デジタル遺品(遺産)とは?
相続できる?できない?
こんな疑問・悩みを解決します!
- デジタル遺品とは
- デジタル遺品の問題点
- デジタル資産の生前対策
- デジタル遺品の確認方法
- デジタル遺品の引き継ぎ方
はじめに
相続対策において最近よく目にするのが「デジタル遺品」の問題。
デジタル遺品とは、故人が使用していたパソコンやスマートフォンなどのデジタル端末の中に保存してあるデータや、インターネットを介して利用していたサービスのこと。
パソコンやスマートフォンにロックパスワードが設定してあると、遺族がロックを解除できず、思いもよらない問題が生じます。
また、動画配信サービスや音楽配信サービスなど、月額払い、年払いの有料サブスクリプションサービスは、契約者が亡くなったからといって自動的に解約されることはありません。
機器のロックが開けず、遺族がサービスを利用していたことを知らないと、利用者がいないのに契約が更新され、無駄な請求が発生してしまいます。
デジタル遺品で大トラブルに発展しやすいのが、インターネットバンキングや、オンライン証券など、金融関係のサービスの利用です。
亡くなった人の口座は10年以上放置されていると、休眠口座となり、お金が国庫に入って入出金できないようになってしまうことがあります。
故人のデジタル機器のパスワードは、遺族が購入した携帯電話キャリアなどに持ち込んでも、教えてもらうことはできません。
パスワードを解析する専門業者もありますが、高額な料金が掛かる上、ロック解除成功率も100%とは言えません。
- 故人のパスワード不明で起こり得るトラブル -
- 遺影にしたい写真が取り出せない
- 死後もSNSアカウントがずっと残る
- サブスクリプションに課金し続けてしまう
- 取引暗証番号が分からず資産が大幅減に…
正しく対応する為に、基本から押さえていきましょう。
デジタル遺品・資産とは
デジタル遺品
一般的にデジタル遺品と言われるものには、スマートフォンやパソコンといった情報端末の他に、その中に保存されている写真や書類などのデータ、インターネット上にあるSNSなどのアカウントやネット口座などが含まれるとされています。
ただ、デジタル遺品は、比較的最近生まれた俗語のため、はっきりとした線引きが難しく、今後もデジタル技術の進歩によって幅が広がっていく可能性もあります。
従って、現状では、定義が明確でないことを踏まえて、デジタルの環境でしか実態が掴めないものをデジタル遺品と捉えておきましょう。
- デジタル機器 … スマートフォンやパソコン、タブレットなどの情報端末が該当します
- オフラインデータ … パソコンやスマートフォンに保存された写真、動画、書類など、インターネットを介さずにアクセスできるデータのこと。クラウドストレージに保存されている場合も。USBメモリーや外付けHDDに保存したものも含まれます
- オンラインデータ&契約 … インターネット上にある故人の所有物や権利関係が該当します。例えば、利用しているSNS、メールアカウント、投稿した日記や写真、ネット銀行の口座、仮想通貨のウォレット、ネット上の有料サービスなど
デジタル資産
ネット銀行の預金や証券口座の株式、投資信託などのデジタル資産は、最優先で対応したいデジタル遺品の一つです。
ネット口座は、紙の通帳やカードが見つからないことも多く、遺族が見つけるのは難しい存在ですが、法律的には一般的な銀行口座などと同じです。
気付かなければ放置されてしまいますし、遺産分割協議が完了した後に見つかると相続をやり直さなければならず手間が掛かります。
また、故人がインターネット上の有料サービスに加入していて、ネット口座から引き落としがされていた場合、死後も年会費や月額料金などが引き落とされます。
- ネット銀行
- ネット証券
- 仮想通貨
- ポイントやマイレージ
お金に関わるデジタル遺品は「デジタル資産」と呼ばれています。できる限り生前にデジタル資産を確認しておき、無用な出費や手間を無くすようにしましょう。
デジタル遺品の問題点
デジタル遺品の整理で最も注意しなければいけないのは、デジタル遺品は本人以外からは見えにくいという点です。
スマートフォンで言えば、パスワード認証や生体認証を設定しているケースが多く、中のアプリやデータもどんどん自分用に最適化していくのが通常で、どのようなアプリを使うかは人それぞれです。
一方で、持ち主以外がそのスマートフォンを使うには、先ず認証を解除した上で、中に入っているアプリの基本操作を覚えて、重要なデータや情報がどこにあるかを探すという膨大な手間が発生します。
これはパソコンも同様で、全ての端末情報でデータや情報を探索し終えて初めて、全体像を掴むことができるのです。
- 書類が見えない … 多くの書類がデータ化されて、パソコン内やクラウド上に保管されるようになりました。検索できるなど、管理がしやすい反面、他の人からは所在が分かりにくくなります
- お金が見えない … 決済や送金などはインターネット経由で行われることが多くなり、明細などの物理的な記録が残らないケースも。銀行の通帳も発行されないケースが増えてきています
- コミュニケーションが見えない … SNSやメッセージサービスなどでのやり取りは、他の人が見ることができず、やり取りの内容はもちろん、誰と繋がっているかも分かりません
やるべきことは、家族が知らなければ困る情報を一枚の紙にまとめて、実印や預金通帳と一緒に保管するだけ。この紙がデジタル資産全般の鍵であり道標になります。
デジタル遺品は相続できる?
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器は、法律上「動産」として扱われます。
動産は相続財産に含まれるため、相続人が所有権を取得し、相続人が複数いる場合は、全ての相続人の共有になります。
共有の状態でも各相続人はパソコンやスマートフォンを使用できますが、一般的には家財道具と合わせて動産を相続する人を決めるようにします。
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器は、法律上「動産」として扱われるため、相続できます。
一方、情報端末の中に保存されているデータは形がないため、所有権の対象にならず、相続されないのが原則です。
但し、故人が撮影した写真や故人の日記など、著作権が認められるものはデータであっても相続の対象となり、相続人が相続でき、自分のものとして扱えるので、自由に見ることができます。
所有権は形がある有体物について認められ、データは形がないため、所有権の対象にならず、基本的には相続できません。
デジタルデータの遺言
法律的に認められる遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。
このうち、自筆証書遺言は遺言を残す本人が全文、日付、氏名を自書する必要があり、パソコンで作成した遺言は正式な遺言として認められません。
また、自書した遺言のスキャンデータも無効です。
SNS
時間と場所の制約がないコミュニケーションの場として、生活に欠かせないものになりつつあるSNS。
ユーザーは日々の出来事や思いを投稿しますが、自分の死は投稿できません。
ユーザーの死後は、遺族などが申請することで、SNSアカウントを削除することもできますが、SNSサービスによっては「追悼アカウント」として亡くなったユーザーの投稿を保存しておくこともできます。
また、死後のアカウントを追悼アカウントとして残すか、削除するかをユーザー自身が事前に意思表示することもできます。
自分が利用しているSNSサービスにはどのような機能があるのかを確認して、生前にできる限りの対策をしておきましょう。
デジタルデータの探し場所
デジタル遺品や、それを開く為に必要なパスワードは時間が経つほど見つかりにくくなるので、できる限り早く探しましょう。
探す場所は、下の表に挙げた項目を参考にして下さい。
- パソコン
- スマートフォン
- 携帯電話
- タブレット
- USBメモリ
- 外付けハードディスク
- マイクロSDカード
- DVD・ブルーレイディスク
- SIMカード
探し終えた場所にチェックを入れていくのもお勧めです。順番に根気よく調べていきましょう。
最近の情報端末は、パスワードでロックする仕組みが組み込まれていて、中身を確認するには持ち主が設定したパスワードを入力する必要があります。
故人がエンディングノートなどにそれぞれの情報端末のパスワードを残しておいてくれれば助かるのですが、なかなかそうもいきません。
パスワードが分からない時は、故人の書類などを調べてみましょう。
相続人が相続した情報端末は、自分の財産と同じように扱えるので、業者にロック解除を依頼しても法的に問題ありません。
現在の技術を以てしても必ず解除できるとまでは言えないとされていますが、どうしても解除できない時は専門業者に依頼することも視野に入れましょう。
デジタル遺品の生前整理
デジタル資産を持つ本人が生前準備する場合、遺族として作業するよりも遥かに楽で効果的な手が打てます。
先ずは、全ての入り口である端末のパスワードを、エンディングノート等にメモをしておき、いざという時に遺族が分かるようにしておきましょう。
また、デジタル資産や各種SNSなど、インターネット上のサービスを利用する際に発行されているIDやパスワードは、整理して一覧にし、機器本体のパスワードと合わせてメモをしておく必要があります。
具体的には、メインで使っているスマートフォンやパソコンのパスワードと、ネット銀行や証券会社の口座情報などを記載しておけばOK!
オフラインデータに関しては、重要ファイルの在処を紙にメモしておくのも良いですが、端末内を日頃から整理して分かりやすい導線を引いておく方が重要です。
パソコンならデスクトップに「家族写真」などのフォルダーを用意しておくのも良いですし、スマホならトップ画面に重要なアプリを並べておくのが有効です。
それと同時に、隠したいデータは目立たないところに配置しておきましょう。
自分の死が予測できない以上、隠したいデータを完璧に隠すのは難しく、ならば目が向かないように導線をコントロールしておくのが現実的な策と言えます。
自らのデジタル資産の整理は、無駄な契約を発見したり、恥ずかしいデータがバレバレな状態になっているのを気付く切っ掛けになったりします。
また、死後の家族の対応をシミュレーションすることは、自分が遺族の立場になった時の予行演習にもなります。
まとめ
デジタル資産は、持ち主にとってはとても便利で生活に欠かせないものですが、その一方で、遺族から見ると存在すら分かりにくく、非常に厄介な存在になります。
生前に何も対策をしておかないと、パスワードを探したり、操作方法を覚えたり、端末内のデータを探したりと、遺族に大変な手間を掛けてしまいます。
パソコンやスマートフォンを活用していたり、ネット銀行・ネット証券を利用している方は、今のうちにそれらの情報をまとめておき、自分にはどのようなデジタル資産があって、どこにその情報がまとめてあるかを家族に伝えておきましょう。
生前にきちんと処理をしておけば、普通の遺品に近い存在にしておくことも不可能ではありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。