不動産の分け方を知りたい…
共有ってどうなの?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 不動産の分割方法
- 現物分割について
- 換価分割について
- 代償分割について
- 共同所有について
- それぞれのメリット・デメリット
不動産の分割方法
日本の相続財産の大半を占めているのが不動産です。
バブル期には相続財産の実に70%近くが不動産でした。
その後、徐々に割合は減ってきてはいますが、2020年のデータでも、相続税の課税対象となった相続財産のうち、土地・家屋などの不動産が占める割合は、依然として50%近くに上ります。
親や自分たちの財産構成を見ても、自宅が最大の財産で、後は預貯金や株などが少しだけ、という家庭が多いでしょう。
遺産相続で揉める案件の殆どは、不動産が相続財産に含まれています。
財産の大半が自宅で、他の財産はあまり無いという状況が、最も相続トラブルを招きやすいのです。
現金や預貯金などは、取り分の問題はあっても最終的に分けることができます。
しかし、不動産は分けることが困難な財産の代表格です。
そこで、相続人全員が納得できるよう、できるだけ公平に遺産を分けるテクニックが必要になってきます。
「財産は自宅だけ」が一番危ないのです。
遺産の具体的な分割方法には、主に次の4つがあります。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
- 共有分割
これらの方法を上手く使い分けて遺産を分割することになります。
いずれも一長一短があるので、それぞれのケースに合わせて、分割方法を考える必要があります。
現物分割
財産をそのままの形で分割する方法です。
例えば、自宅の土地と建物は長男に、株式と預金は次男に、という具合です。
一番シンプルで分かりやすい分割方法なので、遺産分割の大半が現物分割によって行われています。
しかし、自宅不動産を1人の相続人が受け継いだ場合、他の財産を受け継いだ相続人との間で格差が生じ、揉める原因になりがちです。
遺産分割の原則的な方法ですが、財産の価額には格差がありますので、この方法だけでは相続分通りに分割するのは難しいと言えます。
分筆
不動産が一つしかない場合、分筆という手続きを行えば、登記簿上で一つになっている土地を複数に分割することはできますが、これも厄介な問題があります。
土地の場合は方角や道路に面しているかどうかなどの条件で価値が全然違ってきますし、土地の分け方次第では評価額がガタ落ちしてしまう可能性もあるからです。
登記簿上の一つの土地を複数の土地に分けて登記をする手続きを「分筆」と言います。
土地の一部を売却したい時や、宅地と畑など地目を分けて土地を活用したい時はもちろん、相続した土地や建物など分割が難しい資産を平等に分ける時にも分筆は利用されます。
尚、土地の境界が確定していないと分筆は行えません。
分筆の注意点
- 土地の条件に差が出る
- 土地の税金が変わる
- 費用と時間が掛かる
分筆を考えているなら、生前に土地の測量と境界確定は行なっておいた方が相続時のトラブルも減ります。また、生前に行うことで土地の査定額が上がり相続対策にもなります。
現物分割のメリット
- 分かりやすい
- 財産の現物を残せる
- 分割の際に手間が掛からない
- 売却などの手間が掛からない
現物分割のデメリット
- 相続人の間で不公平が出る可能性がある
- 財産の価値が違うため、法定相続分で分けるのが困難
換価分割
財産を売却し、金銭にして分割する方法です。
現物では分割しにくい財産を分配できます。
換価の方法としては、財産を任意に売却して換価する方法と、家庭裁判所に申し立てて、換価してもらう方法の2つがあります。
売却代金そのものを分割するので1円単位で分けることができ、一見便利な方法のようですが、不動産を手放さなければいけないのが最大のネックです。
例えば、マイホームを分割する際、この方法をとってしまえば、そこに住むことができなくなってしまいます。
実際に換価分割するとしても、なかなか買い手が見付からなかったり、思うような値段が付かず、売却を焦って安く買い叩かれてしまったりすることもあります。
また、売却益に対して譲渡所得税が掛かります。
換価分割のメリット
- 公平な遺産分割が可能
- 現物では分割しにくい財産も分割が可能
- 現物分割の補充方法として有効
換価分割のデメリット
- 財産の現物が残らない
- 売却の手間と費用が掛かる
- 売れたとしても希望価格で売却できるとは限らない
- 譲渡益に対して所得税と住民税が課税される
- 事業用資産など処分できない財産には使えない
代償分割
代償分割とは、相続人の1人が遺産を取得し、その代償として他の相続人に金銭などを支払う方法です。
代償分割は、持ち家やその他の不動産、自社株など、現物分割が困難である場合に用いられます。
例えば、1億円の住宅店舗と2,000万円の預金があり、長男と次男の2人が相続人とします。
兄弟の相続分はそれぞれ6,000万円です。
この場合、長男が住宅店舗、次男が預金を相続し、長男が次男に対して4,000万円を支払えば帳尻が合います。
不動産を手放さずに済み、相続人の間で不公平感が出にくいという意味では理想的な方法ですが、そもそも代償金を用意できなければ話になりません。
対価の支払いは金銭で支払う方法の他に、その相続人が元々保有していた不動産や株券などの現物を交付する形もあります。但し、この場合は譲渡所得税が掛かるので注意が必要です。
代償分割で合意した場合でも、代償金を算出する不動産の評価方法で揉めることがあります。
不動産は「一物四価」と呼ばれ、
- 実勢価格(実際の取引価格)
- 地価公示価格(国土交通省が年に1回発表する標準価格)
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
の四つの価格があります。
遺産分割の際、不動産評価の参考によく使われるのは実勢価格や地価公示価格ですが、相続人同士が納得すれば、どのような評価方法で算出しても構いません。
代償金をもらう側は少しでも高く、支払う側は少しでも安く評価したいと考えるため、評価方法で揉めるのです。
一時に全額を支払わなくても構いませんが、分割払いではどのくらいなら支払えるか、予め確かめておきましょう。
代償分割で合意したのに相手が代償金を支払わない…。
こんな場合でも、債務不履行を理由に分割協議を無効にすることはできません。
訴訟など別の手段を講じる必要があります。
但し、全員の合意があれば協議をやり直すことは可能です。
代償分割のメリット
- 公平な分割が可能
- 不動産を残すことができる
- 農地や商店など分割しにくい財産に有効
- 現物分割の補充方法として有効
代償分割のデメリット
- 代償金を支払う能力がないと実現できない
- 代償金が支払われない可能性もある
- 代償金額で折り合いが付かないこともある
共有分割
遺産の全部又は一部を相続人全員の共有にする方法を「共有分割」と言います。
とりわけ不動産を公平に分配しようとする時に有効な方法ですが、共有にしてしまうと、不動産を利用しようとした時に様々な制約が伴います。
例えば、相続人全員の同意がなければ、売却したり、担保に入れることはできません。
そのため、実質的な不動産の価値が減ってしまうことになります。
また、共有のままで新たな相続が発生した場合、共有者が更に増えていくことになり、益々事態が複雑になります。
不動産は共有を避けて単独所有するのが理想的です。
共有は公平な方法ですが、問題の先送りとも言えます。
子供や孫世代が苦労しないような相続を考えておく必要があるでしょう。
共有分割のメリット
- 公平な遺産分割が可能
- 財産をそのまま残すことができる
- 不動産を残すことができる
共有分割のデメリット
- 個人で自由に使用したり、処分したりできない
- 売却・建て替え・増改築・取り壊しの際には共有者全員の同意が必要
- 共有者が死亡すると権利関係が複雑化する
- 持ち分に応じた固定資産税の負担が必要
まとめ
遺産分割協議は、相続の総仕上げとも言うべきものです。
遺産分割協議によって初めて、具体的に誰がどの財産を、どれだけ相続するかが決まるのです。
しかし、何分の何という数字を、具体的な財産に当てはめるのは決して簡単なことではありません。
例えば、不動産と少額の預金を3人で分ける場合などは、上手く分割するのが難しく、トラブルに発展しかねません。
このような場合でも上手く分割できるように、実際にはいくつかの方法があります。
- 現物分割 … 財産をそのままの形で分ける
- 換価分割 … 財産を換金して現金で分ける
- 代償分割 … 財産の代わりに現金を支払う
それぞれの分割方法のメリットとデメリットをよく理解した上で、子や孫の世代が自宅をどう使いたいと考えているのか、相続人や相続財産が置かれた状況に適した分割方法を採用することが、不動産相続のトラブルを回避する一番の近道です。
どれか一つの方法に限定する必要はありません。
財産の性質や個々の事情などを考慮し、上手に組み合わせて下さい。
スムーズに遺産を分ける為に必要なのは、分割のテクニックと「相手を思いやる気持ち」です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。