退職金のお得な受け取り方は?
退職金に掛かる税金を知りたい…
こんな疑問・悩みを解決します!
- 退職金・企業年金の上手な受け取り方
- 一時金又は年金で受け取るメリット・デメリット
- 退職一時金・年金に掛かる税金
はじめに
長く会社勤めをした人にとって、定年でもらえる退職金は、まとまった大きな金額となるでしょう。
その退職金は、老後資金のベースにもなる大切なお金です。
企業年金も、公的年金の不足分を補う大切な収入になる筈です。
これらをどのように管理し、退職後の生活に生かして使うかは、退職前から、夫婦でよく話し合っておきましょう。
退職金規定と受取額の目安を確認
退職金制度の有無や支給方法、計算の仕方は会社ごとに異なります。
定年による退職金の金額は、退職時点の基本給が高く、勤続年数が長い人ほど多くなるのが一般的です。
また、退職金と聞くと、一括で受け取るイメージを抱く人が大半ですが、実際は退職金制度と企業年金は一体化されていて、一時金か年金かのどちらか一方の会社もあれば、両方を併用する会社もあります。
併用する会社では、自分でどちらかを選択することができたり、一時金と年金でもらう分の金額や割合を決められることもあります。
定年が近付いたら、定年退職者向けのセミナーなどで、退職金についても説明を行う会社がありますが、勤務先でそうした機会がない場合は、自分から問い合わせ、会社の退職金規定と受取額の目安を確認しましょう。
確認方法としては、会社の担当部署に問い合わせることが一番簡単ですが、それ以外に自分で調べる方法もあります。
退職金のルールは就業規則の退職金規定に定められていますが、通常、このような規定は社員が閲覧できるようになっています。
書面や冊子だけではなく、最近では社内ネットワーク上で自由に閲覧できる企業もあります。
退職金制度とは別に運営されている厚生年金基金や、確定拠出年金などがある人は、それらの見込み額や、支給開始年齢、受給方法なども確認しておきましょう。
一時金と年金のメリット・デメリット
退職金の受け取り方は、「退職一時金」か「退職年金(企業年金)」から選べるのが一般的です。
一時金か年金かの受け取り方によって、引かれる税金が異なり、そのお金の生かし方や使い道が制約されることもあります。
受け取り方法のルールは勤務先によって異なるため、自分の勤務先の退職金制度について、早いうちから人事・総務部に問い合わせて確認してみると良いでしょう。
受け取り方法を決める前に、メリット・デメリットを知っておきましょう。
先に結論を言うと、税金面だけを考えるならば、退職時にまとめて一時金で受け取った方が有利です。
一時金で受け取る場合、「退職所得控除」という税制優遇があり、退職金の一部が非課税になります。
この非課税枠(退職所得控除額)は勤続年数が長いほど大きくなり、大学卒業から60歳まで38年勤め上げた人の場合、退職金は2,060万円まで非課税で受け取れます。
また、「退職後に住宅ローンや教育ローンの残りを一括で返したい」「住まいをリフォームしたい」など、まとまった資金が必要な家庭にとっては、とても役立ちます。
その反面、自分で資産管理や運用を行い、老後に備えて資金を計画的に使っていかなければなりません。
一方で、生活資金などを補う為に少しずつ使いたいなら、年金でもらう方が便利です。
毎年、年金のように少しずつ受け取れば、会社側の運用期間が長くなる分だけ、一時金よりも最終的な受取総額は多くなります。
但し、それによって毎年の税金や社会保険料が増える場合もあります。また、勤務先の経営状態や預け先の運用悪化で、途中で減額される恐れもあります。
こうした情報を確認した上で、自分に合った有利な受け取り方を検討しましょう。
一時金で受け取るメリット・デメリット
①メリット
- 所得控除の枠内の場合、所得税・住民税が掛からない
- 会社や基金が破綻した場合の影響がない
- 住宅ローンの完済やリフォームなど、退職後に必要な大きな支払いに充てることもできる
②デメリット
- 収入の安定性がなく、使い過ぎが防ぎにくい
- 無理な投資をしてしまう可能性あり
- 預け先や運用方法を慎重に考える必要がある
年金で受け取るメリット・デメリット
①メリット
- 毎年少しずつ受け取るため、生活資金として使いやすい
- 定額を受け取ることができ、収入の安定性がある
- 安定的な収入なので安心感が大きい
- 計画的な家計プランができる
- 預け先や運用方法に悩む必要がない
②デメリット
- 公的年金等控除の枠を超えると所得税・住民税が掛かる
- 社会保険料算定の対象となる
- 大きな金額の支払いに充てたい場合は、自分で貯めていくことが必要
- 会社や基金が破綻した場合に影響を受ける
退職金に掛かる税金
退職金や企業年金も、所得税・住民税の対象になります。
但し、受け取り方によって課税方法が異なるため、結果として支払う税額が変わる点に注意が必要です。
退職時に一括で受け取る退職金を、退職一時金と言います。
退職一時金は、他の所得とは分けて、これだけで税金を計算するというのが大きな特徴で、独自の優遇措置もあります。
企業年金も一時金で受け取る場合は、退職一時金と同じ扱いになります。
具体的な計算方法は下記の通り。
①退職所得控除額を計算する
- 勤続年数20年以下 … 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 勤続年数20年超 … 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
②課税退職所得金額を計算する
- 課税退職所得の金額 … (退職金収入の額-退職所得控除額)×1/2
③退職所得に掛かる所得税額を計算する
- 退職所得に掛かる所得税額 … 退職所得×所得税率-控除額
退職一時金からは、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を差し引けます。
この控除額は勤続年数が長いほど多くなり、35年勤務なら1,850万円になります。
- 800万円+70万円×15年=1,850万円
ですから、退職一時金が退職所得控除額よりも少なければ、税金は掛からず、丸ごと受け取れます。
税金が掛かる場合も、課税所得は、退職所得控除額を差し引いた後の半分で済み、他の所得に比べて所得税も住民税もぐっと軽くなります。
退職一時金を受け取る場合は、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出するのが一般的で、これを出せば、税金の精算も勤務先でしてくれます。
この書類を提出しないと、退職一時金からは一律20.42%の税金が引かれてしまうので、翌年に自分で確定申告をして精算することが必要です。
一方、年金でもらう場合、毎年受ける年金は、公的年金等の収入に含まれます。
退職年金や厚生年金基金、確定給付年金、確定拠出年金は、公的年金と合算してから、「公的年金等控除額」を差し引いた金額が雑所得となり、その他の所得と合わせて所得税・住民税を計算します。
- 公的年金等の収入額-公的年金等控除額=雑所得
まとめ
退職金は老後の生活を支える重要な資産となります。
定年後の生活を左右する大切な資金ですので、少しでも有利な条件で退職金を受け取る為には、事前の準備が欠かせません。
先ずは、自分が受け取ることができる退職金の額を知っておきましょう。
退職一時金と退職年金を選べる場合、それぞれメリットとデメリットがありますので、どちらで受け取るか十分な検討が必要です。
まとまったお金が必要だったり、自分で運用したい人は一時金を選ぶと良いでしょう。
この場合、退職所得控除が受けられるので、税負担が大幅に軽減されるというメリットもあります。
退職年金として受け取る場合は公的年金と合算し、公的年金等控除額を差し引いた額で課税金額が決まりますので、節税ということで考えると一時金受け取りの方が有利と言えるでしょう。
退職一時金は支給額が決まっていますが、退職年金は運用状況や受け取り期間などによって、一時金より額面では多くなる場合があります。
退職年金がどのような仕組みになっているのか、例えば「有期」なのか「終身」なのか、更に過去の運用状況や年金額の見込みがどうなっているか事前に確認しておく必要があるでしょう。
年金受け取りのメリットは、定期的な収入として受け取れるため、月収を増やせる安心感があり、計画的な家計プランを考えられるということです。
一時金でまとめて受け取ると、つい無駄遣いをしたり、老後資金の不足分を補う為に無理な投資をしてしまったり…、といった心配があります。
節税と運用効果の両方を生かしたいなら、一時金と年金を組み合わせるという手もあります。
税金が掛からない額いっぱいまでを一時金として受け取り、残りを年金として受け取る方法です。
但し、どの方法が最も有利になるかは一時金で受け取った場合の非課税枠や、年金の予定利率、年金を含めた収入などによって全く異なります。
以上のように説明してきましたが、将来、税金や社会保険料も改正される可能性がありますから、税額などの損得だけでなく、退職後の生活プランや資金計画を考えて、それに合った受け取り方法を選ぶのが一番。
- 一時金として一括で受け取る … 税金面での優遇が大きい
- 年金として分割で受け取る … 使い過ぎてしまうリスクが少ない
- 一時金と年金を組み合わせて受け取る … 受取総額と税負担のバランスをよく確認することが重要
迷った時は、公的年金が多い人は一時金での受取額を多めに、逆に公的年金の少ない人は、年金での受取額を多めにするのが、現実的な方法でしょう。
どちらにしても大切な老後資金ですので、十分な情報収集と検討が必要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。