退職したら保険はどうなる?
何を基準に選べばいい?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 健康保険制度の仕組み
- 定年後の健康保険の選択肢
- 加入する健康保険の選び方
- 後期高齢者医療制度について
健康保険制度の仕組み
日本の健康保険制度には会社員などが加入する「健康保険(社会保険)」と、住んでいる市区町村で加入する「国民健康保険」があります。
老後の生活に欠かせない医療保険制度ですので、それぞれの制度の仕組みや違いなどを理解しておくことが大切です。
国民健康保険は、生活保護を受けている人、会社などの健康保険に加入している人以外は、必ず加入しなければならない地域医療保険です。
市区町村が保険者となり運営しています。
国民健康保険も健康保険も一部負担は3割、義務教育就業前までは2割、70歳から74歳までは原則2割(現役並み所得者は3割)ですので、定年後に国民健康保険に変わっても、一部負担の割合が増えるということはありません。
健康保険の保険料は給与に応じて金額が決まります。
被保険者と会社が折半するので、保険料の半額が給与から天引きされます。
国民健康保険では保険料は「世帯単位」となり、世帯主が支払います。
前年の所得に応じた「所得割」と、加入者が年齢に関わらず負担する「均等割」があり、それぞれ「医療分」「後期高齢者支援分」「介護分」に分けて計算します。
その他、「資産割」や「平等割」などを設けている自治体もあります。
健康保険では扶養家族の保険料の支払いはありませんが、国民健康保険では家族全員が加入することになりますので、家族が多いと保険料が割高になります。
70歳になると、医療費は原則2割負担となります。
75歳以上になると、後期高齢者制度の被保険者となり、負担割合は原則1割(現役並み所得者は3割)、保険料は世帯ではなく個人で算出し、一人ひとりが支払うことになります。
退職後に加入できる健康保険と加入条件
会社を退職すると、それまで勤務先で加入していた健康保険から脱退することになります。
健康保険に入っていない空白期間中に自分や扶養家族が病気やケガをすると、最悪の場合、医療費が全額自己負担となることもあります。
退職後にどの健康保険に加入するか、よく検討し、期日内に手続きができるよう準備しておきましょう。
定年後も継続雇用や再就職で引き続き会社員として働く場合は、勤務先の健康保険に加入できますが、それ以外の場合、以下の三つの選択肢から選ぶことになります。
- 退職前に加入していた健康保険を任意継続する
- 家族の健康保険の被扶養者になる
- 国民健康保険に加入する
任意継続は、勤務していた会社の健康保険を退社後も2年間、個人で継続して加入できる制度です。
在職中は保険料を労使で折半していましたが、任意継続では全額自己負担となります。
と言っても、実際は加入者の平均的な給与を基準に上限が設けられているので、全ての人の保険料が退職前の倍額になるわけではありません。
また、専業主婦などの扶養家族がいる場合は、その家族の保険料は負担しなくても健康保険のサービスを受けられます。
会社員の配偶者や子供の扶養に入ることができる場合は、2.の選択肢が、費用面では最も有利です。
被保険者である家族が保険料を負担するため、保険料を支払う必要はありません。
但し、認定要件は厳しく、年収が180万円未満(60歳未満は130万円未満)で、主として被保険者である家族によって生計が維持されているなどの条件を満たしていなければ、被扶養者にはなれません。
また、失業保険の基本手当を受給している間も、原則として被扶養者になることはできません。
この要件を満たせない場合は、任意継続か国民健康保険のいずれか有利な方を選ぶことになります。
医療機関の窓口で支払う医療費の負担額は、どの健康保険も同じ3割(69歳まで)なので、選択のポイントは毎月支払う保険料です。
先ず家族の健康保険の被扶養者になれるか、条件を確認した上で、難しいようであれば任意継続か国民健康保険のいずれかを選ぶと良いでしょう。
一般には任意継続の方が、国民健康保険よりも保険料が安く済むケースが多いでしょう。
3.の国保は、自営業者などが加入している健康保険です。
保険料は前年の所得などによって決まるので、退職直前の収入が高かった人は一年目の保険料が高くなる傾向にあります。
また、任意継続の場合は扶養家族がいても保険料は変わりませんが、国民健康保険は世帯の加入者全員の保険料が加算されます。
国民健康保険料は、市区町村役場の窓口に前年の所得が分かる資料(源泉徴収票など)を持参すれば、試算してもらえます。
任意継続の保険料は、手続き先(協会けんぽ・健康保険組合)で確認できます。
両者を比較して、費用負担の軽い方を選ぶと良いでしょう。
後期高齢者医療制度
高齢になると医療費の自己負担割合は段階的に軽減していきます。
65歳~70歳未満は3割、70~75歳未満は原則2割、75歳からは原則1割負担となります(現役並みに所得がある人などは2~3割負担)。
特に大きな変化があるのは75歳になってから。
全ての人がそれまで加入していた健康保険等から外れて、都道府県が運営主体となる「後期高齢者医療制度」に個人単位で加入します。
後期高齢者医療制度は75歳以上の人が加入する独立した医療制度です。
保険料は都道府県ごとに異なり、原則、年金から天引きされます。
後期高齢者一人ひとりが納めることになるので、これまで保険料を負担していなかった被扶養者も、保険料を負担する必要があります。
健康保険は75歳になると「後期高齢者医療制度」に自動的に切り替わります。
この時、夫婦が国民健康保険に加入していた場合、年下妻であれば夫が先に後期高齢者医療制度に加入します。
夫は自動的に移行されるため手続きは不要。妻も手続きなしで国民健康保険のまま自動的に移行・継続されます。
問題なのが、夫が会社の健康保険に加入していて、妻が被扶養者の場合です。
夫の後期高齢者医療制度への移行手続きは不要ですが、年下妻は夫の扶養から外れることになるため、国民健康保険に加入するなどの手続きが必要になります。
まとめ
60歳以降の健康保険は、働き方によって4種類に分けることができます。
1つ目は継続雇用や退職から間を空けずに再就職するケース。
この場合は、勤務先の健康保険に加入することになり、保険料は引き続き会社と折半になります。
基本的に受けられる保障が同じで、安心度が高め。
扶養の妻が加入することができる点もメリットです。
但し、勤務時間が短い、勤務日数が少ないという場合には、健康保険加入の対象外となることもあります。
2つ目は退職前の健康保険を任意継続するケースです。
これまで会社と折半していた保険料を全額自分で負担することになりますが、妻や子供を扶養にすることも可能です。
任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額を基に算出されますが、その健康保険の全加入者の平均的な給与を基準に上限が設けられているため、極端な高額になる心配はありません。
退職の翌日から20日以内に加入していた健康保険組合か協会けんぽへ「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」「被扶養家族者届」を提出します。
尚、加入期間は原則2年で、傷病手当金と出産手当金はありません。
これまで、任意継続を選び申請した場合、「資格満了」や「後期高齢者医療制度の被保険者になった」といった理由を除き、2年間は継続が必須でした。
原則、2年間は途中で辞めることができないという縛りがあったのです。
しかし、2022年1月の改正から、本人の自由な意思に基づき、任意継続をいつでも辞めることができるようになりました。
3つ目は、国民健康保険に加入するケースです。
この場合は、退職後14日以内に、居住地の市区町村に申請をします。
被扶養者であった家族も新たに加入する必要があるため、家族分の保険料が発生します。
また、住んでいる市区町村によって保険料が違う場合があります。
保険料は、前年の所得を基に算出されるため、退職した翌年の保険料は、高くなることがあります。
4つ目は、家族の健康保険の被扶養者になるというケースです。
この場合のメリットは、保険料の負担をしなくて済むことです。
但し、加入している被保険者に生計を維持されていること、年収が180万円未満であることなど、一定の要件をクリアしないと対象となりません。
- 定年後の健康保険の選び方 -
- すぐ再就職する … 新しい勤務先の健康保険
- 家族の扶養に入る … 家族の健康保険の被扶養者
- 今までの会社の健康保険を続ける … 任意継続被保険者
- 上の三つに当てはまらない … 国民健康保険
最後までお読みいただき、ありがとうございました。