定年後の医療費が心配。健康保険だけでも大丈夫?
医療保険に入っておくべき?加入時のチェックポイントは?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 公的医療保険とは?
- 高額療養費とは?
- 傷病手当金とは?
- 民間の医療保険に入っておくべき?
- ガン保険と医療保険との違い
- 加入時のチェックポイント
- 実際に給付金を受け取るには?
公的医療保険
健康保険・国民健康保険
老後に病気やケガで入院、手術となれば、治療費の負担が心配になるでしょう。
突然倒れて、緊急手術、長期入院が必要になる可能性もゼロではありません。
体の不調や衰えを感じやすくなる定年前後の世代では、安心のために民間の医療保険に入りたいと思う人が多くなります。
「元気な今のうちに…」と、焦りと不安で加入を急ぐ人も珍しくありません。
テレビCMや新聞広告でも、「○○病にかかると医療費は○○万以上」とか「1日当たりの入院費は○○万円」など、いかに医療費が多くかかるかを強調しています。
ただ、医療保険の必要性はそれほど高くありません。なぜなら、日本には優れた「健康保険制度」があるからです。
退職後は勤務先の福利厚生制度を受けられなくなるため、何かと心配になると思いますが、公的な医療保険がなくなるわけではありません。
病気やケガの際に最も頼りになり、心強いのは「公的医療保険」です。
公的医療保険には、会社員が入る健康保険、自営業者などが加入する国民健康保険があります。
勤務先で加入している健康保険は退職後2年間、任意で継続できますが、国民健康保険に加入することも選択できます。
いずれも保険証を医療機関で提示すれば、必要な治療が受けられ、自己負担となるのは医療費の3割など一定の割合です。
たとえ100万円の医療費がかかったとしても、窓口で払う金額は約30万円。
但し、最終的には3割の自己負担額を払わずに済むケースもあります。
どちらの健康保険にも、患者の医療費負担を軽減する「高額療養費制度」があり、ひと月の医療費の自己負担額には上限が設けられています。
高額療養費
重い病気などで長期入院したり、治療が長引く場合には、自己負担額が高額になってしまいます。
そのため、家計の負担を軽くできるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分は払う必要のないシステムが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度とは、1日から末日までの1か月間に、同一の医療機関で支払った一定以上の自己負担額が後日払い戻されるというもの。
自己負担額の上限は、年齢や所得によって異なります。
多くの定年後世代は、所得区分の「区分ウ」になるでしょう。
区分ウの場合、「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」が自己負担額の上限となります。
この「区分ウ」で例えると、医療費が100万円かかった場合、自己負担分の30万円をいったん医療機関に支払いますが、高額療養費制度により、上限を超えた部分の約21万円が戻ってきます。
つまり、実際の自己負担額は約9万円で済みます。
ちなみに、限度額適用認定証を事前に発行してもらい、医療機関に提示すれば、支払いは自己負担限度額までで済みます。
以前は入院の場合のみでしたが、現在は高額な外来診療も対象です。
一人の窓口負担では高額療養費の支給対象にならない場合でも、同じ公的医療保険に加入している家族なら窓口で各自支払った自己負担額を一か月単位で合算することができます。
これを「世帯合算」といいます。
また、高額療養費を4か月以上利用した時には、さらに高額療養費の負担が低くなる「長期高額疾病についての負担軽減」もあります。
70歳未満の人だと、一般的な上限は44,400円となっています。
但し、差額ベッド代や入院時の食事療養費などの自己負担額は対象外であり、純粋な診療部分に限られています。
注意が必要なのは、自己負担額の上限は「1日から末日」までの暦日単位で計算される点です。
2月の医療費が60万円、3月が40万円と月を跨いで合計100万円の医療費がかかった場合、各月約9万円ずつ自己負担となります。
つまり、医療機関窓口で支払った30万円から約12万円しか戻ってこないことになります。
入院日を選べるのであれば、同じ月に収まるようにしてもらいましょう。
また、自己負担額の上限は、通院と入院は別々に計算されるので注意しましょう。
さらに、協会けんぽや健保組合なら、病気で働けない期間の収入減を補う「傷病手当金」という制度も利用できます。
傷病手当金
傷病手当金は、病気などで働くことができない期間に、本人や家族が生活に困ることのないよう設けられた制度です。
病気やケガのために勤務先を休み、十分な報酬が受けられない場合に健康保険から支給されます。
病気やケガで休んだ期間1日につき、日割りの賃金額に当たる標準報酬日額の3分の2相当額が支払われます。
休業期間のうち「最初の3日間」を除き、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
「連続3日間休む」というのがポイント!自宅療養であっても
適用できるという便利な制度です。
3日目に上司から「どうしても出勤して欲しい」と頼まれ、出勤したのは良いけど、また次の日から暫くダウン。
こういった場合は、さらに3日間連続して休まなければ、傷病手当金が支払われません。
支給期間は、支給を開始した日から数えて最長1年6か月です。
支給を受けている間に退職した場合でも、資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者だった人は、引き続き1年6か月までは給付を受けることが可能です。
但し、休業中も給与が支払われている場合や老齢年金を受けている場合などは、支給が調整されるので満額は受けられない場合があります。
このように会社員や公務員は病気やケガで会社を休んだとしても、収入が途絶えることは暫くありません。
ちなみに、自営業者などが加入する国民健康保険には傷病手当金制度がないので、病気の際の収入減には自分自身で備える必要があります。
人によって変わる入院コスト
万一の場合やケガの際に、医療費の大半を負担してくれる公的な保険制度ですが、全ての費用を賄うことができるわけではありません。
入院時の食事代、ベッド数が4床以下の部屋に入院するとかかってしまう差額ベッド代(患者が同意した場合)は、自分で負担しなければなりません。
人によっては、テレビの鑑賞代などの雑費や世話をする家族の交通費もかかります。
そこで、医療保険選びで重要となるのが「1日当たりの必要保障額」です。
例えば、会社員の人が入院した時は、健康保険から傷病手当金が支給されますので、1日当たりの負担はある程度軽くなります。
傷病手当金とは、3日以上連続して休み、仕事が出来ず給料が支払われないなどの場合、標準報酬日額の3分の2が最長で1年半まで支払われる制度です。
ところが、健康保険ではなく、国民健康保険に加入する自営業者の人には傷病手当金がありません。
収入が減った分の公的保障がないので、会社員や公務員の人よりも、1日当たりの負担は重くなるようです。
自分が入院した時を想定し、食事代や雑費、或いは差額ベッド代、自営業者の人などは収入の補填も踏まえた上で、1日当たりに必要な入院給付金を決めると良いでしょう。
民間の医療保険
医療保険とは
医療保険は、病気やケガで入院・手術をした時に「入院給付金」や「手術給付金」が受け取れるものです。
- 入院給付金 … 病気やケガで入院した時に受け取れます。入院給付金には大きく分けて、災害や事故によるケガで入院した時に受け取れる「災害入院給付金」と、病気で入院した時に受け取れる「疾病入院給付金」の二つのタイプがあります
- 手術給付金 … 病気やケガで所定の手術を受けた時、手術の種類により、入院給付金日額の数倍の給付金を受け取れます
- 死亡保険金 … 保険期間中、死亡した時に死亡保険金が受け取れます。死亡保険金(給付金)がないタイプもあります
契約期間のタイプによって「定期型」「終身型」の二つがあります。
- 定期型 … 契約期間が予め「一定期間」又は「一定年齢」までと定められています。契約期間が満了したら、その時の健康状態に関係なく自動更新ができるタイプもあります。更新時にはその時の年齢や保険料率で新たに保険料が計算されますので、通常は保険料が高くなります
- 終身型 … 保障期間が生涯継続します
医療保険は公的保険を補完する為の保険です。通常、満期返戻金はありません。
ガン保険との違い
ガン保険と医療保険は何が違うのでしょうか?
医療保険(医療特約)もガンによる入院などの治療費を保障してくれます。
最大の違いは、その保障の対象がガンそのものに特化している分、ガン保険は割安な保険料で加入できることです。
さらにガン保険は入院給付金が無制限で支払われます。
また、ガンと診断されると診断給付金が支払われるのもガン保険ならではの特徴の一つです。
ガン保険の保障がこれほど手厚い理由は、ガンは再発の可能性が高く、また長期の入院が必要になる場合もあり、結果的に入院治療費などが高額になるケースもあるからです。
一入院当たり何日までと制限のある医療保険では対応しきれないこともあります。
今、日本人の約3分の1がガンで亡くなっています。
親族の中にガンに侵された人のいる人や、ガンが心配という人などは、医療保険の他にガン保険で万一に備えておくのも良いかもしれません。
加入時のチェックポイント
医療保険を選ぶ時には、その保障が何日間続くのかという「保障期間」の長さも見なければなりません。
それが「終身型」や「定期型」と呼ばれる保障期間です。
先ず、医療保険には「終身タイプ」と「定期タイプ」があります。
終身タイプは保障が一生涯続く商品で、加入した時の保険料がずっと変わらないのが特徴です。
しかし、同じ加入年齢で比較すると、定期タイプよりも保険料が高くなる点がデメリットです。
定期タイプは10年、20年など、保険期間が決まっている商品です。
保険期間が満了した時には、そのまま更新して80歳から90歳まで保障を続けることもできます。
同じ加入年齢で比較すると、終身タイプよりも保険料は安くなります。
但し、更新の時点では、その時点の年齢で保険料が再計算されるので、更新を続けていくと、トータルで支払う保険料は終身タイプよりも高くなります。
保障期間とは別に、医療保険には1回の入院につき60日型や120日型など、一入院当たり何日間まで給付金が支払われるのか、通算の支払限度日数は何日間なのかも検討します。
ちなみに、一入院当たりの給付金支払日数が長くなるほど保険料は高くなります。
この他、何日目から給付金を受け取りたいのかも大事なチェックポイント。
以前の医療保険では、入院5日目から給付対象となっているのが一般的でした。
つまり、入院しても4日目までは給付金が受け取れなかったのです。
しかし、最近の医療保険は、入院1日目から給付対象になるのが一般的です。
最近は入院期間が短期化していることも考慮し、日帰り入院や1泊2日から受け取りたいのか、長期の入院に備えるために、入院5日目からの支給でも良いのか判断しましょう。
すでに医療保険に加入している人は、自分の加入している商品の給付対象がどうなっているのか、一度、確認しておく必要があるでしょう。
また、医療保険やガン保険に単体で加入するのか、もしくは死亡保険などの特約として入るのかも重要な要素です。
特約はあくまでも死亡保険などの主契約がメインなので、保障内容や保障期間などの部分で制限が多かったり、保険の見直しがし難いといった点は要注意です。
給付金などの請求の流れ
自分に合った最適な保険と出会えたからといって、それだけで十分ではありません。
一定の要件を満たした病気などで入院治療した場合に、確実に給付金や保険金を受け取ってこそ、初めて保険に加入した本当の意味があるのです。
給付金や保険金を受け取るには、死亡や入院などといった支払事由が発生した際に、先ず保険会社に連絡すること。
それから保険会社の案内に従って、診断書や保険証券などの必要な書類を揃えます。
この必要書類を保険会社に送り、審査を経れば給付金などが受け取れます。
- 死亡や入院といった給付金などの支払い理由が発生
- 保険契約者か給付金などの受取人が保険会社へ連絡
- 保険会社の指示に従って必要書類を揃える
- 必要書類を保険会社に提出し、審査してもらう
- 審査の結果、問題なければ給付金などが支払われる
但し、例えば「通院特約」があるのに「入院部分に関しては請求したが、その後の通院部分については請求し忘れた」などというケースもあるようです。
また、ガン保険はガンに特化した保険ですが、中にはガンとはいっても「上皮内ガン」は保障の対象とはならないケースもあるので注意して下さい。
保険に加入していても待っているだけでは、いつまで経っても給付金などは支払われません。
自分の選んだ保障の中身をしっかり理解し、請求しなければ給付金が受け取れないことを知っておいて下さい。
また、保障の内容や給付金の請求などで分からないことがあれば、保険会社に問い合わせるのも大切なことです。
まとめ
- 公的保障は当てにならない
- 入院すると数十万円の自己負担は当たり前
- 保険は手厚いほど安心
そんな印象を持っている人も少なくありませんが、それは大きな誤解。公的医療保険制度は、かなり頼りになります。
大事な話なのに意外なほど知られていないのですが、病気やケガの時に最も頼りになるのは、誰もが必ず加入している健康保険です。
企業にお勤めの人は、大手企業や同業企業が設立する健康保険組合か、協会けんぽに加入しているはずです。
公務員の人であれば、共済組合に入っていますね。
一度、自分の健康保険証を見て、加入している健康保険の種類を確認しておきましょう。
「病院で健康保険証を出すと、医療費の自己負担が3割で済む」ということは皆さんご存知でしょう。
しかし、健康保険の保障はそれだけではありません。
健康保険には「高額療養費」という制度があり、1か月当たりの医療費には上限が設けられています。
この制度があるお陰で、たとえ医療費が月100万円かかるような病気になっても、1か月当たりの自己負担は多くて9万円弱で済みます。
さらに、「過去1年以内に高額療養費が適用となる月が3回以上」という条件を満たすと、4回目からは自己負担の上限がダウンし、1か月当たり44,400円となるのです。(自己負担額は、全て所得区分が「ウ」の場合)
自己負担が3割だということは誰でも知っていますが、ひと月当たりの自己負担に上限があることは知らない人が多いようです。
知らないと負担に大きな差が生じますので、覚えておきましょう。
但し、高額療養費は1日から末日までの1か月単位で計算されるので、入院が月を跨ぐと実質的な負担が増えてしまいます。
また、対象は保険診療分だけで「差額ベッド代」や「食事代」などは含まないので、これらは自分で備えなければなりません。
こうした点を差し引いても、公的な健康保険の保障はとても手厚いといえます。
尚、差額ベッド代は高額医療費の払い戻しの対象外となりますが、治療上の必要があった場合は、払う必要はありません。
会社員なら、病気で仕事を休んだ期間に給与の一部が保障される「傷病手当金」の給付も受けられますし、加入する健康保険によっては、さらに手厚い保障が受けられるケースもあります。
それでも、病気が収入減に直結する自営業の人や、健康や貯蓄額に不安がある人、先進医療や入院時の出費に備えたい場合は、やはり医療保険を利用する必要があります。
医療保険に加入する際には、これらの公的給付を考慮し、保障が過剰にならないようにしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。