失ったのに、第1号被保険者の手続きをしていない
心当たりがある人は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で加入期間を確認して、期限内なら追納、期限を過ぎていたら60歳以降の任意加入を検討しましょう。手続きは、最寄りの年金事務所、又は市区町村役場で。
但し、60歳以降厚生年金に加入して働く場合は、国民年金の任意加入はできません。
厚生年金で年金額を増やすことになります。
厚生年金に加入して働き続ける
法改正によって、65歳から70歳まで働く機会を確保することが企業側の努力義務となり、年齢に関係なく働けるチャンスが広がっています。
定年後の備えを考えるなら、厚生年金がもらえる働き方を選ぶことも大切です。
国民年金(老齢基礎年金)の場合、年金保険料を40年間分全額納め、65歳から満額もらえたとしても年間79万5,000円(2023年度)。
1か月当たりに換算すると約66,000円ですから、国民年金だけで老後の生活費一切を賄うのは難しいのが実情です。
一方、厚生年金(老齢厚生年金)の場合、2020年度の平均受給月額は男性が約16万5,000円、女性は約10万3,000円です(いずれも国民年金分を含む)。
厚生年金の受給額は「保険料の納付月数と収入」によって決まるため、収入が高いほど受給額も増えます。
知っておきたいのは「厚生年金は1か月以上保険料を支払うと将来の年金に加算される」という点です。厚生年金がもらえる働き方をすれば、たとえ数か月で離職したとしても、その分、もらえる年金は増えるのです。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が2か月以上見込まれること
- 賃金の月額が8万8,000円以上であること
- 学生でないこと
- 従業員数101人以上(令和6年10月~51人以上)の企業に勤務していること
厚生年金に加入すると保険料の負担は増えますが、保険料の半額は会社が負担してくれ、将来もらえる年金が増えます。
また、障害がある状態になった場合には障害基礎年金に加えて、障害厚生年金を受け取れるという利点も。
自分自身が転職先や再就職先を探す時はもちろん、配偶者のパート勤務や転職といった時も同様に厚生年金に加入できる条件をチェックしましょう。
国民年金は任意加入で、厚生年金は働くことで、それぞれ加入期間を延長することができます。
厚生年金に加入できる上限である70歳まで加入すれば、将来もらえる受給額は最大になるわけです。
受給開始時期を70歳まで繰り下げると年金は更に増えます。
また、厚生年金加入期間が短く、加給年金をもらう資格がなかった人も、70歳まで加入して加入期間が20年以上となったとき、65歳未満の配偶者がいれば、加給年金をもらうことができます。
加給年金の資格を得る
加給年金を受けるには、「厚生年金に20年以上加入」という条件があるので、あと数年で満たせるという場合は定年後も再就職して加入期間を延ばすのがお勧めです。
但し、妻は逆に厚生年金の加入年数が20年未満であることが要件です。
加給年金は、厚生年金に20年以上の加入歴があり、配偶者や子供を養っている人の老齢厚生年金に加算される年金です。
結婚前や出産前まで会社勤めをしていた妻が、子育てが一段落してから再就職して定年まで勤め上げるとちょうど20年くらいの加入になるケースが多いようです。
加入年数が延びれば妻自身の老齢厚生年金はアップするので必ずしも損ばかりではありませんが、加給年金は年額で約40万円と額が大きいため、妻が年下で年齢差が大きい場合など、加給年金を受給できる期間が長いケースではこちらを優先する方が家計にプラスに働きます。
例えば、夫が65歳の時、妻が45歳で20歳の年の差がある場合は、妻が65歳になるまでの20年間で800万円弱の加給年金がもらえます。
さらに、加給年金は、働きながら受給しても年金カットの対象にならないのもメリットです。
この場合、厚生年金の加入を19年11か月で退職したり、厚生年金に加入しないパートに切り替えたりする対策が効果的です。
但し、夫婦の年齢差がない場合や、妻が年上でそもそも加給年金を受け取れないという場合は、夫婦ともに厚生年金の加入年数を延ばして、将来受け取る年金額を増やす方が有利です。
夫婦の年齢差が少ない場合は、他の経済事情も鑑みて慎重に選ぶ必要があるでしょう。
受給開始を繰り下げる
受け取り方を変えることによっても受給額を増やすことができます。
公的年金の受給開始は、原則65歳からですが、希望することで、受給開始を「繰り上げ」「繰り下げ」することができます。
繰り上げの場合は、最大60か月(5年)、60歳まで繰り上げることができますが、1か月当たり0.4%ずつ年金が減額されてしまいます。
繰り下げの場合は、最大120か月(10年)、75歳まで繰り下げることができ、1か月当たり0.7%ずつ年金額が増額されます。
会社員の場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の二つを受け取ることができるので、どちらかのみを繰り下げることもできます。
年金の受け取りを10年遅らせると、84%も年金額が増えるというのはかなり魅力的な話です。
資産運用でもリスクなしでここまで増やせる方法は先ずないので、当面は貯蓄で凌げるという人にとっては非常に有利な制度と言えます。
但し、当然ながら長生きしないと繰り下げのメリットは享受できないので、慎重に検討しましょう。
また、繰り下げ受給を選んだ場合、繰り下げ待機期間中は「加給年金」を受け取ることができません。
加給年金の受給資格がある場合は、加給年金の額も含めた損得を考える必要があります。
自営業なら付加年金を活用する
自営業やフリーランスで国民年金基金やiDeCoなどの掛け金を捻出するのが難しい人は、付加年金制度を活用して年金を増やす方法を検討してみましょう。
国民年金保険料に加えて月々僅か400円の保険料を納めるだけで、将来の老齢基礎年金にプラスαの付加年金額が上乗せされます。
付加年金は、「200円×納付月数」分の金額が毎年の年金に加算されます。
例えば、付加保険料を480か月支払っていれば、9万6,000円が毎年加算されることになります。
この場合、支払う保険料は19万2,000円ですから、2年間で元が取れる計算になります。
3年目からは、投資した金額がプラスに転じます。
付加年金は、老齢基礎年金とセットで支給されるため、老齢基礎年金を繰り下げると付加年金も一緒に繰り下げになります。
そして、老齢基礎年金と同じ増額率で付加年金も増えるのです。
年金が国民年金だけという人にお勧めです。
もらえる額は少額ですが、ゼロよりはマシです。月額400円と経済的な負担もそれほど重くないので、将来の年金額が少なくて不安な自営業者の人は加入しておくと良いでしょう。
自営業なら国民年金基金の加入を検討
国民年金基金は、1991年に始まった制度で、国民年金とセットで自営業などの第1号被保険者の老後の収入を支える役割を担っています。
国民年金基金は、国民年金と厚生年金の格差を解消する為に任意で加入できるものです。
1口目の給付の種類は65歳から一生涯もらえる「終身年金」が2種類あり、年金受給前・保証期間中(80歳まで)に亡くなった場合、遺族に一時金が支給される保証がある「終身年金A型」か、保証がない「終身年金B型」のいずれかを選択します。
2口目以降は終身年金2種類に加えて、60歳又は65歳から一定期間もらえる「確定年金」5種類からも選べます。
給付のタイプは終身年金2種類と5~15年の給付期間が決まった確定年金5種類の計7種類あり、1口目に必ず終身年金を選択して、2口目以降7種の中から自由にタイプを組み合わせます。
但し、確定年金の掛け金の合計額は終身年金の合計額を超えないことが条件となっています。
確定年金はいずれも、年金受給前・保証期間中に亡くなった場合、遺族に一時金が支給されます。
国民年金基金はiDeCoと併用することもでき、掛け金の上限額は両方合わせて月々6万8,000円、年間では81万6,000円となります。
これらが全額、所得控除の対象となり、掛け金を支払っている間は所得税や住民税が軽減されます。
前述の付加年金とは併用できません。
尚、国民年金基金はいったん加入すると途中で任意に脱退や退会ができません。
まとめ
貯蓄はいつか底を突くのに対し、公的年金は生涯支給されるので長生きのリスクに強く、一番頼れる存在です。
これらの対策で増やせる額が僅かであっても、それが何十年も続けば定年後の家計に及ぼす効果は決して小さくありません。
増やせる可能性があれば検討する価値は大きいでしょう。
国民年金の任意加入
- 対象となる人 … 老齢基礎年金が満額に達しない人
- 増やせる年金額 … 納付1か月当たり年額約1,600円
老齢基礎年金は最低120か月(10年)の加入期間がないと支給されません。
65歳で加入期間が足りない人は70歳まで任意加入できます。
60歳以降も加入を続け、保険料を支払うことで、65歳以降の老齢基礎年金を増やすことができます。
加入期間が40年に達した時点で終わります。
後納・追納
- 対象となる人 … 10年以内に国民年金保険料の未納期間がある人など
- 増やせる年金額 … 納付1か月当たり年額約1,600円
未納していた過去2年分と、過去10年以内の免除期間の保険料は後から納められます。
国民年金は、満額で約78万円です。
しかし、未納があると、1か月分の未納につき約1,600円、1年分で約2万円年金が減ります。
それを防ぐ方法として、未納分を遡って納めるのが後納です。
退職後も厚生年金に加入
- 対象となる人 … 定年退職後に継続雇用、再雇用、再就職で働く人、会社経営をする人
- 増やせる年金額 … 給与や加入期間により異なる
国民年金は原則、60歳未満までしか加入できませんが、厚生年金は70歳まで加入できます。
60歳以降も引き続き厚生年金に加入することで、65歳以降に受け取る老齢厚生年金を増やすことができます。
但し、働いている間は保険料負担があります。
加給年金の資格を得る
- 対象となる人 … 厚生年金の加入年数が20年に少し足りない夫
- 増やせる年金額 … 年額約40万円
約40万円の家族手当である加給年金を受給するには夫が20年以上厚生年金に加入している必要があるため、少し足りない場合は定年後も何とか再就職するなどして20年に達するようにします。
- 対象となる人 … 厚生年金の加入年数が20年に達しそうな妻
- 増やせる年金額 … 年額約40万円
夫が加給年金の要件を満たしても、妻の厚生年金加入年数が20年以上あると支給停止になるので、19年11か月での退職を検討。
但し、振替加算が付かない1966年4月2日以降生まれの妻の場合は、20年以上加入した方が将来受け取る年金額は高くなります。
また、妻が年上で加給年金を受けられないというケースなどでも加入年数を延ばす方が有利です。
繰り下げ受給
- 対象となる人 … 年金を受給できる全ての人
- 増やせる年金額 … 繰り下げ1か月当たり0.7%
老齢基礎年金の支給開始は原則として65歳からですが、受け取り開始を遅らせる代わりに、支給額を増やせる制度です。
66歳から75歳まで最大10年間、1か月単位で繰り下げができ、1か月当たり0.7%増額されます。
10年間繰り下げて75歳から年金を受け取る場合は、84%も増額された年金が生涯支給されます。
老齢基礎年金を満額78万円受給できると仮定し、10年間繰り下げると、もらえる年金額は143万5,200円まで増えます。
但し、当然ながら長生きしなければ繰り下げのメリットは享受できません。
また、繰り下げ待機中に亡くなった場合は、65歳から亡くなるまでの期間分の年金が未支給年金として遺族に支給されます。
付加年金加入
- 対象となる人 … 第1号被保険者、国民年金の任意加入者
- 増やせる年金額 … 納付1か月当たり200円
国民年金に月額400円の付加保険料をプラスして支払うことで、65歳から受け取る老齢基礎年金に付加年金が加算されます。
将来もらえる付加年金(年額)は「200円×付加年金保険料の納付月数」のため、支払期間の長短に関わらず、2年間受け取れば納めた保険料の元が取れる計算になります。
付加年金は老齢基礎年金と違って物価変動による増減はなく、年金を受け取る限り永続的にもらえる終身年金です。
また、年金を繰り下げ受給すれば、付加年金の加算分も同様に増額されます。
年金記録の再確認
- 対象となる人 … 全ての人
- 増やせる年金額 … 新たに見つかった年金記録により異なる
自分の年金記録に漏れや誤りがないか確認し、心当たりがあれば日本年金機構に申し出ましょう。
特に転職が多かった人や姓が変わった人、名前の読み方が間違われやすい人はしっかり確認しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。