死後の気掛かりをなくしたい…
後悔しない死の迎え方は?
こんな疑問・悩みを解決します!
- 生前準備の方法
- エンディングノート
- 遺言について
- 死後事務委任契約とは
生前準備
生前準備には、二つのことが考えられると思います。
その一つは、高齢期(老後)をいかに生きるかという自分自身の問題であり、
- やり残したことがあればやる
- 自分の生き方を伝える
などです。
自分の人生の仕上げとも言うべきものですが、何も完結する必要はなく、志半ばで病気などでやれなくなっても、満足できれば良いでしょう。
もう一つは、残される人への対策です。
これには、
- 財産の譲り渡し
- 認知していない子がいればその子の認知
- 世話になった人がいればその人への財産の贈与
などがあります。
こうした問題や心配事は個々人によって違いますので、一つずつ問題点を洗い出し、解決しておくことが重要です。
理想としては、好きなことをやりながら、自分が死んだ後の家族などの生活のことも考えておくことです。
高齢者の強みは、若い人よりより強く死を身近に意識できます。
そのため、死ぬまでに何をしたいかはより見付けやすいことになります。
目標が決まったら、後は自分の体力と相談しながら、それこそコツコツとやれば良いのです。
目標が何もなければ、何をしている時が、一番幸せかを考えて下さい。多分、そこから目標が見出せると思います。やってみて嫌なら変えれば良いのです。
エンディングノート
生前準備をしたいと思っても、どこから手を付けたら良いのかは分かりにくいものです。
そんな時、お勧めしたいのが、エンディングノートを書くことです。
エンディングノートという言葉を聞いたことがありますか?
人生の最終ステージを私はこのように生きたい、そして最期をこのように迎えたい…、そういうメッセージを大切な人たちへ贈るのがエンディングノートです。
人生との別れをどこでどのように迎えたいか、葬儀はどのようにしてほしいか、お墓はどうするか、その後の後始末など、率直に自分の考えを書いてみます。
エンディングノートに書かれたことは、遺言書などと違い、法的な拘束力は持ちません。
しかし逆に、エンディングノートとはこういうもの、こういうふうに書かなければならないという決まりもありません。
「こうしてほしい」と自分の思うままを自由に書いて良いのです。あなたの意思を明確にしておけば、遺族もそれを尊重したいと思うでしょう。
エンディングノートは市販のものがたくさん販売されているので、気に入ったものを使っても良いですし、自分でノートに書き出しても構いません。
市販のエンディングノートだと、埋めなくてはいけないページがたくさんあって大変そう…という人は、好きなページから書き始め、書きたくないページは飛ばして書いてOKです。
エンディングノートは、自分の頭の中や身辺の整理にも使えますし、あなたが亡くなった後に家族が読んだ時、あなたが何を考え、どんなことを希望しているのかが分かる1冊になります。
また、何度でも書き直せますので、年に一度見直しをするのがお勧めです。
遺言書
エンディングノートは、自分の希望を家族に伝えるという点では意味があるのですが、法的効力はありません。
遺産の分割を巡って家族が争うことを防ぐためには、遺言書を作成しておくことが大切です。
また、財産をどのように分配するか、自分で決めたい場合にも、遺言書を作成しておくことが有効です。
遺言書は、法律に定められた書式に従って書かれた文書で、公的文書の側面を持っています。
家族へのメッセージの面と、相続手続きの根拠書類になる実務的な面を兼ね備えています。
遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
先ず、自筆証書遺言は全文を自筆で作成した遺言書です。
代筆やパソコンなどで作成した場合は無効となりますが、法改正により、財産目録についてはパソコンでの作成が認められるようになりました(全ページに署名・押印が必要)。
また、遺言書を作成後、そのまま自宅で保管するケースが多いため、遺言書の紛失や改ざんの恐れがあるといった問題がありましたが、2020年7月1日より、自筆証書遺言を作成した人は、法務局に遺言書の保管を申請できるようになりました。
申請者の死亡後、相続人は遺言書が保管されているか調べたり、写しの請求、閲覧をすることができます。
保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になります。
公正証書遺言は公証役場で、公証人に作成してもらいます。
作成には2名以上の証人を連れて公証役場へ行き、公証人が遺言書として作成します。
手続きや書類の準備に手間が掛かり、更に費用が発生しますが、専門家が介在して作られるため、法的に有効な遺言書が作成できます。
尚、同行した証人に遺言書の内容が知られてしまうので、内容によっては注意が必要です。
秘密証書遺言は自分で作成・封印した遺言書を公証役場へ持って行き、遺言者・証人2名・公証人が署名・押印します。
この場合、封印したものを確認するので、内容は秘密にできます。
ただ、遺言書を自分で保管することになるため、紛失や保管場所が分からなくなってしまう場合もあります。
尚、開封前には家庭裁判所で検認が必要です。
このうち、自筆証書遺言や秘密証書遺言は自分で書けて内容を誰にも知られない反面、書き方のルールに沿っていないと無効になる可能性も。
遺言書の書き方が間違っていても相続人全員が納得していれば問題ないですが、誰か1人でも異議申し立てをすると、無効になってしまうことがあります。
また、自筆証書遺言を家に保管していたけれど、遺族が見付けられずに、故人の意思が反映されていない遺産分割協議を行なってしまったというケースもあります。
一番のお勧めは公正証書遺言です。
相続人間に争いがなく、遺言書をきちんと書ける人なら自筆証書遺言で問題ないでしょう。
しかし、相続人間でトラブルがあったり、認知や相続廃除をしたい場合、高額な遺産があるなど遺産の処分が複雑な場合には、公正証書遺言を作成する方が良いと思います。
もう一つ大切なのが、遺言の内容が「遺留分」を無視していないか確認すること。
兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・親)は、遺留分といって、最低限法律で決められた割合を相続する権利を持っています。
遺留分は、遺言の内容に関わらず、親のみが相続人の場合は3分の1、それ以外では遺産の2分の1となります。
例えば、配偶者と子では、相続財産のうち2分の1が遺留分となります。
遺言書を残していても、この遺留分を奪うことはできません。
いくら財産を分けたくない相続人がいたとしても、取り分をゼロにするような遺言だと、遺留分を求められた場合、相続人同士の揉めごとに発展する場合があります。
これではせっかく遺言書を残しても、苦労が水の泡になってしまいます。
遺言書には付言事項という、自由に書くことのできる項目があります。
法的効力はありませんが、感謝の言葉や、あなたがどんな考えで財産分与の方法を指示したのか気持ちや願いを書くことができます。
尚、遺言は遺言者が亡くなって初めて効力が生じます。生きている間は、いつでも撤回したり、内容を変えることができるわけです。
死後事務委任契約
身近な人が死亡すると、葬儀の手配や役所への届け出、金融機関への連絡など、煩雑な手続きが発生します。
自分が死亡した後のことを考えた時に、身近に頼れる家族や親族がいなかったり、近くにいても家族には迷惑を掛けたくないと考えている人は少なくないでしょう。
そのような気掛かりがある場合は、「死後事務委任契約」を検討することをお勧めします。
死後事務委任契約は、死後の様々な事務手続きを生前のうちに第三者へ委任しておくことができる手続き(契約)です。
依頼する相手は自由に選べます。
家の後片付けやちょっとした遺品の整理などは懇意にしている友人にお願いしても良いかもしれませんが、法律が関わってくるような事項については、弁護士や司法書士など、法律の専門家に依頼するのが良いでしょう。
先ずは数社から見積もりを取って内容と料金を検討し、ここぞというところがあれば、専門家と面談をします。
疑問や不安に感じていることがあれば、納得いくまで相談しましょう。委任内容や費用をしっかり確認して、ここなら安心できると納得できたら、正式に契約をします。
死後事務委任契約では、依頼者が死亡することで契約が開始となります。
死亡してすぐに対応が必要な遺体引き取り・搬送、葬儀や埋葬の手配はもちろん、死亡届の提出や戸籍関係の手続きなどの役所への各種届け出を依頼できます。
さらに、親戚、友人への死亡通知、入院費の清算、公共サービスの解約、遺品の整理まで、依頼できる内容は多岐にわたります。
これら全てを委任する必要はなく、希望する内容のみを選んで依頼することができます。
認知症等を発症して判断能力が低下すると、死後事務委任契約を依頼することが難しくなります。元気なうちに依頼するべき内容をよく検討し、契約を交わしておくのが良いでしょう。
最近は、任意後見制度と併せて契約を結ぶ人も多くいるようです。
費用は掛かりますが、後見人と死後事務委任も契約しておけば、死亡後の対応もスムーズでしょう。
まとめ
人生の最後は、自分らしく、素敵な最終ステージをデザインしたい。
そう考える人が増えてきて、終末期はこうして過ごしたい、こんなふうに見送ってほしいと具体的なイメージを描くようになってきています。
また、少子化や離婚の増加などで、家族の形が変わり、「子供に迷惑を掛けたくないから、自分のことは自分で決めておきたい」、或いは一人暮らしで、「きちんと決めておかなければ」と思う人もいるでしょう。
そうは言っても、認知症になったらどうしようか、相続のトラブルは避けたい…と考え始めると、次々と迷いや心配が出てきます。
そんな時に必要なのは「生前準備」です。生前準備は大別すると、「自分のための老後の生活を含めた生き方」と「家族や他人のためにする死の準備」があると思います。
順風満帆な人生であれ、困難に満ちた人生であれ、死は、平等に誰にでも必ず訪れます。
振り返った時、「これで良かったんだ」と思える人生でありたいものです。
それと同時に、穏やかな死のためにも、自分の人生の総仕上げとも言える高齢期をどう生きるか、財産の承継など死の準備をどうするかは重要なことです。
「死んだ後のことなんか、どうでも良い」と考える人もいるかもしれません。
しかし、この世に人の子として生まれ、育ち、仕事をし、子を育て、やはり何か伝えておくことはありませんか。
生前準備は、自分の心や身の回りの物を整理するだけでなく、家族などに自分の気持ちを形で伝えることも重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。