定年退職でも失業手当はもらえる?
当面は職探し、収入はどうする?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 雇用保険の仕組み
- 雇用保険の手続きの流れ
- 雇用保険の役立つ制度
失業給付の受給条件
継続雇用や定年延長を受けずに別の仕事をしたいと考える人もいるでしょう。
就職活動の心強い支えとなるのが、ハローワークや失業保険(雇用保険の失業給付)です。
雇用保険について、「定年では失業手当はもらえない」と思っている人が多いようです。
定年退職をしても、まだ働く意思と能力があり、求職活動を行う人には、失業保険を受ける権利があります。
65歳未満の人が受け取る失業保険は「基本手当」と呼ばれます。
先ず、要件として「雇用保険の被保険者期間」があります。
離職日(定年退職日)以前の2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。
定年に向けた準備の1つとして、自分の被保険者期間(雇用保険を納付した期間)を確認しておきましょう。
尚、失業給付の対象は65歳未満となっています。
65歳以上になると失業給付は「基本手当」から「高年齢求職者給付金」という名称になり、給付の内容も変わります。
基本手当の場合、被保険者期間が「離職前2年間に通算12か月以上あること」が条件ですが、高年齢求職者給付金は「離職前1年間に通算6か月以上」となり、条件が緩和されます。
また、基本手当は4週間ごとの失業認定を受ける必要がありますが、高年齢求職者給付金は「一時金」として一括で振り込まれるため、定期的にハローワークに通う必要がありません。
更に支給の回数制限がなく、65歳以降に失業と再就職を繰り返した場合には、その度に給付を受けられます。
- 失業給付を受給する要件 -
- いつでも就職する能力があること
- 就職する意思があり、就職活動を行なっていること
- 現在、職業に就いていないこと
- 離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること
失業給付には「再就職する意思と能力」が必要です。
例えば、「長いサラリーマン生活にも一区切り付いたので、定年後は暫く就職せずのんびり暮らしたい」といった場合では「再就職の意思」がないため失業給付を受けることはできません。
また、病気やケガなどの健康上の理由で、すぐに仕事に就けない場合なども、失業とは認められません。
- 失業給付を受けることができない場合 -
- 定年退職後に暫く休養しようと思っている時
- 病気やケガによって、すぐに就職できない時
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない時
- 結婚等により家事に専念するため、すぐに就職できない時
失業給付の受給期間は原則として「退職日の翌日から1年間」となっています。
この期間が過ぎると所定の給付日数が残っていても失業給付を受けることができません。
求職の手続きはできるだけ早く申請するようにしましょう。
尚、定年退職の場合には「受給期間延長」という制度があり、延長申請の手続きをすると本来の受給期間である1年間に加えて更に最長で1年間延長され、合わせて2年間となります。
離職日の翌日から2か月以内に申請が必要ですので忘れないようにしましょう。
同様に病気やケガ、妊娠、出産、介護、看護などですぐに働けない時も受給期間を延長することができます。
基本手当の受給額と受給期間
受給額
給付される基本手当の総額は「基本手当日額(1日当たりの手当の額)」と「所定給付日数(手当が支給される日数)」で決まります。
- 基本手当の総額=基本手当日額×所定給付日数
基本手当日額とは、原則として「離職した日の直前6か月に毎月決まって支払われた賃金を180で割って出した額に給付率を掛けた額」になります。
この賃金には賞与は含みません。
- 基本手当日額=賃金日額×給付率
60歳以上65歳未満の給付率は45%~80%で賃金が低いほど高い率となっています。
60歳未満及び65歳以上では50~80%です。
年齢ごとに上限の額があり、60歳以上65歳未満の上限は7,294円です(2024/1現在)。
退職前の給与が上限を大幅に上回っていても、上限額以上は給付されません。
実際に給付される基本手当日額は「雇用保険受給資格者証」で確認できます。
受給期間
基本手当の給付日数は離職理由によって決まります。
65歳未満の定年退職者は事前に再就職の準備が可能な「一般の離職者」となり、基本手当を給付される日数は雇用保険の被保険者であった期間で決まります。
年齢に関係なく、被保険者期間が1年以上10年未満では90日、10年以上20年未満では120日、20年以上では150日となります。
1年未満の場合は給付されません。
身体に障害がある等の理由で就職が困難な人や倒産・解雇等で再就職の準備をする余裕のなかった人は、一般の人よりも多い日数の給付を受けることができます。
高年齢求職者給付金
65歳以上で退職すると「高年齢求職者給付金」が支給されます。
基本手当と同様に「求職申し込み」と「失業認定」が必要となります。
雇用保険の被保険者期間が1年未満では30日、1年以上では50日分となり、一括支給されます。
支給金額も60歳から65歳未満の基本手当と比べて少なくなるので、60歳を過ぎても働き続ける場合は退職日に注意が必要です。
まとめて一括受給できるのは嬉しい反面、60~64歳で退職する場合の失業給付の総額に比べれば、受取額は減少します。より多く受け取る為には「65歳の誕生日の前々日」までに退職するのがポイント。
法律では、65歳の誕生日の前日に65歳となりますので、誕生日の2日前に退職した場合は、基本手当を受け取ることができます。
但し、この場合は65歳を過ぎても年金が受給できなくなるので注意が必要です。
それぞれの場合で受け取れる金額を比較しておくと良いでしょう。
尚、高年齢求職者給付金を受け取っても年金は支給停止になりません。
基本手当の受給手続きの流れ
失業給付を受給するまでの手続きの流れを確認しましょう。
退職して10日程度すると、会社より「雇用保険被保険者離職票」が送られてきます。
届かない場合は、退職した会社へ問い合わせて下さい。
求職の申し込み
基本手当を受け取る為には、ハローワークへ行き、求職の申し込みをする必要があります。
申請先は、元の勤務先の近くではなく、現住所を管轄しているハローワークとなるので注意が必要です。
ハローワークへ行ったら、「求職申込書」へ必要事項を記入し提出します。
求職申込書には希望条件や業務経歴などを記入する欄がありますので、事前に準備しておくと良いでしょう。
提出後に、離職理由の確認など簡単な面接があります。
離職理由などに問題がないことが確認されると、受給資格決定となります。
受給資格決定後、7日間の待期期間を過ごします。
この待期期間は離職理由などに関わらず、全ての人が対象となります。
待期期間の終了より1~2週間で「雇用保険受給説明会」が開催されますので必ず出席して下さい。
日程は受給資格決定時に指定されます。
ここでは再就職や給付についての説明があるので、しっかりと理解しておきます。
ここで第1回の失業認定日が指定され、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡されますので、大切に保管します。
失業認定
指定された認定日に、雇用保険受給資格者証と求職活動の状況を記入した失業認定申告書を持参してハローワークへ行き、失業認定を受けます。
原則として、期間内に2回以上の求職活動が必要とされています。
認定されると、1週間程度で指定した金融機関に1回目の基本手当が振り込まれます。
以降は4週間ごとに失業認定日が指定され、認定されると基本手当が振り込まれます。
所定給付日数が終了するか、再就職するまで繰り返されます。
尚、自己都合で離職した場合は7日間の待期期間の後に2か月間の給付制限があり、この期間中に2回以上の求職活動が必要ですが、定年退職の場合には給付制限はありません。
雇用保険の役立つ制度
基本手当の給付を受けている人で再就職が決まった場合、一定の条件で「就業促進手当」が受け取れます。
就業促進手当には「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」の4種類があります。
尚、基本手当を受け取らずに1年以内に再就職し、再び雇用保険の被保険者になると、再就職前の被保険者期間と通算することができます。
再就職手当
再就職手当は安定した職業に就き、基本手当の給付日数が3分の1以上残り、1年を超えて勤務することが確実である場合に支給されます。
支給額は、「支給残日数×給付率×基本手当日額」で算出します。
支給残日数が3分の2以上残っている場合の給付率は70%、支給残日数が3分の1以上3分の2未満の場合の給付率は60%となります。
また、自ら事業を始めた場合も、一定の要件を満たせば、受け取ることができます。
再就職手当の仕組みを活用すれば、再就職先の給与に加えて、失業給付の最大70%に当たる金額を受け取れるので、早めの再就職は、むしろお得になるケースが多いのです。
就業促進定着手当
就業促進定着手当は再就職手当を受けた人で、再就職後に賃金が下がってしまった場合に受け取ることができます。
同じ事業主に6か月以上雇用され、再就職から6か月間の賃金が離職前の賃金日額より低い場合に、一定の金額が支給されます。
就業手当
就業手当は常用以外の仕事に就き、基本手当の給付日数が3分の1以上、且つ45日以上が残っていた場合に受け取ることができます。
各就業日について「基本手当日額×0.3」が支給されます。
- 就業日×30%×基本手当日額
失業認定日に、申請書と就業を証明する資料を提出します。
常用就職支度手当
再就職が決まったのに給付日数が規定に満たない人は、要件に該当すれば、「常用就職支度手当」が支給されます。
高年齢雇用継続給付
定年退職後も雇用継続や転職で働き続ける場合、一般的には賃金が下がってしまうケースが多いです。
60歳以上65歳未満の人が、60歳時点と比べて賃金が75%未満に減ってしまった場合、「高年齢雇用継続給付」(2025年から段階的に廃止)を受け取ることができます。
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」があり、どちらも5年以上雇用保険の被保険者であり、60歳以降も働く場合、65歳まで給付されます。
高年齢雇用継続基本給付金は、基本手当や再就職手当を受けずに就職した場合に対象となり、高年齢再就職給付金は、基本手当を受給中に100日分以上の給付日数を残して再就職した場合に支給されます。
まとめ
定年退職時点で会社を辞め、心機一転、他の会社などへ再就職しようと求職活動をする場合は、雇用保険から「失業給付(基本手当)」が受け取れます。
失業給付は、失業した人が再就職するまでの生活を手助けする為の制度です。
失業給付の受給要件は、
- 働く意思があるにも関わらず、失業状態にあること
- 退職前の原則2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること
です。
但し、対象は65歳未満。65歳以上は高年齢求職者給付という一時金の支給となります。
失業給付を受ける際には、ハローワークで求職の申し込みや必要書類の提出が必要。
これらの手続きをした日が「受給資格決定日」となり、そこから7日間の待期期間を経て受給が始まります。
失業給付の基本手当日額は、賃金日額(退職前6か月の賃金÷180)に賃金に応じた給付率を掛けて算出します。
失業給付の給付日数は、離職者区分と被保険者期間によって異なります。
離職者区分は、
- 自己都合や定年退職での離職者
- 倒産や解雇など会社都合による離職者
- 病気や親の介護など正当な理由のある自己都合による離職者
の3区分。
定年退職は1.の給付日数が適用されますが、自己都合とは異なり2か月の給付制限はありません。
- 雇用保険の手続きの流れ -
- 退職 … 離職票の発行を確認しておく
- 雇用保険被保険者離職票が届く… 記載されている離職理由等を確認する
- 求職の申し込み … 受給手続きをする本人が、必要書類を住所管轄のハローワークに持参する
- 受給資格決定 … 受給者説明会の日時が指定される(雇用保険受給資格者のしおりを受け取る)
- 7日間の待期期間 … 受給資格の決定を受けた日から、失業の状態が通算して7日間経過するまでを「待期期間」と言い、この間の基本手当は支給されない
- 受給者説明会 … 雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取る(第1回目の失業認定日が指定される)
- 給付制限 … 自己都合・懲戒解雇で退職した人は、待期満了の翌日から更に2か月間基本手当は支給されない
- 失業の認定 … 認定日ごと(原則として4週間に1回)に雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を提出(就労の有無・求職活動の実績等を確認して失業の認定が行われる)
- 基本手当の支払い … 失業の認定を受けた日数分の基本手当は、本人の普通預金口座への振り込みとなる
- 就職 … 就職後の給付金として、再就職手当・職業促進定着手当・就業手当・常用就職支度手当・高年齢再就職給付金等を申請できる場合がある
- 支給終了 … 支給終了後もハローワークで、職業相談をいつでも受けることができる
最後までお読みいただき、ありがとうございました。