身寄りがない…
死後の後始末をどうする…
こんな疑問・悩みを解決します!
- 死後事務委任契約とは?
- 死後事務委任契約で委任できること
- 委任契約による死後の事務処理の注意点
死後事務委任契約とは
一人の人が亡くなると、やらなければならないことがたくさんあります。
当たり前のことですが、自分の死後の後始末は、自分ではできません。
身近に家族がいる人なら、葬儀・納骨を始め医療費の清算や賃貸住宅の解約、電気・水道・ガス・新聞の停止や家財道具の処分などを行なってくれるでしょうが、身寄りがない人や親族と疎遠になっている人はそうもいきません。
何の用意もせずに亡くなると、役所や近所の人などたくさんの人の手を煩わせることになります。
このような人が死後、気掛かりを残さないためには、生前のうちに死後の処理を第三者に依頼する必要があります。
これを「死後事務委任契約」と言います。
一般には遺族が行いますが、一人暮らしの人や、残された配偶者が高齢の場合などは、誰かにこれを託しておく必要があるでしょう。
何を準備しておくか
生前に何を準備しておくかを考える前に、死後の後始末にはどのようなものがあるかを見てみましょう。
先ず、大きな仕事として挙げられるのは、お葬式です。
お葬式を出すためには、葬祭業者を選んだり、費用を準備するといったことも必要になってきます。
葬儀の後には、四十九日や一周忌などの法事や、納骨も行います。
お墓がない場合は、お墓を建てたり、その他の方法で納骨することも考えなければなりません。
二つ目は、死後の事務手続きです。
故人の年齢や職業、立場によって、やらなければならない手続きは異なってきます。
例えば、年金の手続きや生命保険金の請求、名義変更、相続税の申告・納付などがあります。
三つ目が、生活の場の整理です。
何を捨て、何を残すのかは、遺族にとっては非常に難しいことです。
形見分けをすることもありますが、誰に何をもらってもらうのかも迷うものです。
必要に応じて、故人が愛用していたパソコンやスマートフォンの個人情報の消去もします。
また、故人が一人暮らしで、ペットを飼っていた場合などは、ペットの世話を誰に依頼するかも考えなければなりません。
ある意味で、一番難しいのが財産の整理、いわゆる「遺産相続」かもしれません。
「あんなに仲の良い家族はいない」と言われる家族でも、いざ相続となったら、それまでの関係が崩れ、争いになる例はたくさんあります。それは、財産が多いか少ないかには関係がないと言われます。
遺言書がない場合は、基本的には相続人全員が集まって遺産分割協議を行いますが、「どのように分けるか」の前に、「どういった遺産があるのか」を調べなければなりません。
これも、意外と大変な時間の掛かる作業なのです。
手続きの流れ
- 契約会社(信頼できる人)を探す … 元気なうちに、死後事務委任を行う複数の会社から見積もりを取って内容と料金を比較検討する
- 契約内容の確認と見積もり … 対応できる内容や利用料などをしっかり確認。依頼する内容によって料金も変わるので見積もりを立てる
- 死後事務委任契約書の作成 … 内容と費用に納得ができたら、死後事務委任契約書を公正証書で作成して正式に契約する
公証役場で財産管理等委任契約書などを作成する際に、死後事務委任について特約事項を設けることもできます。
死後事務委任契約で委任できること
死後事務委任契約とは、死後に発生する死後事務の全部又は一部の処理を委任する契約です。
死亡届の提出、葬儀や納骨の代行、遺品整理、未払いの医療費や公共料金の支払いと解約など依頼できる内容は多岐にわたります。
近年ではこういった手続きに加えて、SNSに亡くなったことを投稿すること、SNSのアカウントの削除、パソコン・クラウド上のデータの削除といった事務手続きも依頼の内容に加える人もいます。
- 死後の事務手続きの主な具体例 -
- 死亡診断書の手配
- 火葬許可証の手配
- 遺体の搬送
- 親族や関係者への連絡
- 葬儀・火葬・納骨・埋葬・永代供養
- 家賃・地代・管理費等の支払い
- 敷金・保証金等の清算
- 医療費や施設利用料、その他一切の債務弁済事務
- 行政官庁等への諸届け
- 家財道具や生活用品の整理・処分
- 公共サービスの解約手続き
- 生命保険の請求・受け取り
- クレジットカードの解約手続き
- 自宅の売却や賃貸住宅の明け渡し
- メールアカウントの削除やSNSの閉鎖
- 相続手続き など
各項目をもっと詳しく決めておきたい場合は、別途書面にして契約書に添付することも考えられます。
死後事務委任では亡くなった後に様々な事務手続きを執り行いますが、相続に関する手続きは死後事務委任ではできません。
財産の継承については「遺言執行者」が遺言に従って行います。
遺言執行者の業務は、遺言執行者就任の通知に始まり、相続財産の調査、相続人の範囲の確定、財産目録の作成、預貯金口座解約、相続登記などがあり、全ての業務が終了すると、相続人全員に書面で完了の報告を行います。
どこ(誰)に委任するか
また、死後事務委任は「委任契約」なので、誰に頼むか、何を依頼するかは自由に決めることができます。
こうした死後の後始末は、自分の意志に沿って実行してくれる機関・団体や友人などに託しておくこともできます。
受任者は基本的にどなたでもできますが、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家が多いです。
システムは機関・団体によって微妙に異なりますが、契約が実行されるのは、依頼者が死んだ後のことですから、契約の際は次のことを必ず確認しましょう。
- 解約はできるのか
- 解約の際の契約金・保証金返済はどうなっているか
- 契約内容の変更はできるか
- 死後の事務が終了した際の費用の清算はどのようになされるのか
- 死後の事務が確実になされたかどうかの確認は、誰がどのようにするのか
たいていの場合、死後には家財道具や衣類、本などたくさんの物が残されます。
生前のうちにある程度処分しておくのが理想的ですが、忙しくてそんな時間がないという人は、死後の遺品整理を専門業者に任せるという手もあります。
死後事務委任は最近できたサービスで法律がないため、金額や内容にもバラつきがあります。一社だけで決めることはしないで、必ず見積もりを取って比較検討しましょう。
死後事務委任の支払い
死後事務委任契約では、生前と死後に支払いが発生します。
公正証書遺言作成費用と死後事務委任契約書作成の公正証書だけは生前に支払いますが、契約した委任内容については死後の支払いになります。
死後の支払い方法は2種類あり、遺産清算方式は、死後事務委任契約書作成の際に遺言書も一緒に作成することで、故人の財産から死後事務に掛かった費用を清算します。
預託金清算方式は、死後事務に掛かる費用を前以て受任者に預けておく方法。
掛かった費用はこの預託金で清算します。
まとめ
人が亡くなると、様々な事後処理が必要になります。
かつては、葬儀は家族、親族、隣近所の人たちが力を合わせて出すというのが常識でした。
親の介護や看取り、死後の処理なども家族の役割でした。
しかし、今は状況が変わってきています。家族がいない人はもちろんのこと、いる人も、葬儀や死後のことは自己責任で、生前から備えておこうという人が増えています。
家族がいても、離れて住んでいることも多く、一緒に住んでいても「子供には負担を掛けたくない」と考える人が多くなっているのです。
また、身寄りのない人、或いは身寄りがいても頼りたくないという人の場合は、自分の死後の事務処理が気になります。
「死んだ後のことは、どうでもいい」という人もいますが、遠縁の親族や知り合いに迷惑を掛けることになるかもしれません。
死後事務委任契約とは、一言で言えば、自分が亡くなった後の事務の代行をする契約のことです。
死後事務委任契約の内容は、自由に決めることができます。
例えば、「葬儀の手配や納骨に関しては家族に行なってほしいが、家財の処分など住居に関することまで家族には迷惑を掛けたくない」という場合には、〈住居・遺品整理〉の部分のみ委任契約の内容とすることができます。
死後事務委任契約は、自分が亡くなった後、頼れる家族がいないおひとりさまはもちろん、長年親族と疎遠にしている場合や、兄弟や他の親族に死後を託すのに不安がある場合、また親族はいても遠方に住んでいる場合など、様々なケースで検討をされる人が多いようです。
「亡くなった後の事務処理などを頼むなら、任意後見制度もあるのでは?」と思われた人もいるかもしれません。
確かに、任意後見契約は、信頼できる人と契約を結ぶことができ、その後の仕事ぶりは家庭裁判所が選任した任意後見監督人がチェックしてくれますので安心です。
しかし、任意後見契約は、あくまでも本人が認知症などで判断能力が衰えない限り、発動しない契約です。
しかも、任意後見人には、葬送の執行や遺品整理などといった、死後の処理を委任できないのです。
また「遺言書に書いておけば大丈夫」だと思っている人もいるかもしれませんが、遺言書が法的効力を持つのは、主に財産の分与や処分の方法についてです。
その点、死後事務委任契約なら、亡くなった後のあらゆる手続きを委任できます。
尚、家族がいなくて生前の準備もない場合、自治体が遺体を火葬するなどの処理をします。また、財産は、相続人の該当者がいなければ、自治体から委託された財産管理人が全てを処理することになっています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。