子供がいないので老後が心配…
今からできることは何?
こんな疑問・悩みを解決します!
- おひとりさまやその予備軍が将来直面する可能性の高いリスク
- おひとりさまのリスクに対して備えが必要な人
- おひとりさまが準備しておくと良い各種の契約
- おひとりさまが注意すべき点
おひとりさまリスク
今は「おひとりさま」(独居)でない人も配偶者の死亡や子供の転勤などによって、おひとりさまになる可能性があります。
特に子供がいない場合は確実にそうなります。
おひとりさまと言っても、頼れる親族がいない人のみを指すわけではなく、甥や姪などに頼れる人もいます。
中には事情があって、親族はいるけれど頼れない、頼りたくないという人もいます。
頼れる親族がいない、又は、親族はいるけれど頼れる状態ではないなどのおひとりさまは、将来体が不自由になったり判断力が低下したり、亡くなった時のこと、例えば、病院死亡時などの遺体の引き取り、葬儀、納骨、部屋の片付け、役所の手続き、各種費用の精算など、「自分自身ではできないことをどうするのか」考えておかなければなりません。
また、親族が近くにいないため、全てを頼れない場合には、「自分が困る部分をどうするのか」考えておく必要があります。
例えば、死後のことは親族に行なってもらえるけれど、生きている時の困り事に関する支援は望めないなどです。
おひとりさまになるリスクが高い人は、特別な備えが必要になります。特別な備えとは、おひとりさまやその予備軍が将来直面する可能性の高いリスクに対して準備すべき終活です。
おひとりさまリスクには、主に以下の四つがあります。
介護状態になったり、入院したりしたとき
各種事務手続きや財産管理などをしてくれる人がいないので、例えば、銀行に行って貯金を下ろしたり、入院手続きや行政手続きなどを行なったりすることが難しくなります。
認知症になってしまったとき
おひとりさまが認知症になると、悪質商法の被害に遭ったり、買い物依存症になったり、自宅がゴミ屋敷になったりするリスクがあります。
おひとりさまの場合は認知症が進行しても成年後見制度の利用がなかなか進まないので、発見された時には認知症が進行し、財産を失っているケースが少なくありません。
終末期医療を受ける状態になったとき
本人の意思確認ができなくなると、尊厳死を希望していても延命治療を受けてしまうことになります。
死亡してしまったとき
葬儀や納骨、遺品整理、死後の行政手続きなどを誰も行なってくれません。
また、相続財産が付き合いのない相続人、渡したくない相続人に渡ってしまいます。
相続人がいない場合は国庫に渡ってしまいます。
特別な備えが必要な人
ひとり老後は独身の人に限ったことではなく、夫婦ふたりで暮らしている人でも配偶者の死亡などによって突然やって来ます。
特に女性は、男性よりも平均寿命が長い分、ひとり老後になるリスクが高いと言えるでしょう。
一人でいる時に突然倒れたり、入院したりするようなことになったら…
親や兄弟が亡くなり、最後に自分一人残されたら、どうすれば良いの…
- 特別な備えが必要な人 -
- おひとりさま・身寄りのない人 … 配偶者・子・兄弟姉妹・甥姪などの親族が誰もいない場合
- 親族と疎遠の人 … 子がいても長い間会っていなかったり、兄弟姉妹や甥姪などがいてもあまり付き合いのない場合
- 親族が高齢者のみの人 … 親族が同年代の配偶者や兄弟姉妹のみの場合
- 親族・周囲の人に迷惑を掛けたくない人 … 体が不自由になったり、認知症になったり、死亡したりした時に、親族に負担を掛けたくない場合
- 自分のことは自分で決めたい人 … 葬儀や納骨の方法、相続に関することなどを、親族に任せるのではなく、自分で決めておきたい場合
おひとりさまリスクに備える各種契約
おひとりさまが準備しておくと良いものとして、次の6種類の契約があります。
- 見守り契約 … 定期的に電話連絡や自宅訪問で安否や生活状況を確認する契約
- 任意代理契約 … 生活に関する事務手続きを第三者に代行してもらう契約
- 任意後見契約 … 将来、判断能力が不十分になった場合に備え、後見人を事前に決めておく契約
- 死後事務委任契約 … 役所への届け出、葬儀社の手配、納骨手続き、電気・水道・ガスの停止、部屋の片付け、遺品整理などの事務手続きを第三者に委任する契約
- 公正証書遺言 … 相続に関すること・財産の処分に関すること・身分に関することについて法的拘束力を有する文書
- 尊厳死宣言書 … 回復の見込みがない重篤な疾病になった場合に、積極的な延命治療を行うかどうか、意思表示をする為に作成する文書
以上の6点セットは、全て公正証書で作成することができます。
自分が心身ともに元気なうちに高齢者終活支援を専門とする法律家などと6点セットを契約しておけば、おひとりさまになっても安心・安全な老後を送ることができます。
見守り契約
定期的な見守りを受け、生活上の相談などができます。
任意代理契約(財産管理等委任契約)
体が不自由になったりして、自ら財産管理や事務手続きなどができなくなった場合に代理で行なってもらうことができます。
任意後見契約
判断力が低下した時の財産管理や契約類の手続きを行なってもらいます。
死後事務委任契約
生前に自分が希望する死後のこと、葬儀・納骨方法、連絡先などをエンディングノートなどに書き、それを実行してもらう第三者と契約を結びます。
受任者は委任者の死後、委任者の希望を実現していきます。
公正証書遺言(遺言執行)
遺産をどう分配するかを決めて遺言書に記しておきます。
同時に遺言執行者を指定し、遺言内容を実現してもらいます。
尊厳死宣言書
事前に延命治療を拒否して尊厳死を望む宣言書を作成し、第三者に託しておきます。
契約発効と発生費用
リスクに備える特別な終活(契約)は次の六つです。
①見守り契約
②任意代理契約
③任意後見契約
④死後事務委任契約
⑤公正証書遺言
⑥尊厳死宣言書
必ずこの6種類が必要なわけではなく、ケースによっては無くて良い契約もあります。
例えば、前述のように死後のことは親族が行なってくれるのなら、④の死後事務委任契約は不要、施設に入所しているのなら、①の見守り契約は不要など、状況によって不要になる契約があるからです。
施設に入所していても、施設から②や③の契約をするよう求められる場合もあります。
どのケースにしても、⑤の公正証書遺言は必要です。
相続人がいたら、相続人全員で遺産の分け方を決めるのは大変ですし、もし相続人の中に認知症の人がいたら手続きはもっと大変になります。
支援してくれる人に遺産を渡したい、どこかの団体に寄付したいなどの希望があるのなら、遺言書の作成は必須です。
契約発効
契約を結んだからといって、費用が直ちに発生するわけではありません。
ここでは分かりやすいように、身寄りのないおひとりさま(A)が専門家(B)に依頼する場合で説明します。
Aが、上記にあるような①見守り契約~⑤公正証書遺言をBに依頼し、無事に公証役場で公正証書にしたとします。
この時に掛かる費用は、契約書作成を行なった専門家への報酬と公証役場への手数料です。
そしてその後、契約が発効(スタート)したら、Bへの月額報酬が掛かります。
①の見守り契約と②の任意代理契約は、たいていは本人の書面等による意思表示があった時から契約が発効するように作られています。
そのため、①と②の契約は、意思表示をしない限り月額報酬は掛かりません。
③の任意後見契約は、本人の判断能力が低下したとき、Bの判断で家庭裁判所に申し立てをして、Bが任意後見人になり支援するため、Aの意思表示で発効するものではありません。
仮に、①の見守りをBに依頼していたけれど、財産管理も行なって欲しいと思い、②の任意代理契約を発効させた場合は、①の契約は終了し、②の契約が発効します。
そして、Aの判断力が低下した時には、③の契約へ移行され、②の契約は終了になります。
その後、Aが亡くなったら、③の契約は終了し、④の死後事務委任契約が実行され、⑤の公正証書遺言が執行されます。
①の見守り契約から順に発効するわけではなく、②の任意代理契約から発効する人もいますし、結果的に生前の契約を使わずに亡くなり、④と⑤のみの人もいます。
これらの契約は、知人・友人・甥・姪などと結ぶこともできますし、専門家とも結べます。
発生費用
契約に掛かる費用は、専門家や団体などによって報酬の設定が異なるため、どのくらいが平均額なのか一概には言えません。
セットでの依頼や専門家等受任なら割り引かれたり、基本料金+追加料金の設定にしていたりと、様々あるからです。
③の任意後見契約は、家庭裁判所に申し立てをする為の準備や手続きが必要なので、その費用が別途掛かります。
また、必ず任意後見監督人が選ばれるため、任意後見監督人への報酬も必要です。
④の死後事務委任契約は、医療費の精算や葬儀など直ぐに発生する費用に充てるため、依頼相手に預託金を預けます。
⑤の公正証書遺言の公証役場の手数料は全国一律ですが、誰に幾らくらい遺産を渡すのかで計算されます。
頼れる親族がいないおひとりさまは、自分でできないことを第三者に託す必要はあるものの、依頼するとなると費用が掛かってしまいます。
とは言え、死亡した後のことは誰かに行なってもらわなければなりませんから、④の死後事務委任契約と、⑤の公正証書遺言の二つは依頼しておきたいものです。
初期費用は掛かりますが、報酬は遺産からの支払いになるため、生前の月額負担はありません。
金銭的な余裕のない場合
生前の依頼に関しては、別の方法でもある程度、同じようなことを行なってもらえます。
もちろん先の①~③の契約と違って、全てを網羅できるわけではありませんが、ある程度カバーできます。
例えば、見守りに関しては、ご近所同士で見守ったり、機器などを自宅内に設置して、特定の人に安否確認の通知が届くようにしたり、又は郵便や飲食を配達する業者に見守ってもらったりすることもできます。
役所や地域包括支援センターでは、緊急通報の機器を貸与していたり、コミュニティーや介護に関する情報などを発信したりしています。
さらに、高齢者で判断力はあるけれど支援が必要な場合、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を利用できれば、定期的な見守りや日常的な金銭管理を行なってもらえます。
誰でも何でも利用できるわけではありませんが、それらを事前に知っておけば、いざという時に役立ちます。
一番困るのが、誰とも付き合いがなく自宅に籠ってしまう場合です。
友人や福祉の人との繋がりがあれば、そこから支援を受けられる可能性がありますので、できれば積極的に誰かと繋がりを持っておくのが一番安心です。
注意すべき点
おひとりさまの中で注意が必要なのが、親族に頼りたくない場合です。
事情があって頼りたくない、親族に迷惑を掛けたくないのでしょうが、第三者が何でもできるわけではないため、医療行為への同意や身元保証など、親族がいれば親族に頼らざるを得ないことがあるからです。
頼れる人がいないおひとりさまは、第三者に依頼し支援等してもらう以外ありませんが、身内はいるけど頼りたくないと思っているおひとりさまは、今後の自身の支援を専門家や団体などに依頼しようとする傾向があります。
しかし、本人は身内に頼れないと思っていても、思いのほか身内は引き受ける覚悟をしているケースも少なからずあります。
また、専門家は医療行為への同意や身元保証の引き受けを基本的に行ないません。
医療行為への同意に関しては、親族に依頼したり病院と相談したりしながら対処していきますが、身元保証は損害賠償も含めた金銭保証になるため、引き受けることが難しいからです。
どうしても「身元保証人」に拘るのなら、これらの契約に加えて身元保証も行なってくれる団体などへ依頼する方法もあります。
但し、月会費が必要な団体もありますし、使い込みで裁判沙汰になったり破綻したりした団体もあります。誰に依頼するにせよ、納得した上で依頼することが大切です。
親族がいない、付き合いが全くない人の中には、「自分は長生きするつもりはないし、亡くなったら誰かが何とかしてくれるだろう」「どうせ財産は国のものになるのだから」と準備対策を放棄する人がいます。
しかし、それでは周囲の人が困ってしまうのです。
孤独死の発見が遅れ、近隣が異臭や害虫の被害に遭う、室内の片付けができなくて家主が困るなどがあります。
また、遺体の引き取りや室内の片付けで遠い親戚に連絡が行き、迷惑を掛ける場合もあります。
亡くなった人の遺産や遺品には第三者が勝手に手を付けられないため、親族が全くいない、又は親族が拒否した場合には、誰かが家庭裁判所に申し立てをして「相続財産管理人」を選んでもらわなければなりません。
しかし、財産を調べて数か月の公示を何度か行う必要があるため、1年以上は掛かります。
その間、ずっと困る人がいる可能性があるため、自分の死後の後始末をどうするか考え、準備しておくことも必要なのです。
自分なりに考えて準備する人もいますが、準備の仕方を間違えると却って困る事態になりかねません。先ずは、これらを扱っている専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
おひとりさまと一口に言っても、「法定相続人も頼れる人もいないおひとりさま」と、「身内はいるけど頼りたくない、家族に迷惑を掛けたくないというおひとりさま」と、「頼れる身内がいるおひとりさま」の3タイプに分かれます。
どのタイプかによって、行う対策は異なります。
おひとりさまが準備しておきたい契約などは主に6種類あります。
- 見守り契約 … 定期的な連絡や訪問により現状を確認してもらう
- 任意代理契約 … 判断力はあるが、身体が不自由になってしまった時などの財産管理や見守り
- 任意後見契約 … 判断力が低下した時の財産管理や身上監護
- 死後事務委任契約 … 死亡後の手続き類を行なってもらう
- 公正証書遺言 … 遺産の行き先を決め、遺言書通り行なってもらう
- 尊厳死宣言書 … 延命治療を拒否して、自然に死を迎える為の文書
頼れる身内がいないおひとりさまは、基本的に全ての準備をしておくと安心です。
身内に頼りたくないというおひとりさまでも、葬儀や納骨などある程度身内が行うケースもあります。
しかし、全てを行なってもらえないのなら、死後事務委任契約は依頼しておく必要があります。
実際には個々人の事情で必要な契約は様々ですが、いずれにしても相続人以外にお願いする場合は、可能ならその旨を相続人などに話しておいた方が、行う人が困らずに済みます。
遺言書についても、遺産をどうするのか決めておかなければ、預貯金の解約ができませんし、葬儀費用の支払いや未払い金の支払いなどで立替金が合った場合の清算もできません。
場合によっては遺品の処分もできません。遺品も相続財産になるからです。
では、金銭的余裕があまりないけれど、頼れる身内もいないおひとりさまの場合はどうするか。
その場合は、死後事務委任契約と公正証書遺言の準備だけでもしておきたいところです。
これら6つの契約や遺言書は、同じ専門家などに依頼することを強くお勧めします。
福祉の専門家や相続の専門家などが対象になりますが、相続手続きも行なってもらうのなら、弁護士、司法書士、行政書士などで「相続・終活業務」を行なっている人に依頼するのが無難です。
依頼する専門家選びは重要です。
実力や実績も大事ですが、将来支援してもらうのなら長い付き合いになる可能性が高いため、人柄や相性も大事。
何より信用できる人を選ばなければなりません。
可能であれば、自分より20歳程度年下の人に頼む方が、互いの寿命を考えた場合に安心です。
依頼する前に数回相談してみたり、セミナーに参加してみたりしながら、人となりを確認しておくと良いと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。