家族に万一のことがあったとき、残された家族が受けられる制度はあるの?
身内の死後に手続きをすることで支給されるお金もあるって聞いたけど…
こんな疑問・悩みを解決します!
- 身内の死後の給付金
- 遺族年金
- 死亡一時金
- 寡婦年金
- 中高齢寡婦加算
- 未支給年金
- 葬儀費用
遺族年金
故人が公的年金に加入していた場合、残された家族は遺族年金を請求することができます。
遺族年金は、家計を支えていた世帯主を亡くした遺族の生活の安定のために、残された家族に支給される公的年金制度のことです。
故人が加入していた年金(国民年金又は厚生年金・共済年金)によって受給資格のある遺族の範囲は異なります。
しかし、いずれの場合も「故人に生計を維持されていたこと」が前提になっています。
生計を維持されていた人とは、故人の死亡当時まで生計を同じくしていた遺族のことです。
原則として、遺族の前年の年収が850万円未満であることが要件になります。
但し、故人の死亡時に年収が850万円を超えていても、凡そ5年以内に退職や廃業などによって年収が850万円未満になると認められるような場合は受給対象者になります。
- 国民年金 … 20歳以上60歳未満の全ての人が加入。老齢・障害・死亡により基礎年金を受けられる
- 厚生年金 … 厚生年金保険を適用している事業所や企業などに勤務する70歳未満の人が加入する
- 共済年金 … 国家・地方公務員、私立学校の教職員などとして働く70歳未満の人が加入する
先ずは、故人がどの公的年金に加入していたかを確認しましょう。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、原則として「公的年金被保険者期間の3分の2以上」の保険料を納めていた場合に支給されます。
但し、受給できるのは「18歳以下の子供がいる配偶者」と「その子供」に限られ、子供がいない遺族は遺族基礎年金は受け取れません。
遺族基礎年金は「子供を守るための制度」なので、子供が18歳を超えると遺族年金の支給はストップします。
支給される額は、支払った保険料に関わらず一律で、令和6年度は81万6,000円、1人目と2人目の子供にはそれぞれ23万4,800円、3人目以降の子供には7万8,300円が支給されます。
遺族厚生年金
また、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合、遺族厚生年金が支給されます。
遺族厚生年金は遺族基礎年金とは違い、子供がいなくても受け取ることができ、父母や祖父母も支給対象となります。
但し、子供のいない妻で、夫の死亡時に30歳未満の場合は「夫の死亡後5年間」しか受給できません。
また、支給額も一律ではなく、故人の報酬額に応じた額が支払われることになります。
詳しくは年金事務所に問い合わせると良いでしょう。
どちらの遺族年金にしても、注意しなければならないのは、自分で請求しなければならないということ。
自動的に支給されるわけではないので気を付けましょう。
児童扶養手当
世帯主が亡くなって一人親家庭となった場合は、児童扶養手当を受給できる場合があります。
子供は、18歳に達した日以降の最初の3月31日までにある子(障害がある場合は20歳未満)が対象になります。
公的年金を受給していても、年金額が児童扶養手当額より低い場合は、その差額分の児童扶養手当を受給することができます。
支給額は所得金額と児童数で異なり、同一世帯の所得合計額によって「全額支給」或いは「一部支給」となります。
児童手当とは別のもので、一人親家庭は「児童手当」と「児童扶養手当」の両方を受給することも可能です。住んでいる市区町村の担当窓口に問い合わせてみましょう。
寡婦年金・死亡一時金
寡婦年金と死亡一時金は、遺族基礎年金の受給資格がない遺族のための救済措置です。
寡婦年金と死亡一時金は両方受け取ることはできないので、どちらかを選択して受給します。
- 寡婦年金 … 妻が対象
- 死亡一時金 … 妻以外の遺族も対象
様々なケースがあり、どちらが得になるかは人によって異なるので、最寄りの役所や街角の年金相談センターなどで相談してみると良いでしょう。
寡婦年金
寡婦とは、夫と死別して再婚していない女性のことで、寡婦年金とは、文字通り女性しか受給できません。
寡婦年金を受給できるのは、国民年金のみに加入している夫を亡くした妻で、故人に生計を維持されていた場合です。
たとえ夫が専業主夫だった場合でも、妻を亡くした夫は受給できません。
これは妻に支給されるものなので、妻を亡くした夫は受給できません。
また、結婚生活が10年以上というのも条件の一つです。
その他、亡くなった夫が10年以上保険料を納付していなければなりません。
これには、保険料の免除期間と猶予期間も含まれます。
また、夫が65歳未満で亡くなっていること、夫が老齢基礎年金や障害年金を受給していないことも条件になります。
- 以下の要件を満たす妻 -
- 亡くなった夫と婚姻期間が10年以上
- 亡くなった夫が10年以上保険料を納付している
- 夫によって生計が維持されていた
- 夫の死亡時の年齢が65歳未満
寡婦年金は、妻が60~64歳までの5年間、支給されます。
60歳未満の時に夫を亡くした場合は、妻が60歳になった時から支給されます。
いわば妻が「自分自身の老齢年金受給年齢に達するまでの繋ぎ」と言える年金です。
そのため、妻が老齢年金を繰り上げて受給していた場合には支給されません。
また、再婚した場合も受給資格はなくなります。
寡婦年金の支給額は、夫が本来もらう筈だった老齢基礎年金の4分の3になります。
例えば、夫が保険料を480月満額支払っている場合、寡婦年金は年額61万2,000円です(令和6年度)。
死亡一時金
遺族基礎年金は子供がいない場合は支給されませんが、一定の要件を満たせば「死亡一時金」をもらえる場合があります。
死亡一時金をもらうための要件としては、先ず、故人が加入していた公的年金が「国民年金のみ」だった場合です。
学生や自営業者、農家、漁師、無職の人が対象です。
反対に、会社員や公務員の配偶者として扶養されている人が亡くなった場合は対象外になります。
そして、老齢基礎年金や障害基礎年金をまだ受給していない人で、保険料の納付月数が36か月以上あることも必要になります。
免除期間がある場合も合算されますが、免除額によって月数は削減されるので注意しましょう。
例えば、納付額の4分の1を免除されていた期間は、月数×4分の3として計算されます。
老齢基礎年金を受給していないということは、故人が65歳未満ということになります。このとき、65歳前に亡くなったとしても、繰り上げ受給で年金を受け取っている場合は、死亡一時金を受給することはできません。
受給できる人にも条件があります。
受給できるのは故人と生計を同じくしていた遺族のうち、配偶者➡子➡父母➡孫➡祖父母➡兄弟姉妹の順で優先順位の高い人になります。
死亡一時金は納付保険料によって変わり、12万~32万円が支給されます。
36か月以上、付加保険料を納めていれば、8,500円が加算されることになります。
死亡一時金は文字通り、一度だけしか受け取ることはできません。また、遺族基礎年金を受給している人はもらえませんし、寡婦年金との同時受給もできませんので注意しましょう。
中高齢寡婦加算
夫が厚生年金に加入している場合、残された妻が40~64歳で、18歳以下の子供がいなければ「中高齢寡婦加算」という年金をもらえます。
18歳以下の子供がいる妻には「遺族基礎年金」が支給されるため、公平性に欠けるとして創設された制度です。
但し、子供が18歳を超えて遺族基礎年金をもらえなくなった時に、妻が40歳以上で且つ65歳に達していなければ、中高齢寡婦加算を受給できます。
遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は同時受給はできませんが、両方受け取れる場合もあるということです。
中高齢寡婦加算の支給額は一律で年額61万2,000円(2024年度)が、妻が65歳になるまでの間、遺族厚生年金に加算されます。
しかし、中高齢寡婦加算は、妻が65歳になったら支給はストップします。
その代わりとして支給されるのが、経過的寡婦加算です。
この年金は、次の条件を満たした妻に支給されます。
先ず、1956年4月1日以前に生まれていることです。そして、中高齢寡婦加算を受給していたことも条件になります。
経過的寡婦加算の支給額は、同年代の人に支給される老齢基礎年金に中高齢寡婦加算の支給額を合計した額と同額になるように設定されています。
経過的寡婦加算は、遺族厚生年金の支給がストップするまでもらえます。
未支給年金
年金の受給は年6回で、偶数月の15日にその前月までの2か月分が支払われます。
故人の受給資格は死亡した日に消滅しますが、支給は死亡した月の分まで受け取ることができます。
2か月に1回の支給のため、故人が亡くなった日によって、まだ受け取っていない年金が生じることがあります。
例えば、受給者が6月に亡くなった場合、死亡した6月までの年金をもらう権利があります。しかし、6月に死亡届を出すと8月の年金振込がストップし、6月分が未支給となってしまうのです。
その場合、亡くなった日より後に振り込み予定だった年金のうち、亡くなった月の分までの年金について「未支給年金」として請求できます。
未支給年金を請求できる権利があるのは、亡くなった年金受給者と生計を同じくしていた人で、次の順になっています。
①配偶者
②子供
③父母
④孫
⑤祖父母
⑥兄弟姉妹
⑦上記以外の3親等の親族
但し、自分より優先順位の高い人がいる場合は請求できません。
また、同順位が2人以上の場合は、そのうちの1人が請求することになり、遺族として全額請求したものとされるため、請求した人に全額が支給されます。
⑦の3親等の親族とは、ひ孫、曾祖父母、ひ孫の配偶者、伯父・伯母、伯父・伯母の配偶者、甥・姪などになります。
但し、請求できるのは「故人と生計を同じくしていたこと」が条件ですので、⑦は実際的ではないと言えるでしょう。
また、繰り下げ待機中の人が年金を受給せずに亡くなった場合も、65歳から亡くなった日が属する月までの年金を遺族が請求できます。
未支給失業等給付
亡くなった人が失業保険を受給中だった時も注意が必要です。
失業保険は後払い制の上、受給のためにはハローワークで手続きをしなければなりませんから、受給中の人が亡くなると、未支給の失業保険が生じることになります。
これを「未支給失業等給付」と言い、未支給年金と同様に、遺族が請求することで、未支給分を受け取ることができます。
未支給失業等給付を請求できるのは、生計を同じくしていた「①配偶者」、「②子供」、「③父母」、「④孫」、「⑤祖父母」、「⑥兄弟姉妹」のうち1人です。
①が一番優先順位が高くなります。また、雇用保険の傷病手当をもらっていた場合も、傷病手当の未支給分をもらえます。
未支給失業等給付を受け取るためには、故人が手続きをしていたハローワークに請求者が出向き、失業の認定を受けなければいけません。
その際には、故人の受給資格者証が必要となるので忘れないようにしましょう。
その他、次に挙げる給付についても、未支給分があれば請求できます。
- 高年齢求職者給付金
- 再就職手当・就業促進定着手当・就業手当
- 高年齢雇用継続基本給付金
- 高年齢再就職給付金
- 教育訓練給付
- 介護休業給付
ハローワークに何度も行くのは手間ですので、事前に確認しておきましょう。
葬儀費用
故人が健康保険に加入していれば、保険者から葬儀費用の一部が給付されます。
- 葬祭費
- 埋葬料
葬祭費は、国民健康保険か後期高齢者医療制度に加入していた人に支給され、埋葬料は全国健康保険協会やその他の健康保険組合に加入していた人に支給されるものです。
従って、葬祭費と埋葬料の両方を受け取ることはできません。
葬祭費は国民健康保険から支給されるので、市区町村の窓口に申請します。
一方、埋葬料は社会保険事務所か各種健康保険組合に申請することになりますが、実際の手続きは事業所経由になることが多いでしょう。
支給される額も葬祭費と埋葬料ではちょっと違ってきます。
埋葬料は原則として「一律5万円」です。
葬祭費は自治体によって支給額が変わり、1万~7万円と幅がありますが、概ね3万~5万円というところが多いようです。
まとめ
大切な身内を亡くして悲しみに沈んでいる時に不謹慎かもしれませんが、死後に手続きをすることで支給されるお金もあります。
身内、特に一家の大黒柱が亡くなると、残された遺族には今後の生活に不安が残るでしょう。
そんな時に少しでもお金が支給されることを知っておけば、安心材料の一つになります。
加入している公的年金や健康保険からは遺族を支えるための年金や給付金が支給されます。
特に小さい子供がいる家庭や、残された妻が専業主婦である場合などは、非常に助かる制度です。
18歳以下の子供がいる家庭には、公的年金から「遺族年金」が支給されます。
亡くなった人が会社員であれば、厚生年金からも遺族年金をもらえます。
こちらは子供の有無に関わらずもらえます。
遺族基礎年金は誰でも一律の金額が支給されますが、遺族厚生年金は故人の報酬額によって支給額は変わってきます。
夫を亡くした妻には「寡婦年金」という制度も用意されています。
健康保険からは、葬祭費・埋葬料という名目で、葬儀費用の一部を支給してくれる制度があります。
注意しなければならないのは、殆どの制度が、自分で申請しなければならない点です。亡くなったからといって自動的に支給されるわけではありません。
身内が亡くなると、様々な死後の手続きが必要になります。
悲しみに暮れている中で、そうした手続きをするだけで大変ですし、慣れないことだらけでバタバタしていると思いますが、受給できるお金をもらい忘れないようにしましょう。
死後の手続きは専門家の士業に頼むという人もいるでしょうが、こうした給付金があることを知っておくだけでも違います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。